警部の捜査記録 その3
事件当日(4月2日)の事情聴取記録
近藤 琢磨
(32才)
CATV会社『M・シティケーブル』所属の工事人
4月1日にS・Yビルの地デジ化改修工事施工後、202室住人からテレビが映らないと連絡が入り、点検のため訪問。(白井が供述するエレベーター内で見かけた人物と一致)
訪問時刻17:00前後
(202室住人:澤村さおり(41才)と、その娘:愛(3才)から確認済み)
澤村宅の液晶TV、デジタル放送受信できず。
TV端子口からの電波レベルに異常はなかったが、念のため屋上にあるTV共聴盤内の点検をするため、管理人室を訪問。
*(屋上へ出るには久保が管理する南京錠のカギが必要だった。4月1日の工事の時、久保が立会い、屋上へのドアの南京錠を開錠したのは久保であった)
1F管理人室と隣の101室久保宅どちらも不在。
だめもとでエレベーター最上階の4Fまで移動。(3Fで白井に見られている)
階段で屋上へ出るドアへ。
しかし南京錠は施錠されていた。(近藤の指紋検出)
近藤、仕方なく202室へ戻り、TV配線、初期設定等の点検をする。原因はケーブル接続部分の接触不良によるものと判明。補修するための部材の用意がなかったため車まで戻る。(この時1Fエレベーターで久保と入れ替わる)
S・Yビル正面むかって左側に、手前1台、奥に2台収容可能なコインパーキングあり。作業車は奥の右側に駐車。後部ドアを開け、必要な部材を用意し、202室へもどる。
作業を終え、澤村さおりから完了書のサインをもらう。(完了書に記載されている時刻18:00)
2Fエレベーターで久保と同乗。様子が変だったので声をかけた。
事情を説明され、一緒に付いて来てほしいとお願いされる。
一度荷物を置きに行きたいと久保に申しいれ、作業車でタバコをふかしながら、携帯で、CATV工事課に作業完了報告をいれた。(携帯履歴時刻18:15)
近藤、管理人室のドアを叩いても、返事がないので4Fへ。久保と白井に合流。
現場保全のため、この場で待機していたほうがいいと提案し、警察到着まで斉藤宅の前で待つ。
近隣の交番警官の現場到着18:30頃。
〈質問〉
・気づいた点
特になし。
〈4月4日再聴取した時〉
ビニールテープ(黒)を事件翌日に、無くしたことに気づいたと供述。当ビルで落としたかどうかは釈然としない。
〈4月1日の工事の詳細〉
管理人=久保、CATV工事の事前説明は管理会社より知らされていた。
13:00工事開始予定。近藤、時間通りに訪問。
久保と近藤、この時が初対面。
屋上のドアの南京錠、久保が開錠。
近藤、屋上TV盤内のブースター交換工事から始める。
久保、作業が終わったら声をかけるよう近藤に指示。管理人室に戻る。
近藤、屋上作業後、各フロアーの分配器等の系統点検のため、4Fオーナー宅入室許可を久保にお願い。
久保、斉藤宅を合鍵で開錠し、立合う。
(分配器は1、2階フロアー分は2階TV盤内、3階分は3階TV盤内、4階分はオーナー宅のみで、宅内に取り付けてあるため、入室する必要があるという)
前日にオーナーから久保の携帯へ
『例によって留守につき、明日の工事の立会いは、久保さんお願いします。忙しいとは思いますが・・・』
というメール。斉藤宅は不在の時が多く、しばしばメールでこのような依頼があるという。
脱衣室の天井に点検口があり、近藤、脚立を作業車から持ち出して点検口をあける。
空けたとたん、屋根裏から黒いバッグが落ちてきた。その時、久保も驚いた。
近藤あわててバッグを元に戻し、作業に当たる。久保と近藤、バッグの中身は見ていない。が、気づかなかったことにしようと久保が提案、近藤了承する。
久保、空気の入替えのため、ベランダ側ガラス戸を開ける。それ以外には、物に触ったりしていないとの事。浴室のガラス戸は閉まっていたため、特に不信な点はなかったと両者とも供述。水道の水も出ていなかった。
*(久保、桜の花びらについても、その時点ではなかったと供述)
久保、作業完了後、斉藤宅戸締り確認し、施錠。屋上へのドアの南京錠も施錠。
近藤、久保から完了書にサインをもらう。
完了書の記載時刻15:45