✒ 天竺を目指して 2
──*──*──*── 3週間後
≪ 巒圜の都 ≫を出発してから3週間目を迎えた日の朝──、弓弦さんから耳を疑う言葉を聞いた。
マオ
「 ちょ…一寸待ってよ、弓弦さん!
≪ 日本国 ≫の裏野ハイツに帰るって何で!?
急にどうして?? 」
厳蒔弓弦
「 ………………すまない、マオ。
だが、分かってほしい。
私はこれ以上、皆と共に旅を続ける事は出来ない…… 」
獅聖幻夢
「 マオ殿、此処は1つ私の顔を立て、弓弦殿の思いを汲んでは頂けませんか? 」
マオ
「 幻夢さん迄── 」
セロフィート
「 マオ──、弓弦さんを止める前に何が起きたのか話を聞きましょう。
弓弦さんは考え無しに発言をする人ではないです。
それはマオも知っているでしょう。
弓弦さんの決意を固める程の事が起きたのです。
先ずは事情を聞きましょう 」
マオ
「 セロ──。
だけど……貴重な── 」
オレが「 戦力が── 」って言い終わる前に、唇をセロの指で塞がれた。
セロフィート
「 マオ、此方の事情は後回しです。
今は弓弦さんを優先しましょう。
良いですね、マオ 」
マオ
「 ………………分かったよ…… 」
セロフィート
「 宜しい。
弓弦さん、場所を変えて話しましょう 」
厳蒔弓弦
「 セロ……。
すまないな…… 」
セロフィート
「 構いません。
幻夢さんも来てください。
4人だけで話しましょう 」
獅聖幻夢
「 分かりました 」
そんな訳で、オレ達は場所を変えて4人で話し合う事になった。
話し合う場所はセロが用意してくれた。
見た目は1人用のテントだけど、中が広々しているのは古代魔法の力だ。
セロフィート
「 マオキノ──、テントの見張りを。
誰も近付けない様に── 」
マオキノ
「 畏まりましたエリ!
全身全霊でテントを死守しますエリ! 」
マオキノはセロに向かって、ビシッと敬礼をする。
マオキノが分裂して、分身体と共にテントの周りを取り囲んでくれるみたいだ。
盗み聞きをされる心配は無いだろう。
──*──*──*── テント内
外はマオキノとマオキノに任せる事にして──、テントの中にはセロ,弓弦さん,幻夢さん,オレが和になって向き合った状態で座っている。
セロフィート
「 弓弦さん、何が有ったのか聞かせてください 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
実は── 」
セロフィート
「 ──成る程、そういう事情ならば仕方無いですね。
弓弦さんには安心と安全を優先して裏野ハイツへ帰って頂きましょう 」
マオ
「 だけど── 」
セロフィート
「 マオ──、弓弦さんはマオの恩人でしょう。
恩を仇で返すつもりです?
受けた恩は恩で返すものでしょう?
我が儘を言わず、弓弦さんの思いを汲んでください 」
マオ
「 何で……こんな時に限ってまともな事を言うんだよ! 」
セロフィート
「 心外です。
ワタシは何時もまともな事しか言いませんけど? 」
マオ
「 良く言う~~!! 」
セロフィート
「 何はともあれ、弓弦さんを脅威から守る為にも裏野ハイツへ帰って頂きます。
とはいえ、1人で帰って頂く訳にはいきません 」
マオ
「 何でだよ? 」
獅聖幻夢
「 不自然だからですね 」
セロフィート
「 そうです。
誰にも怪しまれず、極自然体で裏野ハイツへ返れる状況を作らなければ、妙な勘繰りをされてしまいます。
皆さんの仲がギクシャクするのは良くないです。
出来る限り避けたい状況です 」
マオ
「 皆に勘繰りされたり怪しまれたりしないで帰る方法……。
それを今から考えるんだよな? 」
誰にも怪しまれず、事実を知られずに弓弦さんが裏野ハイツへ帰れる方法か……。
難しいよな……。
マオ
「 あっ、弓弦さんと幻夢さんの共通点を帰る理由にしたらどうかな? 」
獅聖幻夢
「 共通点ですか? 」
マオ
「 うん。
弓弦さんと幻夢さんの共通点は──、囲碁が強い,法術が使える,弓矢がプロ顔負けに上手い!
