第24話(ミルキー・アイズ)
寿也の視界。
ミルキー星人の頭には『ミルキーアンテナ』がそれぞれ付いている。
形としては、球に楊枝が突き刺さったような……見た目、まち針のような。頭が針山のような。
とにかく、そんな物が頭に刺さっている。
そしてその球の周りをグルグルと、文字がまわって動いている。その文字は見る人によって読めるように変換されている。
真の頭のアンテナの周りには『常野真』という文字がグルグルと。
もちろん、佐藤千歳のアンテナにも『佐藤千歳』と。
「面白い事に、真木の場合は『リリン(王女)』と、とても長い名前が書いてあるんだ」
「な、な、な、な、何ーーーっ!?」
真は手を上げて大声を上げ、後ろに倒れた。
衝撃的すぎる事実。
真はクラクラしてきた頭を支えた。
「……と、いうわけで。僕は初めて見た時から真木がミルキー星人だという事は知ってたわけ。王女って こいつか、とも」
「素晴らしい……! 何て便利なミルキー・アイズなんだ。感動した!」
ブルブルと、体が震えている。
「僕も意味がわからんけど、真木を守らなければいけないらしい。たぶん、王女だから」
「そうだな!」
真は立ち上がった。パッパッと、服に付いたホコリを払う。
「なるほど。そういう意味では君は真木ちゃんの王子だ。騎士と書いてナイトだ。守ってあげなければ。しかし……」
「何」
「それに関わらず。君は真木ちゃんが好きでは無いのか? ……まあ、まだ小学生だし。早いかもしれないけど」
寿也はまたフウ、と息をつく。
「そっちは興味無い。あんまり」
「ハックシュン!」
くしゃみ一発。「遅いな、真さん……」
鍋を片付け洗い物を済ませた後。コタツに入って真の帰りを待っていた。
机にアゴをつきながら、色々と これまでの事を思い出したり考えたりしていた。
あたし、何で生きているんだろう。『惑星シャンプー』を飲んだはずなのに。
確かに自分は もがき苦しんで死んだはず……なのに、生きている。何故。どうして。
自分の体が不思議で たまらない。手を広げてみせる。
あたしは生きている……生きていてよかった。
『よかったじゃんか。死にたくなくて』
いつか寿也が言っていた。時々、思うのだけれど。
寿也は何であたしの考えている事がわかるの?
「ただいまー。真木ちゃん、岩生。おまたせ」
ドンドンと、ドアを叩く音が聞こえた。あたしは玄関に出る。ドアを開けると、真さんと……隣に寿也が。
しかも寿也はリュックを持って。
「お……かえり」
何だ何だ!? 一体、どうなっている?
寿也は帰ったんじゃなかったの?
「ま、ひとまず部屋に入れて。寒いから」
あたしは部屋の奥へ引っ込みながら、「ねえ、どういう事」と聞いた。
「寿也くんをぜひ研究したくてね」
と、真さんはニッコリと笑う。とても嬉しそうに笑う。
「研……? それで?」
寿也はOKしたの? そんなまさか。
「寿也くんをオーストラリアに連れて行こうと思うんだ」
はあ!?
「何なら、 解 剖 してみてもいいかと」
解剖。
あたしはそばにあったウインナーを、真さんに投げつけた。
【あとがき】
とても長い名前。
いつ公表しようかタイミングが。