第16話(正体?)
寿也が危ない。あたしは焦った。
あの寿也が、助けを求めている。あの寿也が。
手からミルキー棒を出す事の出来る、あの寿也が。
バーン! あたしは屋上のドアを開け勢いよく飛び込んだ。「寿也!」
あたしが目にした光景とは。
寿也と、前に校門で会った佐藤千歳とかいう少年。彼が、寿也に襲いかかろうとしていた。
左手で寿也の襟首あたりを、右手でハサミを持っている。
「な、な、な、な、……!」
『な』がいっぱい。
「何してんのよぉーーーっ!」
あたしは猛突進して体ごと ぶつかっていった。ドーーン!
佐藤くんの体は そばの手すりにぶつかった。「痛っ……!」
イタイ。
痛みを微かに感じた。ジュリエールの衣装のままだったあたしは半袖だったのだけれど。体当たりした時にハサミでサッと腕を引っ掻いたようだ。一筋の線が走る。
「真木ィィィ! 大丈夫かあああ!」
親ばか教師・岩生先生の登場。
完全に あたしの先行く足に遅れをとっていたが、日が沈む前には辿り着いたようだ。ゼエゼエと息を切らし髪を乱し、何故かシャツをズボンから はみ出している。
「あたしは平気よ! 寿也 大丈夫!?」
あたしは寿也の両肩をグワグワ揺さぶった。
激しく前後する寿也の体。
「もう少しでお前に揺れ殺される」
「あっ、ごめん!」
パッと手を放すと、寿也はヨロリと立ち上がった。
「メトロノームの気持ちが体感できた」
少し頭がフラつくのか、気分が悪そうに見える。「寿也ぁ……!」
「見ろよ真木。こいつの正体」
……寿也が指さした方を見て、愕然とした。
ポタリ。
佐藤くんの腕から、血が。
どうやらハサミで誤って突き刺してしまったらしい。
「……」
佐藤くんは黙ったままだった。
痛そうだ。
いや、それよりも。
血が……白い。