第2話(進化なのか?)
軽井真木は地球に「来た」のか「居た」のかは不明である、ミルキー星人。
死のうと惑星シャンプーを飲み干すが、失敗。生還してしまう。
誰かが「衛星リンス」を飲ませたんだ……しかし、その事は真木は知らない。
少年Tの事も……。
目が覚めた真木は、姿が変わった。
「目が覚めたか、真木。よかった……」
と、家の布団のすぐ脇で、教師・軽井岩生は安堵した。
「ここは……あたし、生きてる」
真木はキョロキョロと目を動かし、思い出してきた記憶を辿って自分の今の状態を把握した。
ここは自分の家で、あたしは生きている……。
何で。
「いつまでたっても帰って来ないから、心配して近所を捜して……見つけて、まではよかったんだけど」
教師・岩生は自分の手に持っていた、空になった「惑星シャンプー」のボトルを見つめた。
「窓、見てみろ」
教師・岩生に そう言われ、真木は まず眉をひそめる。
いいから言われた通りに起き上がって横の窓ガラスを見ると……「何コレ」
夜の窓に映った自分が見える。
真木はスリムになっていた。
教師・岩生がココで真木の目が覚めるまでの間の ちょっと目を離した隙に。
1・2・3……ハイ、と振り返った時に。
真木の姿はおデブから超スリム体型に、進化していたという。
……いや、進化なのか?
繰り返そう。『惑星シャンプー』の効用を。
『不要なもの・汚れなどを洗い流す または分解してくれる液体』
「お前、無事なのか。本当に」
教師・岩生は疑わしげに今度は真木を見つめた。と、言われましても……と表情で返事をする。真木にそれ以外、性格が変わったとか珍芸が可能になったとか、変な所は見あたらなかった。
いや、姿の変貌が変すぎる。
「お前がミルキー星人だとバレちゃまずいんで、病院にも むやみに行けないし。どうしようかと悩んでいる。とりあえず、無事で何より」
いや、だけど姿が。
「このシャンプーは いつか俺が肥満中年型メタボ星人になって死にたくなったらイチかバチか飲んでやろうと秘蔵空間にしまっておいたんだ。でももう空っぽ。くやしいが、真木が無事ならいい」
両手で顔を覆う。
「無事でいい……ぐっすん」
よほどくやしかったのか教師・岩生。ちなみに秘蔵空間とは彼のタンス。
「あたしは平気よ。くやしいけど元気よ。でもあたし、どうなっちゃうの……」
今後の事を考える。超スリムになった自分。
「学校に行け」
真木の第2の人生が始まった。