掃除機
犬は、猫もそうであるらしいが、全般的に掃除機を苦手としているらしい、と耳に挟んだ。
なら、掃除機を全く怖がらないあゆが珍しいのか。
掃除機が迫っていようとも逃げない。尻尾の毛を吸われるのは好きではないので動くには動くが、のっそりのっそり掃除機の進行方向に歩いていく。
こんな行動を取るあゆが例外で、りくの反応は普通だというのだろうか。
しかし、りくもりくで私からすれば、掃除機を前にした反応は過剰だと思う。
基本ビビリなりくは掃除を始めようと掃除機を出そうものなら、一階の居間、和室と言わず、扉が開いていて入れる場所を逃げ惑うのだ。
掃除中、最低一回は掃除機の前を通過していく。怖いもの見たさか、はたまた逃げ惑っている内に掃除機の前に出てしまったのか。
掃除機が目の前に迫ると、りくの反応がまるで漫画の一場面のよう。
尻尾を丸めて、一生懸命足を動かして掃除機から離れていく。
りく本人としては最高速度で走ってるつもりなんだろうけど、足が絡まってて普段と変わりないよ?
足は、ね。いつもより早く動いているに。
このりくの掃除機嫌いは何か切欠があった訳じゃない、と思う。少なくとも我が家では何かがあった訳じゃない。
例えば、トイレシートまみれになって片付けが面倒になって掃除機で吸われたとか、そんな出来事はなかった。←先代はこの出来事で掃除機を天敵と見なした。
りくは我が家に来て数日後には掃除機を怖がっているのが判明したのである。
りくがやって来る前後に掃除機が壊れたので、新しく買い換えた。その掃除機を使って私が掃除をしていると――。
「――――」
どうも今までに聞いた事のない音がするのだ。
新しい掃除機はこんな変な音がするのか。
私は納得しつつも、変な音が気になる。そう、くーんくーん、きゅんきゅん、なんて。掃除機が妙な進化を遂げたらしい。
くーんくーん、きゅんきゅん――ってあれ?
「…Σ(゜Д゜)」
はっとして小さなりくを見れば、部屋内を落ち着かない様子でうろうろ。
所在げなさそうなのも目の錯覚じゃないだろう。
このように気が付いたら、掃除機を恐れていたりくであるが、今日も今日とて掃除機は出てくる。
毛が落ちるからお犬様の生活スペースは掃除を欠かせないのだ。