コスモスが枯れる前に
今日は一週間で一番好きな日。私は気分るんるんで二匹の大きな金魚に餌をあげた。お風呂上り、私は暑くなって窓を開けた。ふと三日月が目に入った。寒くなった私は窓を閉め、ラジオをつけた。時刻は0時になろうとしていた。いつものようにノートを広げ和菓子のデザインを考える。
うーと唸っているとタイトルコールが始まった。機械の奥で言う。「はい。皆さん今晩はー。毎週金曜日の夜にお届けする完全アドリブラジオ『人間クエスト』が始まりましたー」蒼空の一言で始まったラジオは今回も面白かった。
12月になり、私は友達とスキーをしに雪山に来ていた。私の目的は近くの温泉だったが。友達はスキーが上手ですぐに見えなくなった。天候が変わらないうちに戻ろうとしたが、私は足を滑らせた。
気が付くと針葉樹の下にいた。辺り一面真っ白だった。風も雪も強くなっている。助けを呼ぼうと携帯を取り出そうとするが、携帯が無い。なんでと血の気が引いていった。辺りを見渡す。白。白。「あれ」と白い息を出す。小屋があるのだ。扉を探し開くと人が入っていた。「助けてください」そう言う彼は私を見て「小春。小春なのか」と聞いてきた。顔は隠れていて見えなかったが、声で分かった。「蒼空」結局、私も元彼氏である蒼空も友達とスキーをしに来て遭難していた。
最近仕事どう?と聞く彼に私は「自分の和菓子も販売できるようになって最近だとサンタさんの和菓子とか作ったんだ」と逆に「ラジオ頑張ってね」と言った。彼は「小学5年の時に和菓子体験してからそれが夢って言ってたもんな。じゃあさ俺の好きなコスモスの和菓子作ってよ」と笑って続けざまに「元彼のラジオ聞いてるとか未練たらたらじゃーん」なんて言う。「あんただってその帽子、私が文化祭の時プレゼントしたやつ」と返した。その後も見つかったら温泉たまご食べるだとか暖炉が欲しいだとかを話し合った。
気が付くと私は寝ていた。体を起こすと服が落ちた。横を見ると薄着の彼がいた。あれと思い「蒼空起きて」と冷たい体を揺らした。「私未練たらたらだよお祭りで蒼空から貰った金魚だってまだ家にいるよ」起きてと冷たく大きな手を私は両手で覆った。
あの日からもうすぐ一年。そんなことを考えながら金曜限定商品のコスモスの和菓子を並べる。扉を開けていたためか、私の足元ではふわりふわりとコスモスの花びらが舞っていた。