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国王
2、
孤児院が燃え尽きたその朝、シャルフィナン王国の兵がやってきた。
「魔女が死んだ」というその事実を、確認するために。
火を逃れた子どもたちは保護され、泣き叫ぶ者もいた。
焼けた院の前で、立ち尽くす私を見つけて、王が声をかけた。
「君は……怖くなかったのか?」
私は首を振った。
「怖くはありません。もう、魔女は神の啓示によって罰せられましたから」
「……神の、啓示?」
「私は、聞いたのです。神の声を」
そのとき、王の目にかすかな怯えが宿った。
それは一瞬のことだったが、私は確かに見た。
そして――その怯えは、なぜかすぐに消えた。
王は、私に手を差し伸べた。
「君を迎え入れよう。さあ、おいで」
私は、ためらわずその手を握った。
心の奥底で何か昂る感覚を初めて感じた。
きっとこれから起こることへの高揚なのか、それとも何かへの期待なのか。
ただ差し伸べられた手を握ったまま、私は神に選ばれたのだと言う事実だけは認めていたのだ。