異世界佐吉
街に戻りギルドに報告を入れると、
「……ちょっとこちらへ」
馴染みの受付嬢のレナさんが険しい顔で俺たちを応接室へと通してくれた。
少し待っていて欲しいとのことで大人しく待つことに。
五分ほどすると眼鏡をかけた神経質そうな男性がレナさんを伴いやって来た。
「リーデル支部の長を勤めるワイアルドだ。仔細を聞かせて欲しい」
「ロクな挨拶もなしにいきなりそれ?」
いきなり噛みつくじゃんよリゼ。
いや俺もちょっと思ったけどさ。
あるじゃん普通。会話のクッションが。親しい間柄ならともかく初対面だぞ。
立場を考えれば俺らに気を遣う理由なんてないと分かっててもちょっと……ねえ?
>@Super_monkey
あー……佐吉によう似とるわ。じゃがまあ仕事は出来る男ぞ。
真、儂が見るにワイアルドっちゅーんは信の置ける男よ。
仲間が失礼と詫びて即本題に入れ。内容は簡潔にな。それで印象を稼げる。
とのことで顔を顰めた支部長が何かを言う前に俺が口を開く。
ところで佐吉さんとはどこのどなたなんだろう。
「仲間がすいません。では早速経緯の説明を」
「うむ」
アドバイス通りに主観は交えず事実のみを説明する。
「理解した。情報提供感謝する」
直ぐに動かねばなと小さく呟き支部長はレナさんに視線を向けた。
「レナくん、後を頼む」
それだけ言って支部長は部屋を出て行った。
ぽかんとする俺たちにレナさんはすいませんと頭を下げた。
「悪い方ではないんですが少々融通が利かず」
「いえお気になさらず。むしろ勤勉で好ましいかと」
完全な世辞というわけではない。
だって素っ気ないけどちゃんと感謝の言葉を口にしてくれたのだから。
最初はむっとしたけど本当に不器用なだけなんだろうな。
レナさんはありがとうございますと安心したように笑ったが直ぐに表情を引き締め、
「近い内に発表されますが既に当事者となった真さんたちにはお伝えしますね」
曰く、最近こういう事例がよくあるそうな。
俺が拠点とするリーデル周辺ではまだ話が出ていなかったが他所のギルドから注意喚起が回って来たらしい。
それで今朝、本格的に調査をということで色々慌ただしかったんだとか。
「調査前でも別に注意喚起は出来たんじゃないの?」
言いたいことは分かる。
だが不確定な情報で冒険者がしり込みしてしまうのを危惧したんだろう。
(リーデルは上昇志向のある冒険者にとっては腰掛けの街でしかないからな)
残るのは自然と安定志向の者ばかり。
ギルドも分かっているのだ。リーデルの冒険者は慎重派が多いと。
下手に不安を煽れば依頼を受ける者が減ってしまう恐れがある以上、下手なことは出来ない。
「も、申し訳ありません」
「あ、いや私別に嫌味を言いたかったわけじゃなくて」
ちょっと変な空気になりかけたので話を切り上げることにした。
「色々お忙しいでしょうし俺たちはこれで」
と席を立とうとしたところでレナさんに止められる。
「これを。情報提供に対する謝礼とオークの牙を納品された分の報酬となります」
渡された革袋はずっしり重かった。
……これ、俺からすればかなりの額なんじゃないか?
「あら良かったじゃないの。タダ働きにならずに済んだわね」
「俺は何もしてないからリゼのもんだろ」
「いや私がオークを見つけたのはあんたを探してたからだし」
ってここで話し合うことではないなと遅まきながら気付く。
とりあえず場所を変えようと提案するとリゼも頷いてくれた。
「それじゃあ失礼します」
「はい。お気をつけて」
ギルドを後にする。向かった先は俺の宿だ。
どういうわけだかリゼの指定である。
「ボロっちいわね!」
狭い部屋、薄い壁、寝心地の良くないベッド。
そう言いたくなるのは分かるけど言葉を飾らなさすぎだ。
「……悪かったな」
「まあでも屋根があるし問題ないわ」
ハードル低いな。
「俺を探してたって言ってたけど」
「まあ待ちなさい。順番に話すから。お金の話も後よ後」
分かったと頷き聞く姿勢を取る。
「まずジャンとアリシアなんだけど村に戻ったわ」
こういう関係になった以上、夢ばかり見ていられない。
地に足をつけた生き方をするべきと判断したそうな。
(……帰る場所があるんだもんな)
冒険者を悪く言うつもりはない。
それでも帰る場所があって安全な暮らしが出来るならその方が良いと思う。
少し羨ましさを感じていると、
>@Super_monkey
故郷に帰れんのは辛いことじゃが。そう悲観するな。
居場所は新しく作れる。儂がその生き証人よ。
村を飛び出してからあちこち転々としたが見事、儂は己の居場所を作ってみせた。
おみゃあもそうなる。何せこの儂が手を貸してやっとるんじゃからなあ! ワッハッハ!!
この人は本当に……。
心を読んでるんじゃないかってぐらい敏い。そして温かい。
(ありがとう)
感謝を告げ気持ちを切り替える。
「で、私は残ることにしたわけ。……気まずいしね」
「ま、まあ……はい」
腹を割って話は出来たがそれはそれ。
くっついた二人と一緒に帰郷するのは気まずかろう。
「だから、さ。あんたを探してたの」
「?」
首を傾げる俺にリゼは少し恥ずかしそうにこう告げた。
「その、あんたさえ良ければパーティ組まない?」




