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第39話(何処かで)

 あたしは学校帰りの途中だった。

 もう紅葉も、終わりに近づいていた。ここ2・3日でグッと寒さが増している。

 そろそろ一枚 上着がいるのかな、と考えつつ校門を出た所で。

 バッタリ千歳くんと出会った。


「や。寿、元気? 相変わらず電波送っても留守電にメッセ入れても、返事くれなくって」

と、今日は白のダウンベストを着ている千歳くん。手をパッと上げて挨拶あいさつをした。

「いつもと変わらないけど。……たぶん」

と あたしは言った。

 ここずっと、寿也とは口を利いていない。怖くて話しかける事ができなかった。

 怖くて……。

「ふうん。何か元気ない。まあいいや、それより真木さん。一度さ、聞いてみたかったんだけど……」

 チラッと、横目で あたしの顔色をうかがった。

 何だろう?


 …………


 ……


 ……その時ちょうど木枯らしが吹いてきて……あたしと千歳くんの足元をさらう。

 

 ザワッ……。カサカササ……。

 落ち葉が団体で地面の上を、駆けてくる。

 千歳くんは静かにあたしを見つめた。

 ……


 千歳くんがゆっくりと……口を開く。

「……俺たち何処かで……会 っ た 事  無 い か ? 」



 ザッ! ……


 いっせいに、風が吹いた。まるで太鼓を打ったよう。

 静かだった空気が騒がしく、あたしたちを撫でた。木々が見ている。あたしたちを高みから、見下ろすように。

 枯葉舞い散る秋の終わりの夕暮れ。あたしと千歳くんの居るこの場所だけが いつの間にか別次元に すりかわったかのように思われた。

 千歳くんの言葉が妙に頭に こびりつく。


『俺たち 何処かで……』


 何故そう思うのか……と。


 あたしは返答できなかった。

「……ごめん。気のせいかもしれない。気にしないで。寿に、よろしく」

 ……クス、と頼りな気に笑って千歳くんは去って行った。

 あたしは立ち止まったまま……。

 まるで時間を止められてしまったかのように、動く事ができなかった。


 あたし、千歳くん、寿也。

 ……あたしたち、魅かれてる。


 ……おかしいな……? どうして あたしたちは魅かれ合うんだろう……?


 答えの出ない問いがグルグルと頭の中で回っていただけだった。




 あたしはその足で背犬川へ行った。ただ何となく……だ。

 そうしたら。


 川原に、寿也が居た。「げっ」

 あたしの進む足が止まる。辺りは夕暮れから徐々に暗くなり始めていた所だった。

 あたしは寿也が かがみ込んで何かをしている様子を、まだ遠くの方からジッと目を凝らして見ていた。

 ここからだと、寿也に気づかれずに済む。だけど、寿也が何をしているのかが、見えないし わからない。


 どうしよう。気になるな。困ったな。


 あたしもその場に かがみ込んで、しばらく寿也の動きを見ていた。

 何か手を動かしているように見えるんだけどな……と、寿也の手元に注目してジッとしていた。

 すると。


 寿也の手元の物が、崩れた! 何だ何だ?

 あたしはパチンと指を鳴らした。わかったぞ!


 川原の石を積んでいるんだ!


 ……。



 ……何やってんの? 寿也……。




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