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⭕ 仕事斡旋所からの依頼 2


──*──*──*── 犖榮の街


──*──*──*── 極楽亭


──*──*──*── 宿泊室


 げんじょうさんぞうほうじょうげんじのづる,マオキノを引き連れてマオが《 仕事斡旋所 》へ向かったあと──、セロフィートはちょはっかいともに怪我をったりんれいの治療をおこなっていた。


 りんれいの傷の殆んどが矢でったものだ。

 弓使いのげんじのづるった矢が命中した際に出来た傷ばかりだった。


セロフィート

「 ふふふ…。

  さすづるさんです。

  たいした命中率です。

  伊達に弓使いをしてませんね 」


猪八戒

「 セロフィートはん、関心しとる場合でっか。

  げんじのはんは子供相手にも容赦ないでぇ 」


セロフィート

「 おや、ちょはっかいさんは敵対する敵に対してわざ(わざ)なさけを掛けたりします?

  退たいは敵に対してドライです 」


猪八戒

「 それにしたってや……。

  矢で串刺しなんてエゲついで…… 」


セロフィート

てっせんこうしゅさんとこうがいさんの子供なのです。

  簡単に死にはしません 」


猪八戒

「 ……………………傷はなおるんかいな? 」


セロフィート

「 ワタシの作ったきずぐすりは効果覿面です。

  きずぐちへ塗り刷り込めば、身体からだを刺激して治癒りょくを高める効果が有ります。

  1日も経てばきずぐちは完全に塞がり、痛みも消えます。

  きずぐすりを塗る前にきずぐちの消毒をしましょう。

  ちょはっかいさんも手伝ってください 」


猪八戒

「 えぇで。

  ワテの弟子になったさかいな。

  手伝いまひょ 」


 セロフィートとちょはっかいはベッドの上に仰向けで寝かせているりんれいきずぐちの消毒を始めた。











セロフィート

「 ──きずぐすりも塗り、包帯も巻きました。

  あとは1週間の様子見です 」


猪八戒

「 ──ふぅ~~。

  まさか乙女おなごやったとは……。

  まんまと騙されてましたわ 」


セロフィート

「 子供の場合は男装しても分かりません。

  双子のしんねいさんもほんどうに男子なのか怪しいですね 」


猪八戒

「 これは黙っといた方がさそうやな 」


セロフィート

「 そうですね。

  りんれいさんが打ち明けてくれる迄、知らない振りをしていましょう 」


猪八戒

「 セロフィートはん、楽しんでまへんか? 」


セロフィート

「 はい?

