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冒険者

光る扉は望めばいつでも現れたし、魔法のピンを刺せば何度でも箱庭の中に行けた。

それを気が済むまで確かめたオレは、少し冒険をしてみる事にした。


大きそうな町を見つけ、そこを散策してみる事にしたのだ。

街のど真ん中にピンを刺そうとして止める。

突然、街中に人が現れたら不審がられるかもしれない。

そう思って、少し離れた場所にピンを刺す。


「げぇ・・・。結構、遠くになっちゃったな」


転送先は街を見下ろす小高い丘だ。

街の直ぐ近くに刺したつもりなのに、街まで結構距離が有った。

時間にして30分ほど歩いてようやく街に着く。

人の出入りが激しい街なので1人だけ浮いた恰好をしているオレでも街に入ることが出来た。

暫くあても無く歩いていると市場のような場所に出た。

見た事もない野菜や果物が売られているのを珍しがって見ていると、歩いたせいか腹が減ってきた。

そんなオレに、どこかから美味そうな匂いが届く。

匂いを辿って見ると1件の屋台が見つかった。パンのようなモノに焼いた肉を挟んで売っているようだ。この肉を焼く匂いが堪らなかった。


「これは・・・なんですか?」

「あ?兄ちゃん。何ってオッフラだよ。マケドリウスの肉を焼いてピタではさんだもんだ」

「マケドリウス?」

「あぁ!?マケドリウスを知らねえのか?冗談だろ?どこから来た?兄ちゃん」


オレは何となく答えに困って空を指さした。


「変な兄ちゃんだな。ま、きっと、遠くから来たんだろ。この街には色んな所からいろんな奴が来るからな。マケドリウスを知らない奴が居たって、オレは驚かないぜ?

あいよ、試食だ。食ってみな?」


言われるままに差し出されたモノを口にしてみる。

・・・旨い!鶏肉と牛肉の間の様な風味と触感。それを挟んでいるピタとかいうパンのようなモノも普段食べているパンよりも固くて食べにくいが、それはそれで、噛み応えが有って気に入った。なによりソースが絶品だ。


「そのソースがウチの売りなんだよ。それに気付くとは兄ちゃん、わかってるねぇ!」


店主に礼を言って店を後にする。

また食べたいな。でも、この世界の金は持っていない。

ここで、この世界に対する目標が一つ出来た。


まっとうな方法で金を稼いで、またあの食べ物・・・オッフラを買おう!


幸運な事に話は通じるようだ。情報を集めよう。

誰か親切そうな人は・・・。

と、思ったが、ここは市場だ、皆忙しそうにしており話しかけづらい。

周りを見渡してみると、一人、待ち合わせだろうか、壁に背を持たれかけて立っている女性が見えた。その顔に優しそうな印象を受けたオレは、その女性に声を掛けてみる事にした。

近付いてみると、遠くからは人ごみに紛れて見えなかったが腰に剣のような物を差している。優しそうな顔なのに意外に思いつつ、今更引けずに声を掛けた。


「あのう」

「はい?」

「この街で手っ取り早く稼ぐ方法って何ですかね?」

「へ?」

「あ、いや。変な質問して済みません」

「あぁ・・・。もしかして、難民の方でしょうか?それならば、中央の執政区に行けば保護を・・・」

「違います!違います!」

「ふーん。確かに難民には見えませんねー・・・。変な恰好ですし」


シャツとジーンズと言う恰好は珍しいらしくジロジロとみている。

そんな時、後ろから声を掛けられた。


「おい!ゼシル、何だそいつは?」


振り返るとガタイの良い短髪の男と長髪の痩せ形の男が立っていた。


「ティーゲル。遅いよー。あぁ、この人は何と言うか・・・質問を受けてたのよ」

「質問?」

「”この街で手っ取り早く稼ぐ方法は何か?”ですって」

「なんだそりゃ・・・。まっ!そりゃ、冒険者になって稼ぐのが手っ取り早いな!」

「ティーゲル!こんな子供に何てこというのよ。無責任じゃない!?」

「ばっか、オレだって、このくらいの頃にはなぁ・・・」


ゼシルと言う女性は、冒険者には危険がつきものだと警告してくれたが、ティーゲルと言う男は仕事さえ慎重に選べば危険は少ないし、男たるもの・・・。みたいな事で押し問答が続き、話が長くなりそうなので、この辺りで礼を言って立ち去る事にした。


別の人に「冒険者になるためには、どうすれば良いか?」という質問をしてみると、今度はあっさり冒険者ギルドの場所を聞き出すことが出来た。


ギルドへの登録手続きは非常に簡素なもので、オレは、この世界で冒険者となった。


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