第55話(作用)
「アラ。失礼。アルペンからだわ」
スックと立ち上がり、のどかさんはハンガーにかけて吊っておいた、自分の黒ジャケットのポケットから携帯電話を取り出して画面を開いた。ピッ、とキーを押して画面をスクロールさせ、やがて携帯電話を閉じる。
アルペン……って言ったけれど。誰なんだろう?
「アルペン、っていって。俺らのチーム仲間。アルペンと俺と のどかと。ボス。この4人がチームの主力メンバーなんだ。あと部下が多数」
と、真さんが説明してくれた。
のどかさんはジャケットを着ながら、「ちょっと連絡取ってくる」と言い残して玄関から出て行った。
残ったあたしたちは、それぞれ顔を見合わす。
「……すごいドンピシャで『運命』の曲の着メロ、流れましたよね」
中断された話をどう戻そうかと思いながら、あたしから話をし出してみた。さっき上手い具合のタイミングで流れた『運命』の曲は、のどかさんの携帯電話の着メロだった。これが『何でやねん』とかの着ボイスでなくて、よかったと思う。
別にウケ狙いで寿也と千歳くんが双子になったわけでは無い。
「寿!」
もう一度、千歳くんは寿也の体に飛びかかった。
しかし寿也は。今度はサッと体ごと、身をかわす。千歳くんは ひるまなかった。
瞳をかなりキラキラさせている千歳くん。
「俺と寿とは一心同体だったんだね! ヤッタ!」
バンザイ、と手を上げている。
一心同体。それは2人が産まれる前までの話では? ……今は別々なんだし。
「性別を乗り越えても、結婚はできないんだよ? お2人さん」
横ヤリを入れたのは真さん。「あああぁぁ……」と千歳くんはバンザイのまま、布団の上に倒れた。
「『惑星シャンプー』の作用」
真さんは考えながら、ヒモを辿るように解釈をしていった。
「口から入れたら死ぬだけだと思っていたが……例外もある」
「どんな?」
あたしたちはゴクリと唾を飲んだ。
「妊婦の場合だ。お腹の中に赤ちゃんが居る場合、子供に影響する」
【あとがき】
のどかさんの携帯が普通の携帯だと思ったら大間違いだ。
ミルキーの持ち物には注意が必要だ。