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魔女の孤児院

1、魔女の孤児院


燃える。

何もかも燃えている。


あの日、確かに、神の声を聞いた。


冷たい石の床。

ひび割れた壁に背を預けて、じっと目を閉じていた。

仕置きの部屋。ここに連れてこられるたびに、「強くなるのよ」と院長は言った。

鞭を振るいながら、それが愛情なのだと囁く、あの笑顔で。


院長の名は、マルガレータ。

誰よりも優しく、誰よりも残酷だった。

笑って撫でたその手で、別の子どもを檻に押し込める。


「全てはあなたのためなのよ」


と言いながら、彼女は魔女のように子どもたちを壊していった。


「私はあなたたちを愛しているから。だから、強くなりなさい」


私は、すべてを見ていた。

泣いている子も、笑えなくなった子も、死んだような目をした子も。

そのすべてを、幼い私の瞳は焼きつけていた。


ある日、


声が降った。


「魔女を殺めよ」


聞き覚えのない声。

人の声とも聞き取れないような音なのに、理解できた。

それは命令だった。

拒むことなど許されない、神の啓示だった。


私は笑った。


心の底から――初めて、笑うことができたのだ。

夜が明ける頃、孤児院は赤く燃え盛っていた。

天井を舐める火。逃げ惑う影。焼ける木と肉のにおい。

叫び声の中で、私はただ一人、炎の中に立ち尽くしていた。


「これで、良いのですね。神様」


私の呟きに、神は答えなかった。

だが、それで十分だった。


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