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狐娘と付き合うまでの物語  作者: 油揚げ
3/3

突然の来訪者

「何だったんだ、あれは」


風呂に入っているときにそんなことを考えていた。古川とは一緒に下校していたが結局、最後は俺たちとは別の道を通って帰っていった。


「あっ、このあたりまで来れたらあとは帰り道は分かります。今日は一緒に帰ってくれてありがとうございます」


「別にいいよ、古川さん。俺たちも一緒に帰れて楽しかったし。なあ、だろ春樹」


「あっ、ああ、たのしかったな」


「なんだよ。春樹楽しくなかったのか」


「いや、楽しかったよ」


「なあ古川さん、これからも一緒に俺たちと帰ろうぜ」


隼人が突然そんなことを言い始めて、背中に嫌な汗が流れた。


「えっ、いいんですか」


「いいよ、いいよ。雫もいいだろ、別に」


「うん、私は一緒に帰ってもいいよ。でも、一人思うところがある人がいるみたい。なんかあるの。春樹」


そう言われて全員がこっちを見た。同時に一番後ろ側にいた古川の目つきが異様に冷たかった。


「いや、一緒に帰るのはいいんだけど、俺たちたまに寄り道とかして帰るのが遅くなるだろ。古川さんの家はそう言うの大丈夫なのかなって思って」


 心にも思っていないことが信じられないくらスラスラと出てきた。本音を言えば一緒に帰りたくなんてない。


「あーそう言うのは大丈夫ですよ。家族も私なら大丈夫って思ってますから」


そう言ってはにかむ姿に隼人と女の雫ですら見惚れていた。


「なら、問題ないね。明日からもよろしくね。古川さん」


「はい。それじゃあ明日からもよろしくおねがいします。ふふ」


古川はこんな感じで意図も簡単に俺たちの輪の中に入ってきた。あの笑った時に目が細くなりお淑やかにだけども本当に楽しそうに笑う姿は見た物を虜にすると思った。事実、隼人は口を半開きにしてその古川の顔を見ていた。


「では、今日はこのあたりで、皆さん気を付けてくださいね」


「古川さんの方こそ、気を付けてね」


 そう言って俺たちはまた三人になった。


 「隼人、あんた見惚れすぎ」


 「はっ、見惚れてなんてないし」


 「嘘つけ」


 雫が若干ヤキモチを焼いているのが感じられるが、どうやらその矛先にいる男は全く気付いていないらしい。


「いや、見惚れてたね」


「春樹まで・・・」


「でしょ、見惚れてたよね」


「でもそう言う雫も釘付けになってたぞ」


「うそ!」


「雫だって見惚れてたんじゃねーか」


「うっさい、あんたら男が見惚れるのとは種類が違うのよ。でもちょっと分かるな。あんたらが古川さんに見惚れるのも。だって女の私から見ても古川さんってかわいいとおもうもの」


「だろ」


 余計なことを言うな隼人。


「でも本当にあんな可愛い人見たことが無いよね。あの髪色どうやってるんだろ。なんか誰も言わなかったけどほんとに真っ白で綺麗だよね。ていうか銀色だよね、どちらかというと。見た目シルク見たいな感じだったし。私もあんな髪質だったらいいのになー」


「雫も十分綺麗じゃん」


おっ、気づいているか隼人。雫が照れてるぞ。こんな感じで隼人は素で雫のことをほめるからこの二人はずっと仲がいいんだろな。


「ありがと、」


 そう言いながら隼人を小突いていた。


「あのーいちゃつくなら二人になってからしてくれません」


それを聞いて二人は少し照れて顔を赤くした。


「まあ、なんだ春樹。お前も早くそんな相手作れよ」


 隼人の上からの言葉に少々イラっとしたが、これもいつものことである。


「隼人も可愛い彼女がいるのに、他の女のことをあまり本人の目の前で褒めるのはやめた方がいいぞ」


「ほんとそれ」


それを聞いて可笑しくなって三人で笑った。


その後は少し進んだ先で二人とは別れ、帰路についた。


「春樹ーあんたの学校のお友達が今家の前に来てるわよ。早く風呂からあがりなさい」


誰なんだ、こんな時間に。


「はーい。今あがるからちょっと待っててもらって」


そう言ってすぐに浴室から出て服を着替えて玄関に向かうとそこには今最も会いたくない人物が立っていた。


「なんで、お前がここにいるんだよ」


「えっ、なんでって今日隣に引っ越してきましたから」


そう言えば今日朝、昼間に隣に新しい人が引っ越してくるらしいと母さんが言っていた気がする。


「よかったー知ってる人が近くに住んでて、なんか安心する」


こっちは全く安心できない。風呂に入って体は温まっているはずなのに震えが止まらない。


「名前なんて言うの。あなた」


「あっ私、古川桜狐って言います。今日春樹君と同じクラスに転校してきたんですよ。お母さん今日からよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


「あっそうだ、春樹くんが一つお願いがあるんだけどいい」


俺に拒否権なんてないんだろうな。


「実は、私まだここにきて日が浅いから学校までの道がまだ分からないんだ。だから明日から一緒に学校に行ってもいいかな」


「いいよ、いいよ。春樹一緒に行ってやりな」


母さんがそんなことを後ろから言ってくる。


「いえ、春樹君のお母さん。春樹君が嫌ならべつにいいんです」


そう言って古川はもの悲しい表情を作った。それを見て母さんは俺を少し叩いた。


 それを見て古川がボソッと何か言った。


「やっぱり人間ってチョロ」


何やら聞き捨てならないことが聞こえたような気がするが、もう断れる空気ではないし断ったら何されるか分からない。


「分かったよ、一緒に行こ。古川さん。朝の七時半に迎えに行くけどそれでもいい」


 だいぶ早い時間を伝えた。もしかしたらそれを理由に断ってくれるかもしれないと思って。でも無駄だった。


「ありがと。うん、七時半ですね、用意しておきます。それじゃあ明日からよろしくね春樹君」


 そう言って古川は母さんに礼をした後、手土産を手渡して帰っていった。


「あんた、おくれなさんなよ」


母さんはそう言ってリビングに戻っていった。


俺はそんな声を聞きながら、一人玄関で立ち尽くしていた。


 

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