  そう見えます? 」


猪八戒

「 面白がってるように見えまっせ 」


セロフィート

「 気の所為です♪

  ワタシは出掛けてます。

  りんれいさんにはキノコンを付けます。

  ちょはっかいさんも休んでください 」


猪八戒

「 出掛けるってへ行くんや? 」


セロフィート

じつに興味深い患者さんがようなので様子を見に行ってます 」


猪八戒

「 そないでっか。

  ほな、ワテはゆっくりさせて頂きますさかい 」


セロフィート

「 キノコン、りんれいさんは任せます 」


キノコン

「 お任せくださいませエリ! 」


 ナースキャップをかさの上に乗せ、白いエプロンを着けたキノコンがセロフィートへビシッと敬礼する。

 セロフィートは《 極楽亭 》を出ると1人で出掛けて行った。






──*──*──*── 医療所・前


セロフィート

「 御免ください 」


診療医

「 はい、どちらさまですか? 」


セロフィート

「 こんにちは。

  ワタシは旅のくすです。

  珍しい症状に苦しむ患者さんが治療を受けているとの噂を聞いてました 」


診察医

「 そんな……な、なんの事ですか?? 」


セロフィート

とぼけないでください。

  に運ばれている事は知っています。

  みなさん、ひどい筋肉痛に苦しんでられるそうですね 」


診察医

「 な……それを…… 」


セロフィート

「 旅をしているとさま(ざま)な病状で苦しむ患者さんと出逢いますので。

  これはワタシが今迄に治療をした病状の記録書です。

  宜しければ読まれてみてください 」


診察医

「 ……………………は、はぁ……。

  時間のあるときにでも読ませて頂きます……。

  ………………取り敢えず、なかへどうぞ 」


 診察医は突然訪問してたセロフィートを怪しみながらも《 医療所 》のなかへ案内した。


──*──*──*── 医療所


──*──*──*── 病室


 セロフィートが案内された病室には、筋肉痛に苦しむ多くの患者が集められていた。


診察医

「 患者は此方こちらです。

  筋肉痛が酷い為、暴れますので縛っています 」


セロフィート

「 随分と多いですね 」


診察医

「 はい。

  患者のみなさんは街道で得体の知れないなにかに襲われたらしく、首元になにかに噛まれたあとが付いています 」


セロフィート

「 得体の知れない “ なにか ” ──。

  噛まれて筋肉痛に苦しんでいる患者さんはほかますか? 」


診察医

「 いえ、この《 医療所 》に運ばれてた患者さんだけです。

  ほかに《 医療所 》には運ばれてないと思います 」


セロフィート

「 念の為に調べてください。

  ほかに《 医療所 》にも運ばれているなら、治療をしに行きますので 」


診察医

「 は、はぁ…………分かりました。

  調べさせます 」


セロフィート

「 ワタシは患者さんを見させて頂きます 」


 すべての患者の口には舌を噛み切らないようにと布を使ったさるぐつわで塞がれており、痛くても声が出せない状態となっている。

 更には両手首と両足首も縛られており、手首と足首に縄のあとが付かないようあいだに布が挟まれているのは診察医の配慮だろうか。


 セロフィートは先ず、得体の知れない “ なにか ” ──に噛まれたと言われる噛みあとを確認する為に患者の首元を見る。


セロフィート

「 ははぁ……。

  これはきばあとですね 」


診察医

きば──!?

  けものに襲われたと言うのですか?! 」


セロフィート

「 いいえ、人間のきばです。

  噛みあとの回りが変色しています。

  これは毒です。

  人体に悪影響を及ぼす毒がきばに塗られていたようです 」


診察医

「 それじゃあ、筋肉痛は毒に依って “ 引き起こされている ” という事ですか?」


セロフィート

「 全身に回っている毒を解毒させる事が出来れば筋肉痛もやわらぐでしょう 」


診察医

「 解毒……。

  ですが、なんの毒かも不明なのに解毒やくの用意なんて出来ません!

  こんなにも患者がますし、解毒やくかずだって── 」


セロフィート

「 それには問題無いです。

  ワタシはさま(ざま)な毒に効果の有る万能解毒やくも常備してます 」


診察医

「 えっ?

  解毒やくを持っているんですか?! 」


セロフィート

きずぐちに残っている毒を調べさせて頂きます 」


診察医

「 は、はい…… 」


 セロフィートは患者の首元にふか(ぶか)と付けられているきずあななかに清潔な綿棒をれる。

 よごれが付着し易い特殊なスパイラル綿棒だ。

 穴のなかでクリクリと動かし、なかで固まっている毒を付着させる。


 セロフィートは患者全員の首元に付けられたきずあなの中へスパイラル綿棒をれ、毒を付着させると採取した。

 ぶっちゃけ、こんな面倒な事をする必要はまったもって無いのだが、診察医が見ている事もあり、取り敢えず “ それっぽく見えるポーズ ” をしただけである。


セロフィート

「 患者さん達から採取した毒の種類を今から調べます 」


診察医

「 調べるって──。

  あの、でされるのですか? 」 


セロフィート

「 そうです。

  万能解毒やくりょうやくの一種ですが、投与する分量を間違えると毒になります。

  使う解毒やくが同じでも投与する分量は個人個人に違うのです。

  使われた毒は同じでも体内にはいり、全身に行き渡る量は1人1人違います。

  を判断し、適切な量の解毒やくを投与しなければなりません。

  多くては患者さんのがいとなり、少なければ解毒効果は発揮されません 」


診察医

「 そんな……。

  貴方は1人での患者に解毒やくを投与するつもりですか?! 」


セロフィート

「 そうです。

  はワタシに任せてください。

  この医療所で多くの死人を出したくはないでしょう? 」


診察医

「 ……………………なにか問題が起きたら誰が責任を取るのですか?!

