第37話(部屋)
あたしは寿也の部屋への興味を選んだ。決してレンガ占いの誘惑に負けたわけでは無い。
「レンガ占いどうだった?」
「素晴らしかったです。もう2度と参加したくありません」
あたしはキッパリと言った。いや、真さんに。寿也のお母さん本人には言っていない。
「俺の時は『紅茶占い』っていって、エレガントだなあと思って参加したんだけど。とんでもない。シャワーを借りたよ」
そういえば真さんが寿也を送りに行った時。帰りが遅かった上に、真さんだけ寒がっていた気がする、あの時。
そんな事をしていたとは。もう詳細を聞く気にはならなかったけれど。
「ちょっと変わったご両親だったけど、あんなオープンな人たちだからこそ、寿也くんは幸せなのかもしれないね、今」
真さんの言葉にドキンとした。
あたしには先生が居る。だから……すごく自分は幸せなんだなと思った。
ちょっと今、先生の姿がアレだけれど……。
「寿也くんの部屋、見たんだ? びっくりしたろ」
面白そうに真さんは微笑む。以前 真さんはコオロギになって、部屋を見ている。寿也のプライベート・ルーム。
一体どんな意外なものが置いてあるんだろうと、期待に胸を膨らませていた。
どこかの民族衣装とか、はたまたスペースシャトルの模型とか。頭がいいって言うからブ厚い科学や医学の本が棚にズラーッと並ぶとか。それとも路線は脱線してアニメのポスターやコスプレ衣装がクローゼットの中に。
とにかく、そんな風に様々な想像や憶測を張り巡らせていたわけだけれども。
あたしの想像を超えていた。
「意外だった」
あたしは寿也の部屋に一歩を踏んだ瞬間。
寿也の世界を知った。
「何にも無くて」
何も無い。
……。
……何も……。
「あっただろ、一つだけ」
真さんは まだフフ、と微笑んでいた。ニヤニヤ笑いにも見える。
あたしの頬が少し赤く染まる。
寿也の部屋にあったのは。
……あたしの写真、一枚。
白い壁に囲まれた部屋。ベランダへと続くガラス戸の横にそっと、一枚。
真正面を向いて上半身だけ、白いブラウスのあたしが写っている写真だった。
カーテンや、ベランダにはスリッパくらいはあったのだけれど。部屋に入った瞬間に感じた印象は「何も無い」だったのだ……。
ポツンと、その写真だけがすごく目立ってしまって。
恥ずかしい。
「何だろう、あの部屋。机もベッドも本棚も無い。何で何にも無いの……」
「勉強しないから机も必要ないそうだ。宿題する時はリビングでするって言うし。何処で寝てるんだ? って聞いたら『押し入れ』って……ドラ○もんだなぁ」
押し入れまでは見ていないけれど、教科書とかも一緒に置いてあるんだろうか。
不思議だ。
不思議すぎる。何でこんなに徹底しているんだ寿也。
「ゴチャゴチャしているのが嫌いなのかな。キッパリとあっさりと それでいて、群れない。独りが好きなタイプ」
と、真さんが寿也を分析した。
【あとがき】
普段何しているんだろうか寿也。
あやとり?