第6話(『放課後の教室2人きり大作戦』)
『由高寿也』
彼は、嘘つきだ。そして、独りが好き。
時々、読書をしている。何の漫画かと思って覗いてみたら『ライアー・ウルフ』……。
……あんたにピッタリだよ。
あたしは普通に小学生生活を送っている。もう以前の悩みは何処かへ行ってしまった。まるで以前は病気中だったみたいだ。由高くんの言った事が本当になる。
あたしが美少女であっても皆は次第に慣れていくのだ。その事を言ってくれていた由高くんには感謝しないと。
「ぎゃっ」
……由高くんの足に引っかけた。由高くんはわざとその華麗な足を出してあたしを転ばせた。
おかげで、ズッコケる。しかも、ぱんつ丸見え。
「防御しろよ。短パンガード」
し、白いレースのぱんつを見られた。今日に限ってスカートの下に短パンを履いていなかった。ふ、不覚。
時々思う。……あんた何なの小学生。
「真木ちゃんてさぁ。由高くんと付き合ってんの?」
女子は噂話が大好きだ。あたしもそれに加わっている。
今日の話のネタは、あたし。…………逃げたい。
「 … … い い え 。 そ ん な 、 わ け が 無 い 」
やけに機械がかった声を発した。そう否定すると、さらに女子は騒ぐ。「うっそだぁ」「ラブラブだよね」と。
ラブラブ? ブラブラの間違いでないのか。
ついに女子の一人が はた迷惑なオッパッピー的発言を提案した。
「試してみちゃおうか」
「何をぅっ!?」
名づけて、『放課後の教室、2人きり大作戦』。
あたしはその名の通り、教室に放課後 置き去りにされた。
由高くんを放課後 教室に赴くように仕向けるから、そこで待てと言う。
一体どうやってあの由高くんを……と思いつつ、教室で待つ。するとアッサリ由高くんは やって来た。
「何かご褒美でもくれんの」
ガラッ。
由高くんの声とドアを開けた音は同時だった。まるでここにあたしが居る事を始めから知っていたみたいだった。
わけがわからず様子を見ていると、由高くんは近づいて来てバンッ! っと机に手をついた。手の下には、一枚の紙が。
ええと、何なに?
紙には、『来たよ 歌 下 立つ 二体 竹』と……そして紙の下の方にカワイイ タヌキの絵が描かれていた。要するに……タヌキ?
『タ』を抜いて読むと『きようしつにいけ(教室に行け)』
……ですわな。
ちょっと何ソレ あたしに この後どうしろってんの。
「えええと、ととと寿也くんの頭脳っぷりを試そうかと」
……かなり冷や汗が。何て苦しい言い訳だプリンス(気が動転)。
しかも うっかり名前で呼んでしまった。まあいいや。
「子供でもすぐ解ける。それより、何か用」
だから、寿也くんの頭脳っぷりを……。
「無いなら、付き合え」
はい?
あたしは目が点になった。
教室の外でカラスがカーと鳴いた。