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第58話(同じ奇跡)

 校門前で あたしたちは騒ぐ。

「寿がミライかムカシに行方不明だってえ〜!?」

 何それ、と千歳くんはバカにしたように言った。「本当なの! 協力して!」

 あたしは懇願する。千歳くんは「いいけど……」と疑わしい目をした。

 さらに。

「そんな上手くいく? 寿と握手したから俺と握手しても同じような奇跡が起こせるって言うんでしょ? 俺は同じ奇跡が2度起こるなんて思えないし、それじゃ奇跡と呼べないんじゃないか、って思うけど。有り得ない事が一度だけ起こるから、奇跡って言うんじゃない。奇跡、という言葉のランクを下げて、偶然、って呼ぶ?」

とかかんとか言い出した。

 どうでもいいわよ。奇跡でも偶然でも奇遇でも。あれ?

 言葉が増えてしまったけれど、そんな事はどうでもいい。

「条件が合えば、同じ奇跡も起こるよきっと。とにかくやってみようか」

 真さんがフォローしてくれた。


 同じ奇跡。

 あたしは絶対上手くいくと、信じている。

 まだココでは言ってはいないけれど、千歳くんは寿也と双子かもしれないんだ。

 可能性は強くなる。

 ただ、あたしは、信じている。



「で……結果、来れたわけか」

 コタツに入ってリモコンでTVのチャンネルを変えながら、机に頬づえをついて寿也はあたしを見ずに言った。

 ちょうどTVでは漫才をやっている。

 今売り出し中の新人コンビ『シロとクロ』。「2人合わせてグレーゾーン!」が売りの若手漫才師たちだ。

 はっきり言って、あんまり面白くない。

 あたしは台所でトントンと、野菜を切っていて寿也の方は見ていない。一度見てみたいものだ。寿也を笑わせるほどの凄腕漫才を。

「そういう事! ただ、皆で繋がっていたけどねー。タイムマシンごと」

 あたしは寿也に答える。

 そうなのだ。

 千歳くんとあたしは手を繋ぐ前、皆で手を繋いでいった。先生、真さん、のどかさん……のどかさんは もう片手で、操縦バーを握っていた。

 こうして用意は万全で、皆で一体になって。起きてくれるかわからない奇跡にかけた。

「帰りは普通にタイムマシンを操縦して帰ったの。寿也は、覚えてないよね。寝てたし」

「……ああ」

 のんびりした声が後ろから返ってきた。

 いいな、こういうのんびりしているのって。

 王女とか村の火事の事とか寿也の事とか……せわしなかったせいだよね。

 そのせいで、今のこの時間をとても貴重に感じている。


 ……ジジくさいだろうか?


「フフフ」


 ビクッ。

 カタタンッ。

 あたしが驚いて持っていた包丁をまな板の上に落とした音。

 その前に……今のって……。


 あたしは ゆっくりと後ろを振り返る。寿也の方へ。

 後ろ姿しか見えない、机に頬づえをついている寿也。


 今……寿也が笑わなかった??


 あたしは奇跡を見た(聞いた)のかもしれない。

 TVでは新人漫才師の『シロとクロ』がまだ、面白くないはずの漫才をやっていた。




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