後は── 」
オレは弓弦さんと幻夢さんの共通点を考えては1つ1つ絞り出してみる。
中々な共通点を探すのって難しいな~~。
獅聖幻夢
「 マオ殿、ヒントを有り難う御座います。
セロフィート殿,弓弦殿──、この様な案はどうでしょう? 」
セロフィート
「 ──名案ですね。
それなら不自然さを感じません 」
マオ
「 そうだよな。
しっくり来るりゆうだよ!
実際に行われてるし、嘘にもならいよ! 」
獅聖幻夢
「 弓弦殿、どうですか? 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
怪しまれずに帰れそうだ。
私も名案だと思う 」
セロフィート
「 ふふふ。
では決まりですね。
早速、皆さんへ伝えるとしましょう 」
マオ
「 えっ、これから伝えるのか? 」
セロフィート
「 早い方が良いでしょう。
弓弦さん,幻夢さんも良いです? 」
厳蒔弓弦
「 あぁ、私は構わない。
遅くても日が暮れる前には帰りたい…… 」
マオ
「 そうだね……。
早目が良いかも知れないね 」
獅聖幻夢
「 セロ殿──。
{ キョンシーの実験が途中なのですが、どうしましょう…… }」
セロフィート
「{ 彼方からでも此方の実験室へ自由に往し来の出来る様に繋げます。
安心してください }」
獅聖幻夢
「{ それは助かります! }」
セロフィート
「{ キョンシーの出来を試す時も、好きな方で実験してください。
事故でも事件でも何時でも容易に揉み消せます }」
獅聖幻夢
「{ 分かりました。
其処迄して頂けるとは有り難いです }」
セロフィート
「{ ワタシは当分、実験室へは行けそうにないですし、キョンシー実験は幻夢さんに御任せします }」
マオ
「 セロ──、何で幻夢さんと内緒話してるんだよぉ~~ 」
セロフィート
「 おや、妬いてくれてます? 」
マオ
「 な…何言ってんだよ(////)」
獅聖幻夢
「 安心してください、マオ殿。
マオ殿からセロ殿を取ったりしません 」
マオ
「 べ…別に心配なんてしてないし……(////)」
厳蒔弓弦
「 ははは(////)
マオは面白いな。
幻夢はシュンシュンを気に入っている様だぞ 」
マオ
「 えっ?
何でシュンシュンなの?
シュンシュンって、幻夢さんと眞小呂に酷い事をした奴じゃんか 」
獅聖幻夢
「 被害を受けていたのは実験段階の複製呪靈でしたから気にしてませんよ。
複製呪靈を2体も壊された落とし前は確り付けさせますけど。
同じ闇呪術を扱う者同士、霄囹とは “ 兄弟の様に仲良くしたい ” と思っています 」
マオ
「 兄弟みたいに?
それって良いかも!
シュンシュンって独りっ子みたいだし、兄が出来たら喜ぶんじゃないかな! 」
獅聖幻夢
「 ふふふ♪
そう思いますよね?
霄囹とは生きた時代も同じですし、仲良くなる為に必要な共通点も有ります。
帰ったら楽しみが増えます♪ 」
マオ
「 ははは…… 」
何でだろうな、シュンシュンが幻夢さんの玩具として苦労しそうな未来が見えるぅ~~~~。
シュンシュン、ファイトだぞぉ~~。
テントから出るとセロがマオキノに指示を出して、皆を集めた。
玄奘三蔵法師
「 話しとは何でしょう? 」
猪八戒
「 何か問題でも起きたんちゃいまっか?
料理の摘まみ食いしたんはワテじゃありまへんでぇ 」
孫悟空
「 気持ち良く昼寝してたのに何だよぉ~~~~ 」
セロフィート
「 おや、孫悟空さんは睡眠中でしたか。
今からでも永眠してみます? 」
孫悟空
「 そ…そりゃねぇですよ、佛の御遣い様ぁ~~。
バッチリ目は覚めてるゼです!
