異世界トリップかとおもいきや
オレの名前は杉崎十五
十五という名前の由来は実に単純。
十五人兄弟の末っ子だからだ。
優秀な兄や姉に比べて俺は凡人で、家では窮屈な思いをしている。
うだつの上がらない毎日を送りながら、もし、異世界にトリップしたらオレだって・・・。なんて妄想をいだいてしまう。
そんな境遇も今日で終わり。
十三兄さんと十四姉さんが、この春から独立して1人暮らしを始めたからだ。かくして、末っ子のオレは、ようやく念願の一人部屋を手に入れたのだ。
ウキウキしながら学校からの帰り道。
前方不注意のトラックのヘッドライトの光に包まれたオレ。
(あぁ、死んだな・・・)と思いながら、恐る恐る目を開けると、そこには見た事もない醜悪な怪人と、それに襲われて危機一髪と言った感じの少女が居た。
向こうも突然現れたオレに驚いている様子だ。
異世界トリップ?
・・・先に動いたのはオレだった。無我夢中と言うやつらしい。雄たけびを上げながら醜悪な怪人に体当たりをする。
「今のうちに逃げろ!」
と少女に向かって叫ぶが少女は逃げるそぶりを見せない。
不思議に思っていると、怪物はオレの体当たりで吹き飛んで気絶していた。
「凄い・・・。素手でゴブリンを倒してしまうなんて・・・」
あぁ、やっぱり、この醜悪な怪人の正体はゴブリンだったのか。
何となく、そんな気がしてました。
ゴブリンと言えば、異世界で初めに遭遇するモンスター・・・。
オレは異世界トリップした事を実感していた。
「ありがとうございます。私はアンリエッタ。
駆け出しの冒険者なのですが、油断してしまって、このザマです。
アナタが来てくれなければ今頃は・・・ていうか、どうやってココに?
突然現れたような気が・・・。もしかして魔術師の方とか?」
「あぁー・・・。いやー・・・。なんというか・・・」
何とか誤魔化してアンリエッタを安全そうなところまで送り届けた。
アンリエッタに別れを言ったオレは、あるモノに気付いた。
・・・光を放つ扉だ。
何もない空間に扉だけが浮いており、非常に不自然である。
興味本位で開けてみるとオレは再び光に包まれた。
気が付くと、そこは自分の部屋だった。
そして、部屋の床には見覚えのない箱が転がっていた。