コミュ力モンスター
たった一人の視聴者とのファーストコンタクトから三週間が経過した。
新しいパーティは見つからず俺は今日もソロで四苦八苦しながらスライムを狩っている。
>@Super_monkey
よーし今日はこれぐらいでええじゃろ。
街を出てからだんまりだったモンキーさんがチャットを送って来た。
確かに一日分の生活費は稼げたけど俺としては納得がいかない。
(貯金を殆ど使い果たしちゃったしもう少し稼がないと)
まだ数日は何とかなるがそれに胡坐をかいているわけにはいかない。
何時何が起こるか分からないのだからと反論すれば、
>@Super_monkey
阿呆。稼がにゃならんと気負っとるせいで必要以上に体力が消耗しとる。
それで怪我でもすりゃあ余計に大損よ。焦ってもええことなんぞないわい。
……俺自身に疲れ過ぎているという自覚はない。
だが配信という客観的視点で俺を見ているモンキーさんが言うならそうなのだろう。
(分かったそうするよ)
出会って三週間だがこの人が優れた観察眼を持っているのは何となく分かっていた。
そんな人の助言を軽んずれば痛い目を見るのは容易に想像出来る。
焦る気持ちはあるがここはグッと飲み込むべき場面なのだろう。
>@Super_monkey
よしよしそれでええ。おみゃあは不器用じゃが実に素直な男よ。
その素直さは紛れもない武器ぞ。おう、この儂が保証する。
続けてモンキーさんは安心せい! と言いこう続けた。
>@Super_monkey
そろそろ“待ち人”も来るであろうしなあ。
それって……。
モンキーさんの言う待ち人。それこそが俺が貯金を使い果たした理由だ。
遡ること三週間前。挨拶もそこそこにモンキーさんは早速、俺に指示を出した。
『>@Super_monkey
これからおみゃあにはしばらく飯食う時は酒場を巡って貰う。
日々の暮らしに背一杯な客が現実逃避気味に酒を呷っとるようなとこじゃねえぞ?
おみゃあからして値段的にちょっとキツイと感じるぐれえのところよ』
何のために、という俺の疑問など承知の上だったのだろう。
彼は続けてこう言った。
『>@Super_monkey
理由が分からんと不安じゃろうからちゃ~んと説明しちゃる。
人との縁を結ぶためよ。どこぞの虎も言うとったが人は石垣、人は城よ。
一人で出来ることなんて限られとる。何もねえおみゃあだからこそ早急に人と結びつかにゃいかん』
だからこその酒場だという。
『>@Super_monkey
ああいうとこには一定数、悩みを抱えとる人間おる。
酒で憂いを誤魔化すっちゅーんは世界が違えど同じ人である以上変わりはねえ。
そいつの悩みを聞いて心を軽くしてやり親しくなるってのが大まかな指針じゃ』
簡単に言うけどハードル高くない?
そう反論すると、
『>@Super_monkey
何、安心せい。儂は天下一の聞き上手で話上手じゃ。
儂の言う通りにすりゃあ千人だろうが万人だろうが友を作れるわい!』
とのこと。大体は分かったが一つ疑問が。
何故、値段的にキツイ酒場という限定したのか。
『>@Super_monkey
人の“質”じゃ。余裕の有無と言い換えてもええ。
他人に施しが出来るのは心に余裕のある人間だけぞ。心の余裕は懐の余裕でもあるでな』
そういうわけで酒場を巡りをすることになったが中々ゴーサインが出ない。
どんどん目減りする貯金に顔を青くしていたが一週間前、ようやく動きがあった。
モンキーさんが目をつけたのはアレックスさんという家具職人。
息子さんと将来のことで揉めているとあっさり聞き出すことが出来た。
『>@Super_monkey
どっちも引っ込みがつかなくなっとるだけよの。
まずは親父の話にうんうん頷いた上で、子供の気持ちも分からんでもない』
俺が一つ話を聞いて来てやろうと言え。
その上で、
『>@Super_monkey
息子にも理解を示しつつ、親父さんの気持ちも分からんでもない。
俺が一つ席を設けてやるからじっくり話し合えと言う。これで万事滞りなく進もうぞ』
というのがモンキーさんの助言だった。
言う通りにしたら悩みも聞き出せたし俺は素直に指示に従った。
そして実際に話を聞いた翌日に息子の下へ行き、その日の内に話し合いの場を設けた。
でも、
(……でも何かギクシャクしたまま終わったんだけど)
待ち人が来ると言うが結果は正直、芳しくなかったように思う。
俺が不安を吐露すると、
>@Super_monkey
いや、あれでええんじゃ。すぐさま抱き合い和解するなんぞ滅多にない。
それなりに距離がある間柄ならその場で取り繕うように和解を演出することもあるがの。
蟠りとは氷のようなものよ。溶けるには相応の時が要る。
あの親子の様子からして元々仲が良く亀裂も決定的でなかったからな。昨日ぐらいに和解は済ませとろう。
というわけでさっさと清算して宿に戻れ!
モンキーさんに促されるままギルドで討伐の清算をして宿に戻る。
すると女将さんにあんたに客が来たので部屋に通しておいたと言われる。
まさかと思い部屋のドアを開けると、
「あんちゃん!」
中に居たガタイの良いおじさんが俺を見るなりパッと顔を輝かせた。
アレックスさんだ。彼は俺に抱き着き言った。
「あんちゃんのお陰で倅と和解出来た。本当にありがとう!」
驚きで呆然とする俺の視界の端で新たなチャットが打ち込まれる。
文字だけで顔なんか分からない。
>@Super_monkey
な? 儂の言うた通りじゃろ。
太陽のように得意満面な顔をしているんだろうなと思った。




