第54話(照合)
「蝶子さんの話が本当なら、ミルキー星の事情が姿を現してきた事になるね。真実に一歩近づいたってわけだ。……ミルキー星が何者かに侵略を受け、脱出したミルキー星人たち。その脱出した中に居た真木ちゃん、本当は王女。寿也くんのお母さんとやらは……どうあれ、地球に王女を抱えて逃げのびたってわけだな」
でも火事で……とあたしは真さんの説明に心の中で続けた。
もう、悲しい事実は呼び起こすのを控えよう。
「寿也のお母さんは、何を考えたかは わからないけど……『惑星シャンプー』を飲んだんです。でも生きていた……」
あたしも説明を追う。
聞いた真さんは難しい顔を浮かべる。
「不思議だ。飲んで、生きているなんて」
あたしは俯いていた顔をキッ! と見上げる。真さんを見る。
言うなら今だ。そう思って口を開いた。
「寿也に双子の兄弟がいるの!」
……
やはり、皆は驚く。
「!?」「何だって!」「どういう事なの」「寿が起きたよ!」……
いっせいに声が飛び交う中、最後の千歳くんの声に皆が寿也の方を見た。
寿也は、これだけ騒がしい中。そっと目を開けていた。
「寿也!」
あたしの歓喜の声と同時に、上体を起こす。
だがすぐに「寿ぃっ!」と、千歳くんに飛びつかれて。せっかく起こした上体をまた後ろに倒してしまった。「よかったあああっ!」
涙ながらに、スリスリと寿也の胸に頬ずりする千歳くん。
……話を続けていいかしら……。
あたしは。たぶん寿也も。
千歳くんが寿也の片われなんじゃ、と疑っている。
この2人が。
「調べられないかな。寿也の双子の兄弟かどうか。……千歳くんの体」
あたしが言うと、千歳くんは「俺?」とキョトンとしていた。
すぐに のどかさんが名乗りを上げる。
「大丈夫よ。すぐに調べてあげる。器具も検査も無しで、あたしの能力で血の成分やら骨格やらDNAやら、調べて照合できるから」
またすぐに。のどかさんは行動に出た。
のどかさんは寿也から千歳くんの体を引っぺがして……千歳くんの体に抱きついた。
そしてモミモミ。千歳くんをマッサージするようにモミほぐした。「イテテテテ」
そうか……寿也に以前にしたコレ、調べてたんだ。あの時に寿也の体も。
「何だか体が軽くなった気がする」
と、千歳くんは のどかさんから離れて立ち上がって、上体をひねりながらホッ、ホッと肩を動かした。
「肺にガン細胞があったわ。まだ小さかったけど」
「ガーン」
のどかさんの報告に、千歳くんはショックを受けていた。「後で治しに行きましょうね」と、のどかさん、アフターケアは忘れない。
「……で? 結果は? 照合終わった?」
真さんが尋ねた。少し眠そうだった。
「バッチリ。お2人は……
完 全 に 双 子 で す 」
ジャジャジャジャーン!!
……『運命』の曲が何処からか鳴り響いた。