“ 孫悟空 ” なんて他人行儀な呼び方しないでくだせぇよ! 」
マオ
「 セロぉ~~、悟空で遊ばないでやれよ。
ビビってるじゃんかよ 」
セロフィート
「 おちゃめな冗談です♪ 」
マオ
「 本当かよ…… 」
沙悟浄
「 マオさん!
皆さんとの話しは終わったんですか? 」
マオ
「 沙悟浄──。
これから皆に大事な話があるんだ。
菻犁と罧寧は何処に居るかな? 」
沙悟浄
「 2人共馬車の中で寝てます。
マオさん達がテントで話をしていた時、菻犁と罧寧がテントに近付いたんですけど、マオキノさん達に追い返されちゃったみたいで──。
不貞腐れて寝ちゃったみたいなんです 」
マオ
「 そうなんだ。
寝てるなら態々起こさなくて良いよな 」
孫悟空
「 俺様は叩き起こされたけどな~~ 」
マオ
「 悟空は未成年じゃないだろ。
悟空も聞いてくれよ。
弓弦さんの事だからな 」
孫悟空
「 兄貴の事なのか?
なら、聞かねぇとだな! 」
猪八戒
「 何や弓弦さんの事かいな。
そりゃ背筋を伸ばして聞かんとやな! 」
玄奘三蔵法師
「 弓弦さん……。
今朝から顔色が悪かった様に見えました。
それと関係があるのでしょうか? 」
マオ
「 弓弦さんは元気だよ!
心配しないで、玄奘さん 」
玄奘三蔵法師
「 そうなのですか?
良かったです(////)」
セロフィート
「 皆さん、此方へ集まってください 」
セロの呼び掛けで、馬車の中で爆睡中の菻犁,罧寧を除いたメンバーが集まった。
──*──*──*── テントの中
テントの中には、セロ,弓弦さん,幻夢さん,玄奘さん,猪八戒さん,沙悟浄,孫悟空,オレの8人が居る。
マオキノが人数分の和茶と和菓子を用意してくれている。
猪八戒さんは和菓子を見て両目を輝かせている。
猪八戒さんは、話を聞く処じゃなくなりそうだな。
厳蒔弓弦
「 皆に言わなければならない事が有る… 」
孫悟空
「 兄貴……。
改まってどうしたんでぇ 」
厳蒔弓弦
「 私は急遽、≪ 日本国 ≫へ戻らなければならなくなった… 」
玄奘三蔵法師
「 戻るとは?
此方にはまた来てくださるのですか? 」
厳蒔弓弦
「 それは── 」
獅聖幻夢
「 当分は無理だと思ってください 」
沙悟浄
「 えっ──。
無理って、どうして何ですか! 」
セロフィート
「 幻夢さん、御願いします 」
獅聖幻夢
「 はい、セロ殿。
実は── 」
幻夢さんは皆に≪ 日本国 ≫に帰る事情を分かり易く話した。
獅聖幻夢
「 ──という訳です。
全国各地で開催される弓道大会へ出場する事になります 」
沙悟浄
「 弓道大会?
そんな大会が有るんですね。
弓弦さんも幻夢さんも弓が上手ですから優勝しますよ!! 」
獅聖幻夢
「 有り難う御座います、沙悟浄さん 」
玄奘三蔵法師
「 全国各地の弓道大会が終われば、また戻って来てくれるのですよね? 」
獅聖幻夢
「 それも難しいのです。
弓道大会が終わった後には、全国各地で開催される囲碁大会にも出場する事が決まっています。
弓道大会とは違い、囲碁大会には階級が有ります。
最上級の “ 本因坊 ” となるには、全ての階級を白星で勝ち上がらなければいけません。
弓道大会よりも時間が掛かります 」
孫悟空
「 でぇ丈夫だろ。
兄貴は強ぇからよ!
その──、ほんほんぽうってヤツになれるゼ! 」
マオ
「 本因坊な~~。
セロが出場しないんだから、楽勝だよ! 」
沙悟浄
「 囲碁大会……。
良いなぁ……。
僕も弓道大会や囲碁大会を見てみたいや… 」
セロフィート
「 沙悟浄さんの場合は先ず、仙人となり人間に変化する術を身に付けてからですね 」
沙悟浄
「 人間に変化ですか?
