第3話(真木の美女伝説)
真木は、美女になってしまった。
どこかの誰かが言っていた。「彼女から金色のオーラが見える」と。
真木が街を歩けば皆ふり返る。都会に行けばモデルや宗教など多数にスカウトされる。
知らないおばあちゃんに拝まれる。店で何かをオーダーすれば伝説のカクテルが生まれる。
「冗談じゃないっての!」
真木は逃げるように家に引きこもっていった。
最初は騒がれていた真木の美女伝説も、時とともに75日くらいで消えていった。
親代わりだった教師・岩生はホッとする。自分の安月給では引っ越そうにも逃げるに逃げられず。「学校へ行け」と適当に言った事を後悔していた。
ここで、真木は何故モデルなりTV出演なりなんなりして一発儲けようとしないのか? という疑問が生まれるが……。
真木はこの時まだ10才。訂正、美女ではなく「美少女」だった。
さらに、美少女になる前はイジメられていたという全く逆の人生だったのだから、このギャップについて行けず人間不信に陥るのは当たり前。騒ぐ世間からは逃げるしかないのだ。
教師・岩生は小学校教師。真木の通っていた学校に勤めている。
拾った子とはいえ稼ぎに利用するような大人ではない。教師・岩生はズルくない、お金には目は くらまない! ……はず。
「お、10円見っけ」
教師・岩生は家のアパート前に落ちていた硬貨を拾い、瞬秒で服のポケットにしまう。
「それじゃ行ってくるからな、真木。今日もしっかりしてろよ」
アパートの2階を見上げながら、そう言葉を出す。
学校へと向かった。
教師・岩生はミルキー星人に対しての理解は深かった。何故なら、友人にミルキー星人がいたからだ。
実は、『惑星シャンプー』の効用もその友人によって知っていたわけである。
教師・岩生にはこれだけは言える。
教師・岩生は真木が大事だった。親として人として。
……なんて事は ちっとも気にせず、真木は布団でグースカ寝ていた。
起きた頃にはもう昼前。いつも通りの朝のような昼のような気分を迎え、布団をたたんだ。そして軽く伸びをした後、ハタと台所で目を止めた。
……台所の上に置いたままの、水色の布に包まれた弁当箱を発見。
「うっわ……忘れていったんだ。……ドジ」
届けてあげるべきか食べてやろうとも思ったが……さんざん迷って届ける決心がついた。
いざ出陣じゃ。
変装して。
黒ヒゲ付きの鼻メガネ、マスク、茶色いくすんだロングコート、帽子、黒ブーツ。
……怪しさ全開。だが悲しい事に本人は気がついていなかった。
【あとがき】
「小学校教諭」の方が一般的かもしれませんが……響きの好みで「教師」と呼ぶ事に。
「しょうゆ」みたいですね。ああくだらない。