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第42話(データ)

 あたしは その綾島とかいう女の人を思いきり突き飛ばすか、引っぺがそうとした。

 勢いよすぎたのか2人の体は離れたけれど、寿也だけ尻もちをついてしまった。

 しかしあたしは謝るどころでは無い。


 ちょっと、何してんですか!


「気にしないで。これが私流の調べ方だから。寿也くんのデータをとろうと思って。私の力で血液検査もレントゲンも必要なくなるからね。さてと、あなたのも とらせてもらえるかしら」

 そう言って、あたしの方に寄って来た。

「い、いやあああ!」

 あたしは叫ぶ。

 さらに、後ろを向いて、逃げる。

「あ、待ってよ!」

 逃げるあたしの後ろの方で叫ぶ。「ちょっと!」


「寿也のバカアアア!!」


 あたしは混乱して、自分でも わけのわからない事を叫びながら走った。

 おかしい。

 寿也に謝るどころか、ますます溝を深くしてしまったような気がする。


 あたしは家に帰って落ち着いてから、沈んだ。


 ……


 真木が去った後。

 寿也は静かに立ち上がった。眉間にシワを寄せながら、パンパンと服についた砂を払う。

「真木に王女と言うな。知らないんだ本人は」

 寿也はジロッと相手を睨んだ。

「そうだったの。だからあんなに……ごめんなさい」

 本当に申し訳なさそうに、シュンとする。「まあバレてないからいい」

 少し落ち着いて、寿也は平常な顔に戻った。

「本当に飛んで来たんだな……目立ちすぎだ」

「私、超能力が少し使えるの。よろしく、同士」

と、手を差し出し握手を求めた。

「まだあんたを信用していない。今度来る時は普通に、真さんと一緒に来て」

 寿也はそう言ってプイと去った。


 握手を堂々と拒否された綾島のどか。

「エーン……」と、のどかは泣き真似をしてみせる。

 そして、チロっと舌を出した。



 あたしのムカムカは成長していた。

 家の台所で、フライパンの中のチャーハンにイラつきをぶつけて調理している……のだが、はたから見ると何処かの中華料理人に とり憑かれているように見えるだけかもしれない。

 ジャ! ジャ! ジャ! ジャ!

 かき混ざる具。フライパンの中で踊る飯。暴れ狂うコンロの炎。

 非常にあたしはイライラしていた。

「おまちどう!」

 皿にチャーハンが盛られドドン! とコタツ机の上に置かれたが、具も飯も黒焦げで皿から こぼれていて汚い。

 さらにスープも。汚い上に味が……小宇宙。

「ま、真木。今日はやけにアグレッシブだな」

 かなりウロたえる先生。「べつに!」あたしは気にせずに座ってチャーハンを食べる。


 カカカカカッ!

 ……音にすると、こんな感じでチャーハンを口に かき込んだ。


 知らない、寿也のバカ。

 冷静に考えれば、寿也は何も悪くないのだけれど。

 ええいっ、ただのヤキモチだ。オラオラオラぁっ!!

 カカカカカッ!


「真木ぃ……」

 先生の両目から涙がドバーッと流れていた。


 きっと、スープが辛かったに違いない。




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