第47話(片われは?)
は?
双子が産まれた……って。どういう事?
あたしは、わけがわからなくなった。
すると寿也は顔を窓から運転席の方へ向けた。バックミラー越しに、蝶子さんを少し睨むかのように……見た。
「僕が双子?」
寿也が言う。
「双子お!?」
あたしの大声が車内に響いた。
車がピョンと、飛び上がった……のは気のせいだ。
寿也が双子。
正直、ミルキー星が侵略された事よりもショッキングなニュースだった。
……うそぉ……。
あたしが寿也をジロジロと見たら、寿也は「何だよ」と言わんばかりの顔をする。
寿也だって同じく、衝撃的だったはず。
この地球の何処かに、もう一人の寿也が?
「片われとは会っていないの? まだ未来では」
と、蝶子さんが何気なしに聞く。
寿也の片われ。
片われ……。
……。
あたしと寿也の目が合った。いや、顔を見合わせた。
思い当たるフシが、無くは無い。ミルキー星人で、寿也に背格好のよく似た人物。
あたしと寿也の脳裏に、一人の人物が可能性として思い浮かんだのだ。
一人の人物が。
何故か、脳裏に浮かんだ彼の両手には、手術用のメスと鉗子が。
……やっぱり? ……
「私があなたのお母さんと出会ったのは病院で。私は、ミルキー星人が居ると噂を聞きつけて調べに来ただけだったの。あなたのお母さんと仲良くなって、色々とこれまでの事を教えてくれた。守ろうと思ってた。あなたを守るために、あなたを私の友人に預けて……」
「あの! 王女と、その片われの子は、どうなったんでしょう!?」
あたしはシートの後ろから運転席へ身を乗り出す。蝶子さんは答えにくそうだったけれど。
「それが、わからないの。寿也くんのお母さんが……2人を連れて何処かへ行ってしまった事が一度だけあったのだけれど」
2人……王女と片われだけを連れて?
「村へ戻って来た時には、彼女一人だったらしいわ。そして口も割らず、病室でずっと寝たきり状態のままで……まだこれから探すけれど、もしあなたたちに心当たりがあるのなら……」
ピカッ。
突然、車の前方が大きく光り出した。
「!!」
視界いっぱいの光の中へ、車が飛び込んで行ったようだ。
蝶子さんも光の中へ、消えて行く。「やっ……!!」
あまりに眩しくて、目を開けていられない。あたしも寿也も、腕で身をかばうような姿勢をとった。
光の中へ。光に、包まれていく! ……
寿也……!
何……処……!?
あたしは手さぐりで、すぐ隣にあるはずの寿也の手を探した。
でも見つけられない。どうして。
やがて、光は おさまった。
「真木!」
聞き覚えのある声が突然 聞こえた。
恐る恐る目を開けると、両腕を掴んであたしの顔を覗きこんでいる、懐かしい先生の顔。
先生!?
「何処に行ってたんだ! 消えたと思ったらまたすぐ現れて。由高は!?」
「えっ!?」
先生の言葉に驚愕した。すぐに周囲を確認する。
ここはちゃんと理科実験準備室。先生も居る。戻って来たんだ。
でも寿也の姿が無い。
「寿也!」
あたしは先生に すがりながら、暗くなり始めていた窓からの空に、叫んだ。