このままじゃ駄目なんですか? 」
マオ
「 異形と間違えられて、陰陽師に狩られるかもだな。
今の猪八戒さんと悟空の姿も≪ 日本国 ≫てば異形に分類されるよ 」
孫悟空
「 人間に変化すら良いなら、問題ねぇ。
人間に変化した俺様は超絶輪美男子だゼ! 」
マオ
「 刑務所に入れられそうで心配だよ… 」
セロフィート
「 ふふふ。
悟空さんはホストが似合いそうですね 」
マオ
「 ホストの逮捕者が益々増えるんじゃないのか? 」
孫悟空
「 ほすと──って何でぇい? 」
セロフィート
「 途中から旅に同行してくれた弓弦さん,幻夢さんは、今日で旅から離脱する事になります。
菻犁さん,罧寧さんも増えましたし、皆で戦力となるよう頑張ってもらいましょう 」
マオ
「 ………………先は遠そうだけどな? 」
沙悟浄
「 僕も兄弟子として腕を磨いて頑張ります! 」
厳蒔弓弦
「 沙悟浄は頑張り過ぎず、無理をしない様にな。
自分を労る事を忘れてはいけないぞ 」
沙悟浄
「 は…はい(////)
心に刻んで頑張ります(////)」
孫悟空
「 兄貴、沙悟浄が無理してたら、俺様が眠らせてやっからよ、心配すんなって!
俺様が錦斗雲と組めば、億人力だぜ! 」
獅聖幻夢
「 頼もしいですね、弓弦殿 」
厳蒔弓弦
「 そうだな… 」
そんなこんなで、弓弦さんと幻夢さんの話は終わった。
菻犁,罧寧が起きて来ない様にセロが古代魔法の睡眠魔法を掛けて起きない様にしてから、細やかながら弓弦さん,幻夢さんの見送り会が開かれた。
厳蒔弓弦
「 世話になった。
皆、元気でな 」
玄奘三蔵法師
「 弓弦殿、短い間でしたが楽しかったです。
どうか、お元気で── 」
厳蒔弓弦
「 天竺の旅が一区切りしたら遊びに来ると良い。
違う世界を体験してみるのも楽しいからな。
裏野ハイツから私達の故郷にも行けるから興味が有れば案内しよう 」
玄奘三蔵法師
「 有り難う御座います。
私も楽しみです 」
沙悟浄
「 僕も一緒に行きます!
その時には仙人になって、マオさんの眷属になってますから! 」
厳蒔弓弦
「 ははは。
楽しみにしていよう 」
孫悟空
「 俺様も兄貴に会いに行くぜ!
楽しみに待っててくれよな!
三蔵と沙悟浄の事は俺様に任せてくれや 」
厳蒔弓弦
「 仲間には乱暴しないようにな 」
獅聖幻夢
「 弓弦殿、モテモテですね 」
マオ
「 そうだね。
孫悟空が弓弦さんの子分になるなんて思わなかったよ 」
猪八戒
「 そんだけ、キレた弓弦さんが恐ろしかったんやでぇ。
あれは直に見とらんと分からへんのや…… 」
マオ
「{ 猪八戒さん、一寸震えてる? }」
猪八戒
「{ 内緒にしたってぇな }」
マオ
「{ うん。
見なかった事にしとくよ }」
獅聖幻夢
「 おや?
内緒話ですか?
{ マオ殿な猪八戒殿と仲良しですね }」
マオ
「 ちょっ──、幻夢さん!?
{ 誤解を招く様な事を言わないでよ!
セロに聞かれたりでもしたら── }」
獅聖幻夢
「{ そうでしたね }」
幻夢さんは扇子で口元を隠して笑っている。
もぅ~~、幻夢さんのおちゃめには困るよ……。
細やかな見送り会が終わると、弓弦さん,幻夢さんはセロの出した転移魔法陣を使って裏野ハイツへ帰って行った。