  貴方が取ってくれると言うのですか!! 」


セロフィート

「 そう言ってます。

  ワタシは治療を始めます。

  見学をしたいなら御好きにどうぞ 」


 セロフィートは透明な液体のはいった試験管を出す。

 スパイラル綿棒の綿棒部分を医療用はさみで切り、試験管のなかれる。

 試験管の頭にコルクで蓋をして、数回振ると液体の色が変わる。


 液体の色を確認したセロフィートは別の試験管を取り出す。

 苗色をした液体のはいった試験管のコルクには注射器が刺さっている。

 苗色の液体を注射器で吸い上げると、コルクから注射器を抜き、針を患者の首元──左右の穴の真ん中へ射し、苗色の液体を注入した。


 セロフィートは一連の作業を患者全員にほどこしたが、本来はする必要の無い事である。

 見ている診察医に対して自分セロフィートくすである印象を強くする為のポーズである。


 セロフィートは患者にれた際に、体内に回り、全身に行き渡ってしまっている毒を〈 (原質)(みなもと) 〉へ変換していた。

 体内から毒の存在が消えてしまえば、地獄の筋肉痛もおさまり、患者の顔色もくなった。

 噛み付かれたきずあなも初めから無かったかのようこんせきを残さず綺麗に消した。


 ちなみにセロフィートが患者に注射した苗色の液体は、へんで摘んだ雑草を使い作った鎮痛やくの一種である。

 地獄の筋肉痛に苦しむ患者達は、ていくセロフィートの作った怪しいくすり実験台モルモットに使われたのだった。






セロフィート

「 ──彼で最後です 」


 最後の1人に解毒やく── ほんとうは怪しい鎮痛やく ──を注射して、長かった治療が終わった。

 患者の顔色がくなり、地獄の筋肉痛がおさまったからか、険しかった表情もやわらいで穏やかだ。

 呼吸も安定している。


 セロフィートは注射を打ったあと、口から布を取り、両手首と両足首を縛っていた縄もほどいていた。

 落ち着きを取り戻した患者が暴れない事を知っていたからだ。


セロフィート

「 これでワタシの治療は終わりました。

  あとは毎食後に、この薬を飲ませてください。

  1週間以内には全員が《 医療所 》から退院する事が出来ます 」


診察医

「 それはほんとうですか? 」


セロフィート

「 はい──、事実です。

  では、ワタシは失礼します。

  お邪魔しました 」


 そう言ったセロフィートは、病室を出ると《 医療所 》を出たのだった。






──*──*──*── 人気の無い裏路地


 セロフィートは〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉を出すと、とある依頼書を手渡す。


セロフィート

「 この依頼書を持って《 仕事斡旋所 》へ行きなさい。

  マオ達が受けた依頼を解決させています。

  自信が付いてた所へ、この依頼書を出しなさい。

  マオが受けたがるようく誘導するように 」


器人形

「 はい。

  かしこまりました 」


 セロフィートから依頼書を受け取った〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉は裏路地から《 仕事斡旋所 》へ向かって走り出した。


セロフィート

「( 犯人の事はマオ達に任せるとして、犯人は随分と面白い毒を使うよね。

   毒のどころを知りたいな。

   マオキノの分身たいに追跡させよう。

   く接触してくれるといんだけど── )」


 セロフィートはクスリ──と笑うと裏路地を出る。

 そのままなにわぬ顔で《 極楽亭 》へ戻るのだった。

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