第38話(ケンカ?)
寿也は狼みたいだな。狼少年、寿也。何か前にもチラッと思った事があった。
「寿也って……孤独」
言葉にしてみたら、寂しくなってしまった。
ああもう、あたしどうしたらいいんだろう!
「ちなみにアレは寿也くんの念写。カメラを持って、写し出した写真だ。イメージだからね。写真を撮られた覚えは無いだろう?」
そう言う真さんの言葉通り。あたしは寿也に写真を撮られた覚えは無い事にハタと気がついた。
「すごいね。立派な超能力だ。あの写真は初めて念写してみたんだと言っていた。思いのほか上手くいったんで、記念に貼ってあるんだってさ」
……何だ。そうだったのか。あたしてっきり……。
ちょっとガッカリ。
「ま、真相は本人に聞けたら、いつか聞いてごらん」
真さんは ちょっと意味深な事を言った。
本人にって。……うーん……。
いつか、ね……。あたしは少々、途方に暮れていた。
「どうかしたの? 真木ちゃん。そんな切ない顔をしていると、危ないオジサンたちに襲われちゃうぞ」
……真さんもその部類に入るのでは。まあいいや、それはどうでも。
「寿也……家に帰ってきた途端、ものすごく怒っちゃって」
あたしが部屋を見たから。
それを察した時、寿也はきっと、ものすごく怒った。
だからあたしが寿也のお母さんに玄関まで見送られるまで、ずっと。口を利いてくれなかった……んだと思う。
「そっか。ケンカになったのか。冷戦。……大丈夫。そのうち、ほとぼりも冷めるよ」
「うん……」
真さんの言葉が全身に染み渡る。
泣けてきそうだった。
次の日、真さんは何処かへ消えた。
『2・3日消えます。シュシュッ』という、置き手紙を残して。
シュシュッと消えた真さんの事より、あたしは寿也の事で頭がいっぱいだった。
どう謝ったらいいんだろう。『勝手に部屋を見てごめんなさい』?
でも、部屋を見たいと言ったわけでは無かった。
あの時……。
「寿也ってさあ、ホラ。友達居ないのよ〜。困った子ねえー。だからっ、ンモー、嬉しくって嬉しくって。寿也にもついに……ああ青春! ピンク春と読んでも青春! なのね〜」
と……寿也のお母さんは大興奮していた。
あたしは寿也のお母さんとリビングのソファに並んで腰掛けて、紅茶を頂いていたわけだけれど。
意味のわからない事を言われてチンプンカンプンだったあたしの手を引いて、
「見せてあげる! 寿也のスイート・ルーム!」
と寿也のお母さんは調子をこいた。手を引かれるがままのあたしだった。
……今から思えば、遠慮しとけばよかったんだ。
もう遅い。寿也は怒っている。
どうしよう……。