第45話(火事)
「危険なの! 行ってはダメよ! 村の人たちに見つかってしまったら、あなたも……!」
あたしと寿也は ゆっくりと蝶子さんの方を向く。
寿也が? 行ったら危険?
どうして?
「わけを話すわ……ついて来なさい。……未来の子たち」
涙を拭きながら、蝶子さんは山道を歩き出して下って行った。
ここは木葉村。木葉市になる前の。
要するに、あたしたちは過去の木葉村へタイムワープしてしまったのだ。
何という展開。
こんな都合のいい事って、あるのだろうか? 寿也と手を繋いだだけなのに。
それにしても、これはチャンスだ。
この蝶子という人は、知っている。寿也の出生のすべてを――。
「ひとまず、村を出るわ。私の車に乗って。アレだから」
蝶子さんが山を出た所の道路沿いに停めてある、ワゴンR車を指さした。
あたしと寿也は言われた通りに車の後部座席に、並んで乗り入った。
エンジンがかかる。蝶子さんは車を発進させる。狭い道で華麗に車をバックさせたりして、Uターンした。
話の続きは、しばらく車が走ってからになった。
蝶子さんから話を切り出す。
「驚いたわ。寿也って、まさか! と思ったけど。由高、っていったから。確信したの。由高さんは、今のあなたのご両親でしょう?」
「……はい」
「さっき、まだ4歳だったあなたを由高さんに預けてきたわ。私はあなたの本当のお母さんの様子を見に、こっちへ戻って来たんだけど……」
顔は見えないけれど、声のトーンが下がる。
「あんな火事、もう助からない……」
絞り出すような声で言った。
さっきの火事を思い返す。遠かったけれど、はっきり炎が見えたという事は現場は かなりの大火事だったのではないだろうか。
「村の人が放火したとは限らない。ただの事故かもしれない。だけど、あなたとあなたのお母さんは、村の人たちから嫌われて……気味悪がられていたから」
「……」
あたしと寿也は無言だった。
村の人たちから嫌われていた?
だから? だから火をつけたの? 何で?
「村の人たちは、ヨソ者を嫌う。しかも、あなたは……」
そこまで言って黙った。あたしは、ハッとして言った。
「ミルキー星人だから……?」
「そうね」
蝶子さんはバックミラー越しに あたしたちをチラッと見た。
「と、いう事は、あなたもミルキー?」
「は、はい」
「そう。寿也のお友達?」
「そ、そうです……。手を繋いだら、こんな所へ来ちゃって」
「フウン……? 不思議現象ね。そんな事が」
あたしたちの会話にメスを入れるように、寿也が口を挟んだ。
「母は、村の人たちに。だから村の人たちは未来まで、それを隠そうとしたってわけだ」