表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/100

第15話(王子強奪)

 寿也がさらわれた。

 え? あたしを怪盗紳士がさらっていくんじゃなかったの?

 予想もしていなかった事態に、舞台袖とあたしは大慌てだ。とにかく幕は下ろされた。

 観客は、あたしの最後のセリフが物語のオチだと思っているらしい。ロミオンに捨てられたジュリエール……もしくは王子を強奪された姫。


 それより、寿也は何処!?

「寿也!」あたしは駆け出した。

 舞台裏で委員長たちも大騒ぎだった。「また寿也くんの悪ふざけなの!?」……と、おかんむり。

 違う。

 ああ、目を開ければよかった。一体、あたしが目を閉じている間に何が起こったというのだろう。

 あたしはクラスメイトの間を駆け抜けて、舞台裏を抜け出した。「真木ちゃん! 舞台あいさつが」と誰かが言った。「ゴメン、パス!」

 あたしはそれどころじゃ無いんだから。



 先生を見つけた。中庭でキョロキョロしながらウロウロしていた。

「先生!」

「真木!」

 ハアハアと、飛び込むように走ってきたあたしを支えてくれた。「とととと寿也が……」

「最初、気がつかなかった。鴨目が、出番を間違えたかアドリブか悪ふざけだと思ったんだが。……鴨目は、トイレで気を失っていたよ。さっき保健室に運んだ。それより」

「誰だか、わからなかったの!?」

「怪盗紳士の服を着て顔を隠していたから、鴨目だと思っていたんだよ! でも違った。由高は何処行ったんだ……!」

 顔面蒼白の先生。

 あたしだってそうだ。血の気が引く。そして、涙が出てきた。

(寿也……! 何処? 何処に行っちゃったの!? ……)

 拭いても拭いても、ポロポロ涙がこぼれてくる。不安が、さらに後押ししてくる。

(寿也ぁ……!)

 悲鳴のように嘆いた。


(「……真木……」)


 微かに、声が聞こえた。

「寿也っ!?」

 あたしは声に出して名前を呼んだ。突然の事にびっくりした先生は、そのまま あたしを見守っている。

(「……僕は、無事だけど……」)

 再度、今度は はっきりと聞こえた。紛れも無く、寿也の声だ。

「これってミルキー電波よねっ!? 何て便利なの、ヤッホウ!」

 今さらミルキー電波の利便性について感動している。しかも無料だ。

(「学校の屋上に居るから、来てくれるか。とりあえず」)

「屋上ね!? わかったわ、先生も居るから、2人で すぐ行く!」

 あたしがクルリと方向転換して今にも走り出そうとすると、寿也がすごく低い声で言った。


(「早く。色んな意味で、身の危険を感じる……」)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