しろがねの風
>@Super_monkey 何ぞ空気がおかしいのう。
朝。ギルドに入るやモンキーさんがそうコメントした。
前々から思ってたけど早起きだよな。まだ七時とかだぞ。
>@Super_monkey
年寄りは朝がはええでな。まあそれ抜きにしても時代が違……ってそうじゃねえ。
ちょっとおい、ぐるーっと見渡して見てくれんか?
言われるがままギルド内部をゆっくりと見渡す。
俺にはイマイチ分からないが何かあるのだろうか?
>@Super_monkey
画面越しじゃで正確には空気が掴めんのが辛いところよの。
ちょいと剣呑な感じはするがおみゃあぐらいの下っ端には情報は回ってこんな。
さっさと依頼受けて来いと話を打ち切られてしまった。
俺としても気になるが今日を生きる金を稼ぐのが最優先だ。
受付に行き依頼を受諾し街を出る。
(気合入れて行こう)
今日の獲物はアルミラージという角の生えた兎っぽいモンスターだ。
肉の体をしているのでスライムより攻撃を通しやすいが殺傷力はスライムより上。
繁殖力が半端ないから駆け出しの駆除依頼では定番である。
街道を少し外れたところで早速一匹発見。奴は俺を見るなり速攻で突っ込んで来た。
(……よし!!)
盾を構えこちらからも勢い良くぶつかりに行く。
軽くはない衝撃に体が軋むがここで躊躇う方が危険なのだ。
最初の衝突を上手くやればアルミラージの意識を朦朧とさせられるし良い時は気絶することもある。
そうなれば後はもう攻撃するだけ。敵に仕切り直させないことが重要なのだ。
>@Super_monkey
……度胸がねえとか自虐しとるわりにおみゃあ、果敢に前に出るよなあ。
それが一番生き残る確率が高いと分かってても腰が引けるのは普通のこと。
お前の度胸もそう捨てたものではないと褒められ嬉しくなる。
毎度思うが何でもない時にさらっと言う誉め言葉が本当に上手い。
照れを誤魔化すように次の獲物を探す。
「ふぅ」
そうして三匹ほど狩り終えたところで息を吐く。
そろそろ休憩を入れるべきだがその前に周囲を360度ぐるりと見渡す。
>@Super_monkey
よしよし、今っとこ敵はおらんな。素材を剥ぎ取ってから休憩せい。
これは休憩を入れる前の安全確認。
普通の視力も良いが目端も利く自分が確かめてやると言ってくれたのだ。
これがあるお陰で休憩がやり易くなったのは本当にありがたい。
今も何とかソロでやれているのはこのお陰だ。
(本当、頭が上がらない)
体を休めていると、ふと四日ほど前に出会ったリゼという少女の顔が思い浮かんだ。
別れた直後はちょっとうじうじしてたが今はもう割り切っている。
だがそれはそれとして彼女が良い方向へ行けたかどうか気にかかってしまう。
積極的に探す気はないが今日の晩飯はあの店で食事をしよう。
ひょっとしたらまた会えるかもしれな――――
>@Super_monkey 気ぃ引き締めろ敵じゃ!!
弾かれたように立ち上がる。
「……オーク」
林の中から現れたのは三匹のオークだった。
駆け出しが相手出来るようなモンスターじゃない。
“こんなところ”に居るはずがないのにどうして……。
>@Super_monkey
背を向けて逃げるのは無理じゃ!
生存を重視した立ち回りで機を窺う。余計なことは考えず今はそれのみを考えよ!!
絶望と焦燥で視界が染まり始めた矢先、メッセージが打ち込まれた。
思考を切り替える。そうだ。まだ何もしていない。諦めるのは足掻けるだけ足掻いてからだ。
四肢に力を込め真っ直ぐ敵を睨みつける。
>@Super_monkey
儂も手伝う、やることは簡潔よ。あの兎にしたように立ち回れ。
出来るな? いや出来る。おみゃあならやれる!!
すなわち、
「――――死中に活路を!!」
オークと言えば醜い二足歩行の豚の怪物をイメージするかもしれない。
だが実際は猪みたいな感じで屈強な体つきをしている。
背を向けて逃げようとすれば追いつかれ殺されるのが関の山。
だからこそ敢えて懐に飛び込む。巨体ゆえ生じてしまう隙を利用するのだ。
>@Super_monkey よしよしええぞ、上手くやれとる!
モンキーさんの支援を受けつつ立ち回る。
非才の身だろうと、今日まで生き残って来たのだ。
(やれる! 死を少しだけ先延ばしに出来てる!!)
技術か膂力。
オークを倒すにはそのどちらかが必要だ。
だから低レベルの駆け出し冒険者にはオークが倒せない。
それでもただ死を先延ばしにし続けることならある程度は可能だ。
心を折らず機を伺い続ければ逃げられるかもしれない。
そう自分を叱咤して更に集中を深めた次の瞬間、
「ぁ」
オークの拳を受けた盾が嫌な音を立てた。
直感的に理解した。いわゆるクリティカルヒットが相手に起きてしまったのだと。
盾が砕け拳が体に突き刺さり吹き飛ぶ。
>@Super_monkey 真ォ!!
地面を転がりようやく体が止まる。
動け、動け、動かないと死ぬ。
頭では分かっているのに酷い吐き気と痛みで体が動かない。
(ここで、終わりなのか)
諦めが脳裏をよぎった正にその時だ。
視界が銀色の風を捉え、甘い香りが鼻を擽った。
白刃が煌めき近付いて来ていたオークが大きく距離を取る。
「――――私の恩人に何してくれてんのよ!!」
俺を守るように立ち、そう啖呵を切ったのはリゼだった。
六時、七時、八時に一話ずつで九時に二話で一章終了になります。
お付き合い頂けると幸いです<m(__)m>




