第36話(寿也の家)
初めて来た、寿也の家。
普通に、一戸建て駐車スペース 車2台分、庭は恐らく家の裏だろう、付き。
白い壁造り赤茶けた色の屋根。庭の方からは大きな木の先端が少し見える。
駐車スペースに車は一台も停まっていなかった。
……留守だろうか? 門で、インターホンを押すかどうか迷っていた所だった。トントンと、肩を叩かれる。
振り返ると……。
……さるぼぼ?
いや、黒い頭巾をスッポリと かぶっているだけだ。そして。
「あなた、真木ちゃんね? 寿也のお友達の……」
と、ニッコリ笑う。
身に まとっている服が黄金色だ。ハッピのように見えるけれど、下に着ているものもスカートも、みな黄金色で統一。そして黒頭巾。手に持っているのは、黒いセカンドバックと……どう見ても重そうな、重量感タップリのスーパー『カモイ』と書かれた袋。
買い物帰りらしい、その30代くらいの女性。
……もしかして……。
「寿也の母です。フフフ」
やっぱり。寿也のお母さん!
「あなたが真木ちゃんかあ。いやあ、寿也の部屋の壁にね、ウフフフフ。ウフフフフ。アハハハハ」
何故あたしは笑われているのだろうか?
「あの……寿也くんは……」
あたしがオズオズとしていると、まだ含み笑いをしながら「まだ学校から帰ってきていないけど〜」と言って、一度あたしから視線を逸らす。
学校に行っていると思ってたんだ。どうしよう、今日は寿也、学校に来ていないんだけれどな。
あたしが色々と考えていたら、寿也のお母さんは元気にパッと明るく、
「どうぞ上がっていって! せっかく来たんだから! ちょうどこれから……」
と、スーパーの袋の中を張り切って見せた。
「レンガ占いをしようと思ってた所なのっ」
すごくウキウキしながらトトンと足でリズムをとった。
重そうだと思った袋の中には、『¥98』と値札の貼られた茶色いレンガが積まれ入れられていた。
……ここまで聞いていた真さんも、激しく同意する。
「俺も驚いた。寿也くんのお母さんがそんな個性的な女性だったなんて」
「正直かなり迷いました。寿也の部屋を一度覗いてみたくて……興味あったんですけど、残念ながら占いには興味が」
「……でも家には上がっちゃったんだろ?」
真さんはニヤリと笑う。
「……はい」
【あとがき】
黒頭巾をかぶった皮膚が金色のさるぼぼが、自分の携帯にぶら下がっています。
たらこと一緒に。