第18話(パーツが足りない)
「好きなんだ。どうしても」
彼は純粋な少年らしい。瞳に『 純 心 』と書いてある。
しかも『ピュ・ア』とルビ付きで。
「 あ な た を 解 剖 し た い 」
何処かのCMみたいな事を。
解剖って、ソコ! 歪んでるよアンタ!
「それでも お前は友達になるんだな。好きにすればいいけど、帰宅した時にパーツが足りなくなっていても僕は知らない」
寿也が言い放つ。……そんなぁ……。
「余った事はあるけど」
身の毛がよだつ事を言う佐藤くん。
一体何処までが冗談なんだ。
今まで黙って聞いていた先生が、やっと割って入って来てくれた。
「先に手当てをしよう、真木と……君。君が由高にラブボンバーなのは わかった。だけどね、押しつけるだけのラブではいけないよ。相手の事も考えなくちゃ。わかるかい」
先生がとても優しい目で佐藤くんの両肩に手をポンと置いた。
おお、大人らしい事を言っている。さすが先生、肩書きは飾りじゃない。
「真木を解剖なんぞしたら、ただじゃ済まさないからね。覚えておくように」
先生、顔は笑っていますが、目が ちっとも笑っていません。
佐藤千歳少年はミルキー星人。あたしと同じく、自分の出生は不明だという。
あじさい学園という、ここより少し離れた所にある養護施設で暮らしていて、たまに背犬川を下って遊びに来る。町に来た時、たまたま見かけたミルキー星人。同士。
それが寿也だった。
佐藤少年は すごく寿也に魅かれる。そして知りたくなった。何もかも。
電波をキャッチして盗み聞きする。真木という子と仲がいいのか。
それならば、寿也に気に入られたその女の子の事も知りたい。会いに行ってみよう。
気持ちは止まらない。いっそ寿をさらってしまおう、フフフのフ。
……という経緯らしい。
あの手に持っていたハサミで、寿也は どえらい目にあう所だったのだ。
少しケガをしてしまったけれど、捨て身のタックル的体当たりをしてよかったと思う。
佐藤くんは寿也に魅かれて、と言った。あたしも寿也に魅かれている。
何故だろう。わからない。
ただ、あたしは解剖はしないけれど。
「……何だか、寒気が……」
寿也がブルッとひと身震いした。