第25話(出生)
あたしの知らない所で話が進んでしまっている。
いきなり寿也は このまま明日、真さんと一緒に行くと言い出した。
「突然すぎるッ。いきなりなんて! いきなり明日オーストラリアなんて!」
と、あたしは訴えた。一体この2人、何考えているんだろうか!?
「まあまあ待って、真木ちゃん。いきなり海外には連れて行かないから」
「へ?」
ポンポンと あたしの両肩に手を置いて、真さんは あたしを落ち着かせた。
「どういう事? 寿也」
真さんの後ろに居る、寿也に話しかける。「……」寿也は黙ったままで答えてくれそうに無い。
チラッとそれを見た真さんが代わりに説明する。
「オーストラリアに連れて行くのは、もっと後。それより先に行きたい所があってね。日本だから。安心して」
「日本って……何処ですか?」
あたしは聞いた。意味が全然わからない上に、結局やっぱり寿也は海外に。
でも、あたしもいつかは先生とオーストラリアへ……喜んでいいのか、どうなんだか。
「北だよ。とにかく北」
真さんの冷静な言葉がよく部屋に響く。
「寿也くんが昔に居た所」
あたしはどういう表情をしていいのか わからなかった。
寿也の出生も謎――。
あたしも謎。そういえば、佐藤くんも養護施設に入るまでは、謎。
謎トリオ。ミルキー発。
「そもそも俺がここに来たのは、真木ちゃんの不思議調査のため」
コタツに入り直した あたしたちは、真さんの事情を聞く事になった。
「あたしの?」「そう」
「でも寿也は」「身近なミルキー星人という事で。ついでのつもりだったんだよ」
長くなりそうね。
真さんの話――。
あたしは以前、『惑星シャンプー』をアホ飲みして、昏睡状態に陥った。
しかし、奇跡の生還。
単純に、先生は喜んだ。シャンパンとケーキを用意して あたしの復活祭まで開かれた。
「今夜はシャンパーニュ!」と先生は盛り上がる。
シャンパーニュとはフランス地方の名前だが、使い方が間違ってやしないだろうか。
……まったく何に酔っているんだ、先生。子供の前で……。
話を戻す。
大興奮した先生は勢いで電話をかけた。
ミルキー星人である、真さんに……。
真さんは先生の話を聞いて、訝しがる。
『惑星シャンプー』を飲んで無事生還? 有り得ない、そんな事は。
アレは とっくの昔に生産中止、自主回収された商品だ。もうほぼ今は存在していないはず。
一体、幾人のミルキー星人が死んだと思っているんだ?
……先生は叫ぶ。「ヒイー!」
まるでお化けにでも会ったかのような悲鳴。
そんな危険な代物だったとは。「どうして教えてくれなかった!」先生は涙交じりに電話口の向こうに居る真さんに言う。
真さんは あっけらかんと答えた。
「何となく」