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姫と近衛と魔法少女(その少女はボクのことを姫様と呼ぶけれど…)  作者: 阿弖流為
魔法少女に付きものなアレですよ、アレ!
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[56]キノコブラザーズ!

 結界を解除したボク達は白梅会の小部屋にいた。

 静かな放課後。遠く吹奏楽部の合奏。校庭からは陸上部の掛け声。何か面白い話題でもあったのだろうか、廊下で少女達の笑い声が弾けた。


 津島さんと香純ちゃんは手分けして紅茶を淹れている。

 浅見さんとアヤメはお茶菓子談議に夢中。


 何の変哲もない、地方都市にある女子高のありきたりな一コマ。そんな女の子だけの空間に、どういう訳かボクも溶け込んでいる。


 何か申し訳ないような気もするけれど、こんな事が許されるのもきっと世界が平和だから。そう自分を納得させることにした。


 目の前の四人は相変わらず、楽しそうにティータイムを過ごしている。


 さっきまでの闘いが嘘のような、平穏で静かな日常。


 でもそんな日常の裏側で、ずっと前からここ白梅女学院では、信じられないような怪異が繰り広げられてきた。白梅会はその度に、ありふれた学園生活を守るべく戦ってきたのだ。

 だけど目の前の少女達は、そんな秘めた任務を担っているなんてこと、おくびにも出さず純粋に静かな放課後のひと時を楽しんでいた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 テーブルを囲み少し遅めのお茶をしていたボクらの前に掌サイズのキノコ、ディッピーがピョコピョコとした足取りで躍り出てきた。


『魔法少女共! これからよろしく頼むキノコ! さて、自己紹介なのだ』


 一方的に宣言すると、四体のキノコをテーブルの上に招き上げる。


『先ずは俺達キノコブラザーズのリーダー、デュランなのだ。音楽とハーレーを愛するヒッピーのキノコ、種類は〈ホシアンズタケ〉なのだ!』

『フッ……よろしく頼むゼ。デュランだ』

「はあ……」


 ヒッピーのキノコと言うのも良く分からないけど、ハーレーとキノコというのが全く結びつかない。ハーレーって、あのハーレー・ダビッドソンのことだよね?

 この小さいキノコがハーレーに跨り大陸横断するビジュアルを思い描こうとするけど、ボクの中の常識がそれを邪魔する。


 と、その時。このキノコ、どこからかビンを取り出したと思ったら、中の錠剤を一気飲みし始めた。

 呆気に取られる中、キノコはプルプルと体を震わせ始める。その動きは次第に激しさを増し、最後にはガクガクと体を前後させるまでに。


「ちょ、ちょっと!? どうしたの」

『気にすること無いのだ。デュランはヒッピーなのだ。キメてるだけなのだ』

「キメてるって……駄目だよそれ!? 犯罪だよ! 完全にアウトだよ!」

『誤解するなキノコ。それはただの風邪薬なのだ。風邪薬はキノコに興奮作用をもたらすのだ』


 いや、紛らわし過ぎるだろ!? と言うかリーダーがこれ? 大丈夫か、こいつら?

 やがて落ち着いてきたデュランは香純ちゃんの前に歩きだし、空になった風邪薬のビンを差し出す。ポカンとする香純ちゃん。


『デュランは風邪薬のビンのコレクターなのだ! お近付きの印に、ということなのだ』

「は……はぁ。ありがとうございますぅ……」


 戸惑いながらもそれを受け取る香純ちゃん。


『次はクレイグなのだ! いつも冷静沈着でキノコ達の知恵袋なのだ!』

『ご紹介にあずかったわたくし、〈ツブカラカサタケ〉のクレイグと申します。以降、お見知りおきを』

「え? はい……ご丁寧にどうも」


 アヤメとキノコはお互いに畏まり頭を下げ合った。そんな恐縮しなくても、と思わないでもないけど、アヤメは結構、場の空気に流され易かったりする。


『そしてチャップ……〈ヌメリスギタケモドキ〉……えっと……見ての通りなのだ』


 ディッピーのどこか歯に物が挟まったような言い方。その理由はすぐに分かった。このキノコ、挙動不審過ぎるのだ。


『ワヒャヒャヒャヒャァァッッ!! にょ、女体ーッッッ!!』

「きゃ、きゃあぁぁぁっ!?」


 怪しげな動きで体全体を揺すり飛びかかるチャップ。それは津島さんにしがみつき意味不明な叫び声を上げる。津島さんの甲高い悲鳴。深窓の令嬢が台無しだった。


「い、嫌ぁぁぁっ! だ、誰か……助けてぇぇぇっ!」


 これはヤバい。ボクは悲鳴を上げ続ける津島さんから視線を逸らす。

 そんな中、甘ったるい声が聞こえた。


『あら、嫌ね。あたしの事は忘れたの?』


 そこに立っていたのは、あの一際白いキノコだった。


『……こいつはデレス。オカマのキノコなのだ!』

『あら、オトコはいないのね。ザ・ン・ネ・ン……』


 いや。本当はここに男、いるんだけど。


 気付いてくれない寂しさと、このキノコだけには絶対に気取られたくないという想いが交錯。

 出来るだけこのキノコを視野に入れないよう他所を向く。こいつもヤバい。洒落になって無い。困った……視線の置き場所が見つからない。


『……まあ、いいわ。そこのボーイッシュな娘にするわ。よろしくネ、デレスよ。〈シロノハイイロシメジ〉。それにしてもウブそうな娘ね……おネエさんが手取り足取り、あんな事やこんな事を教えてあげるわ。うふふ……』

「まじかよー。勘弁しろよー」


 ぼやく浅見さん。彼女には損な役回りが付いて回るのかもしれない。

 でも良かった。こいつに目を付けられなくて。


『そして俺様がディッピー。〈キララタケ〉なのだ! 生まれながらのさすらい人ランブリン・マン、行く先々で分け隔てなく、寂しがり屋のレディのハートに愛を注いで歩く、そんなニヒルでカッコいいキノコなのだ!』


 自分で言うか? 恥ずかしく無いのか? と言うか絶対嘘だろそれ。


『と言う訳でカップリングは終了キノコ! 結局ディッピーとプリンセスの組み合わせなのだ! やっぱりプリンセスと釣り合うのはディッピーだけのようだ! よろしくなのだ!』


 元気よくボクの前に躍り出るキノコ……これがずっと、ボクに付き纏うのか?

 ボクはこれ見よがしに肩を落とし、大きくため息をついた。


 はい。かつての予告通り、魔法少女の使い魔アレ登場です。キノコというオチでしたね。当時は結構斬新な設定かも?と思ったりしたのですが、今にして思うと、かなり陳腐な設定だったかもしれません。

 次回、章エピローグを挟んで新エピソード突入です。


 それともう一つ…保険のためこの文言を入れておきます。

 本作品はフィクションであり、実在する人物、キノコ、団体とは一切関係ありません。


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