00 : お互いに誰か知らない。
ようこそおいでくださいました。
初めましての方もそうでない方も、こんにちは。
たまに造語がありますので、お気をつけください。
おまえは力があるのか。
と、驚いた顔でマルを見下ろしたのは、母だったのか父だったのか。それとも両親揃ってのことであったか。
そうか、力があるのか。さて困ったな。
言葉のわりにはそうは見えなかったが、そんな態度を取られた気がする。
なんのことを言われているのか、その当時はまったく理解できなかったが、あるときふと突然、目の前に黒い外套を羽織った国の役人が現われて、マルの世界は一変した。
マルは魔導師になった。
「は!」
「! うわ吃驚した……いきなり起きるなよ」
「死ぬかと思った」
「水ん中で気絶してたら、そのうち死ぬだろうね」
「助けてくれてもいいだろう」
「濡れたくないもん」
「なら起きたことに驚くな」
「死んだかと思って」
「薄情者だな」
「どうも」
死にかけていたせいか昔の夢を見ていたらしい。いや、あれは走馬灯というのか。危なかった。とにもかくにも息を吹き返すことができて幸いだ。しかし、全身びっしょりと濡れていては、気分は急降下する。
「この湖、あんたがやったの? それならただの水溜り……にしちゃあ、でか過ぎるけど」
「ああ、わたしがやった。うっかり巻き込まれたが」
「自分の力に巻き込まれるってどうかと思う」
「わたしも不思議だ」
「こんなとこに湖なんか作っちゃって……どうすんの、これ」
「山火事を止めようとした結果だ。この結果がどうあれ、文句を言われる筋合いはない」
ぐしょぐしょの服をどうしたらいいものかと考えながら、裾や袖を絞っていくらか水気を切る。そのくらいで乾くわけもないから、さっさと宿に戻ろうと思う。
「まあ確かに鎮火したけど……ところで訊きたいことがあるんだけど」
「なんだ」
「あんた誰?」
「偶然だな、わたしもそれは訊きたいと思っていた。きみは誰だ?」
さっさと戻って沐浴して、さっぱりと着替えて寝台で眠ってしまいたい。
だのに、要らない疑問が増えた。
誤字脱字、その他なにかありましたら、こっそりひっそり教えてくださいませ。
*18話から視点が変わります。
それまでは恋愛要素がぺらぺらです。
ゴメンナサイ。