4/6
隣の水って
いつでも水を飲めるように、と器と逆さにしたペットボトル(名前が不明)を用意してある――だというのにあゆもりくも自分の部屋の水はちょっと飲まない。
ペチャペチャと音がしたな、と見れば、隣り合った自分じゃない部屋でそれぞれが水を飲んでいる。
あゆはペットボトルからの方を好んで、りくは器の方を好むから釣り合いが取れているのかもしれないが。
「止めなさい」
注意するのも馬鹿らしい日常茶飯時なのだが。
あまりにも堂々としていて注意すら出来ないのかもしれない。悪びれた様子もないものだから。
りくの物はあゆの物。あゆの物はりくの物。そんな理屈が成立しているのか。
確かにあゆは昔から先代の水を飲んでいた。
その時は水をペチャペチャと飲みつつ、度胸試し感が強かったらしく。後ろ足は伸びていて、すぐに逃げれるように水を飲んでいたのに。
今はあゆもりくも然も当然の顔をしている。
隣の水がそんなにも美味しいのだろうか。
同じ水なんだけどな…。同じ水道から用意してあるし、敢えて言うなら違いは僅かな時間差があるくらいか。