第5話(第3の人生)
冬が過ぎ、春を迎え。
あたしはどうしても体と脳が拒否して学校へ行けなかった。
怖い。皆があたしを見る。驚きか賞賛か、ガンを飛ばされるのかヤラシイ目で見られるのか。考えれば考えるほど、体が震えてくる。思い出したくない 消えて。
……
ダメなんだ、このままじゃ。先生にも迷惑をかけてしまう。幼女誘拐なんてニュースが流れるたびに「キョエー」って思うのに。しかも割と多い。
先生には大きくなったら恩返しするんだ。だからこのままダメ負け犬になってはいかん。
いかんいかんいかん!
あたしは決心した。
決心するなんて久しぶり。
学校へ行こう。
どうせもうすぐ学年が一つ上がる。小学5年生になるんだ。
クラス替えもある。チャンスだ。
この機を逃して、なるものか。
あたしの第3の人生、あたし人称になって ここからスタート!
……そんなわけで、あたしは学校の、教室の入り口前に居る。
さっき人ごみの中 頑張って、クラス分けの発表を見てきた。
5年A組。間違えてはいない。
まだ朝のHRまでには時間がある……教室の中から騒ぎ声がする。これからクラスメイトになるであろう、元気な子供たちの声だ。あたしも子供だけど。
それより何でドアが閉まっているんだ、開けておけばいいものを。
ええい、もう知らないっ。
グワラッ!
ドアを開けた。
空気が固まったと感じたのは錯覚である事を祈る……しかし……やっぱり?
クラスの皆の視線を浴びた。騒いでいた音が止まってしまった。
ちょっとシーン……。
え? アレ誰? あの美少女誰? でもどっかで見た事あるよーな……。
そんな事を口々に言っているような気がした。
どうしよう……あたしはどうしたら。
ここはクルッと回って「オハヨ」とスマイル? ……できるわけが無い。
どうしようどうしよう。何のリアクションも浮かばない出来ないもう逃げたい!
あたしが固くなって目をつぶっていると、一人の男子が近づいて来た。
そして。
「こいつ、僕の連れ」
と……突然あたしの肩に手をまわし、顔を近づけ、さらに小指を立てた。
…………はい?
……放課後、黒板に堂々と相合傘を書かれるようになってしまった……。