自己主張
現在、我が家に居るお犬様は両方とも赤ちゃんの時からそれなりに大きくなるまでペットショップに残っていた。
可愛いし、格好いいのに大変不思議である。
欲目を引けば、我が家のお犬様の片割れ、ミニチュアダックスフンドのあゆの顔は美人とは言い難い。耳の位置がやや下で目が小さくて、ぼんやりとした印象で愛嬌がある、としか形容出来ないのは確かだ。
しかし、しかし!女の子らしい細っこい体格や、通常サイズのダックスフンドよりも一回りも二回りも小さい様や、胸や後ろ足の一部の白い毛やらが可愛いのだ。
あゆの名の名に因んだゴールドのロングの毛色がだってふわふわでさわり心地は抜群、って…。
あれ?私って犬バカ発言を言ってない?
基本大人しい性格のあゆではあるが、結構自己主張をする時ははっきりとする。
朝夕のお犬様のご飯の時間前になると、ワンワンと吠えてはご飯を催促する。
ある程度の時間にならないと貰えないというのに困ったものである。
女の子のらしからぬ我が家のお犬様の誰よりも野太い声なのだ、これが。
夕方だって五月蝿いに朝なら尚更である。誰が教えた、こんな行動。昔はしなかったぞ。
他にもあゆの自己主張はある。
ごろんと近くで仰向けになるのもその一つだ。所謂、犬にとっては降参のポーズである、腹を見せる行動なのだが。
あゆが用いる時は意味が違う。円らな瞳で此方を見て、無言でアピール。
(ねえねえ、アタシを触って、触ってよー)
構って欲しい、触って欲しいのポーズである。
なかなか気付いてくれなければ、仰向けの身体をくねらせて自身をアピール。
新聞の上でそれをやられた日には続きが読めなくなってしまう。
フローリングの上に新聞を広げているのが悪いと言われれば、そうだが。いいじゃないか、自宅なのだから好きにしたって。
文句は飲み込んで、やる事は一つ。文句を言うのも馬鹿らしい日常茶飯事であった。
「なぁに、触るの?触って欲しいの?」
わしゃわしゃと他よりも毛が薄いあゆのお腹を撫で回す。
私の都合なんてお構いなし。読書中だろうとも、話を書いてる最中だろうとも、あゆの気が済むまで腹見せポーズは続く。
「未だ触る?もう、仕方ないな」
仕方ないな、と口にしても私は笑顔だ。
御年11歳、おばあちゃんのお年ながらもあゆは我が家のアイドルで家族を虜にして離さないお犬様なのであった。