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第12話(若白髪は)

 演目『ロミオンとジュリエール〜愛と悲しみのハテ〜』とは。

 大河内秋乃が脚本・演出・監督を手がけ お送りする、一途な男女の恋愛劇。

 ただしバッドエンドストーリーでは無い。先に死んだロミオンの後を追うようにジュリエールは自分の胸に剣を刺そうとするが、その前に最期だからとロミオンに口づけするとロミオンが生き返るという素晴らしい赤面ストーリーとなっている。

 しかしあたしが言い出す前に教師・岩生先生の猛反発にあい、脚本にティーチャー・ストップがかかった。

 よって、大河内秋乃は しぶしぶ結末を変更せざるを得なくなった。親ばかバンザイだとあたしは先生を褒め讃えた。


 結局、結末はどうなったかというと。


 謎の怪盗紳士が現れジュリエールをさらってしまうという破茶滅茶エンドになった。

 ……これなら、最初の方がまだマシな気がする……。

 急きょ、怪盗紳士役になった男子、鴨目かもめくんは言った。

「俺、観客から物 投げられたらどうしよう」

 ……大丈夫だよ、少しの間だけだから。



 いよいよ明日は学芸会の本番。そう思うと、ジッとできなくなってきた。

 ワクワク? それともドキドキ?

 両方だと思うけど、あたしは放課後、最後の体育館での練習で非常に落ち着かなかった。慌ててセリフや動きを間違えるたびに「大丈夫かな こんなんで……」と不安がよぎった。

「大丈夫だよ、真木ちゃん」と仲の良い友達は声をかけてくれるけれど、頭ではわかっていても体の震えは止まらない。

 ああどうしよう。

 チラッと、寿也を見ると。寿也は何かを一心に見ていた。

 え、何だろう、と視線の先を追うと、一人の女の子の姿が。

 えっ!? まさか……!? と、あたしが一歩退いてヨロけると、寿也がその女子の方へ近付いて肩を叩いて呼んだ。

 そして「すごく気になってたんだけど。一本だけ白髪が生えてる」……


 ……若白髪は抜くより切った方がいいらしいよ。



「寿也」

 最後の練習を終え、一人きりになっている寿也を見つけた。体育館の外の水道で、手を洗っている。

 あたしは横から話しかけた。

「何」

「言うの忘れてたんだけど。佐藤千歳くん、って知ってる?」

「知らない」

 えっ、と、あたしは考え込んでしまった。

 じゃあ……彼は何。

「そいつが何?」

と寿也に聞かれても、困った顔になってしまう あたし。

「知り合いだと思ってたのに……」

 弱った。

 このままでは、謎の少年に なってしまう。

「うーんとぉ……かくかくしかじか。ミルミルキーキー」

 あたしがこの前 校門で会った事を説明すると、寿也は手を拭きながら「ふーん」と言った。

 ふーん、って……。

 それだけ?


「こっちの謎が一つ解けた」

 寿也が あたしを見る。「え?」



「昨日から誰かに つけられている」




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