第48話(背犬川で)
寿也だけ、別の地に降りた。
ココは現代では無い背犬川。
しかしそれは寿也には最初、わからなかった。
まずは寿也、自分の現在位置を確認する。
川に架かる大橋の上に居たので、橋を渡りきり、橋に書かれている名前を見た。
『背犬橋』
(……ああやっぱり。特に現代のとは変わりが無いな)
寿也は少しだけ安心した。
道端に一つ、クシャクシャに丸まった新聞の きれはしを見つける。その小さな塊を寿也はヒョイと拾って、広げた。
日付が書かれていた。その日付から、だいたい自分がどの時代に居るのかが判明できた。
(そう現代から遠くないみたいだな……さて どうする)
いくらミルキー超人的ハイパーボンバーな寿也でも、タイムワープは できない。
途方に暮れる。一体どうやって帰ればいいのか。
真木も居ない。居な……。
ふと、橋の下方を見下ろした。背犬川のすぐ側の、川原で。
誰か居る。
一人は倒れていて、側に誰かが居る。何かをしている。
手に白いボトルを持ち、どうやらその中の液体を倒れている一人に飲ませているようだ。
寿也は隠れながら、コッソリと少しずつ、様子が見える程度まで近付いていった。
倒れている方も、何かを飲ませている方も子供だった。そして倒れている方は、女の子。ブ厚い、ギャグみたいな黒いメガネをかけた太っちょの少女だ。
何かを飲ませているのは普通の少年。白いパーカー。陽にやけたような肌だが華奢な体つきだった。そして寿也は この少年を知っていて確信していた。
(千歳……!)
今より少しばかり幼げな、千歳だった。
……一体何を?
寿也は全神経を集中させた。今ココに居る自分と この距離からなら会話の音も聞きとれるかもしれない。
ミルキー電波を応用してでも聞いてやろう、と、寿也は しゃがんで身を固く、息をひそめていた。
一人言でもいい。何か話さないか――。
一言だけ聞こえた。
「俺の理論じゃ助かるはずなんだが。まあいいや、起きると面倒だし」
そして少年は、手に持っていたボトルの表面を着ていた自分の服で拭き、倒れている少女の側に そっと置いた。それから川下へ去って行く。
ヒュウウ……風が吹いた。川の表面に波を立たせる。
完全に相手の姿が去って見えなくなった所で、寿也は立ち上がった。
今度は自分がまだ倒れたままの少女に、近づく。
何をされたんだ?
少女の顔にハッと気がつく寿也。
一歩退く。
少女の顔がブスだったからでは無い。
千歳と同様、寿也は この少女をよく知っていた。
「真木……!」