抜け目のなさ(Lv MAX)
「それで息子さんは?」
和解したというのなら落としどころを見つけたということ。
下心ありきで接触したとはいえ、気がかりなのも事実だった。
「……とりあえず冒険者になる」
「じゃあ」
アレックスさんが折れたのかとも思ったがどうも違うらしい。
彼は少し照れ臭そうに鼻を擦りながら言った。
「休みの日は俺の仕事も手伝いながら修行もするってよ」
まだ若く父が独立した職人で裕福とまではいかずとも経済的に余裕がある。
ならば本格的な決断はまだ先のこと。
「片手間で技術を学ぼうなんざ片腹痛えが……今はまあ、それでも良いだろ」
将来どちらの道も選べる可能性を残すという意味では悪くない落としどころだと思う。
「そっか……そっかぁ……良かったですねアレックスさん!!」
「お、おう。ありがとよ。へへへ」
じんわりと胸が熱くなる。
良かった。本当に良かった。
>@Super_monkey
他人の慶事を大声で喜べるのは良きことぞ。信を得られる。
それよりさあ、そろそろ儂が出した課題の答え合わせぞ。
その通りだ。モンキーさんは言った。
事が全て上手く運んだら相談に乗った人は謝礼としてお金を持って来る。
それを受け取るか否か。受け取らないならどうするのかを考えろと。
上手くいくか半信半疑だったけどちゃんと考えてはいた。
「あんちゃんのお陰だ。改めて礼を言わせてくれ。こりゃ少ないが」
と革袋を取り出し俺に渡そうとするアレックスさんを手で制する。
「それがお金なら受け取れません」
「いやいや、世話になっておきながら礼もしねえのは俺の沽券に関わるってもんだ」
押し付けようとするが押し返す。
「そういうつもりで話を聞いたわけじゃありません」
下心と、ちょっとした私情だ。
本当なら断るべきだ。
でも――俺にそんな余裕はない。
「気が済まないというなら読み書きを教えてくれませんか?」
「……読み書き?」
目を丸くするアレックスさんに俺は恥を忍んで打ち明ける。
自分は読み書きも出来ず親も居ない人間だと。
「冒険者をやってるけど何時までも続けられるわけじゃありません」
その時、野垂れ死にしないよう。少しでも道を広げられるよう勉強がしたい。
「お仕事の邪魔はしません。暇な時で構いませんから」
勿論迷惑なら取り下げる。その時はご飯でも奢ってくれれば良い。
そう言おうとして、
「あんちゃん!」
「うぉ!?」
急に大声を出されて軽くビビってしまう。
「おめえ、立派だ! しんどい中でも腐らずちゃんと将来見据えてよぉ」
ドンと胸を叩きアレックスさんは言う。俺に任せろと。
「良い先生を紹介してやる」
「え、え」
「俺のお得意様でな。先生もきっとあんちゃんを気に入る」
話がついたら宿を訪ねるから待っていてくれとのこと。
あまりの勢いに頷くしか出来なかった。
「じゃ、俺は帰るからよ」
「え、いやだからお金は」
「持って帰ったら俺がかかぁに怒られちまわあ! 助けると思って貰ってくんな!!」
と俺に革袋を押し付けアレックスさんは部屋を出て行った。
>@Super_monkey
真。正解じゃ。
呆気に取られている俺にモンキーさんが言った。
>@Super_monkey
武力がなくとも知恵があるなら戦える。読み書きは最初の武器よ。
目先の銭に囚われず先々のことを見据えた選択が出来るおみゃあなら頭という武器も上手く使えようぞ。
少し照れ臭くなり誤魔化すように聞いてみる。
もし受け取っていたらどうしていたのかと。
>@Super_monkey
三分の一ほど懐に入れて残りは全て教会に寄付させる。
寄進しとけば覚えも良くなる。みすぼらしい人間なら尚更な。
さすれば何度か通えば読み書きを習うことも出来るだろうて。
あまりに抜け目がない。この人は一体どこまで読めているのか。
正解と言ったということはお金を貰えることも確信していたんだろうし。
>@Super_monkey
まあそれはええ。それよりほれ、見事戦果を挙げたんじゃ。
臨時収入もあるし己を労ってやれ。己を褒めてやれぬ者に他人は労われぬぞ!
貯金しておきたいが……いや、今日ぐらいは良いかと思い直す。
少し道が開けたのだ。ささやかなお祝いぐらいしても良いだろう。
>@Super_monkey
飯の後は色街にでも繰り出すか?
ちょっと油断すれば直ぐこれだ。
モンキーさんは何かと女の話題をしたがり俺にも常々女を口説いて男を磨けと言う。
そんな店行く暇あったら貯金するわ貯金。
>@Super_monkey
カーッ! 分かっとらんのう!! ええか!? 女を抱くっちゅうのはなあ……。
はいはいと聞き流しながら調査中に見つけた美味しい店に入るのだがどうも様子がおかしい。
「……おいお前、声かけろよ」
「馬鹿お前……確かに見てくれは良いがあの目を見ろよ。やべえぞありゃ人殺しの目だ」
「う゛……た、確かに……いやでも相手は女だぜ? ちょいと脅かしてやりゃあ」
「そういう軽率さがおめえの駄目なとこなんだよ反省しろ」
理由は直ぐに分かった。カウンターの真ん中に陣取り酒瓶を呷る女の子だ。
腕、腹、腋、腰、背中、太もも。肌を惜しげもなく晒した装いの銀髪の美人さん。
しかし鋭い目つきと刃のような空気が人を遠ざけている。
迂闊に近付こう者なら腰の剣でスパっといかれそうなぐらい剣呑だ。
>@Super_monkey
あれは“いける”――――よし口説け!!




