今夜の夕食は賑やかになった。
玄奘さん,セロ,オレの他、大食漢の猪八戒さんが加わったからだ。
猪八戒さんは、舌鼓を打ちながら美味しそうに、マオキノ達が作った料理を食べる食べる食べる食べる。
まるで体内にブラックホールでも渦巻いてるんじゃないか──って思う程だ。
オレも食べるけど、猪八戒さんも食べるから、マオキノ達は嬉しそうに腕を振るって料理を作っている。
猪八戒さんは幸せそうな顔をして料理を食べている。
玄奘三蔵法師
「 ……凄い食べっぷりですね。
人外仙人様は良く食べるのが一般的なのでしょうか? 」
猪八戒
「 ちゃうで、ちゃうちゃう!
本来の仙人は≪ 下界 ≫の料理は食わんもんや 」
マオ
「 じゃあ、何で猪八戒さんや御弟八はっ子狠こんさんは≪ 下界 ≫の料理を食べてるんだ? 」
猪八戒
「 ワテは元もと々もと食用の家畜やったんや。
人間に食くわれる為だけに生まれ、育てられた豚やったんやで。
仲間と乗せられた馬車が妖怪に襲われてな、ワテ等らは散ちり々ぢりになって逃げたんや。
そやけど所詮は豚やさかい、妖怪共どもに次つぎ々づきに狩られたんや。
勿論、ワテも── 」
マオ
「 妖怪に捕つかまったの? 」
猪八戒
「 ギリギリやったわ。
ワテは御師匠さんに救われたんや。
御師匠さんは德とくを積む為に≪ 下界 ≫へ来きとってんな。
御師匠さんは德とくを高める為、生き残ったワテ等らを弟子にしてくれたんや。
ワテ等らは御師匠さんの元もとで修行して仙人の一員になれたんやけどな、仙人になるんは簡単な事やない。
仲間の何なん体たいかは挫折してな、仙人になる事を諦めた仲間も居おったんや。
妖怪として生きる事を選んだ仲間も居おる 」
マオ
「 へぇ~~。
元もとは食用豚でも仙人の弟子になれるんだ?
凄い話はなしだよ!
ロマンあるな~~(////)
でもさ、挫折して脱落する程ほど仙人になるのって難むずかしいんだな。
仙人になるのを諦めたら妖怪として生きれるんだ? 」
猪八戒
「 そやで。
豚として生きる事を選んだ仲間は居おらへんでぇ 」
マオキノ:本体
「 美お味いしく頂かれちゃいますエリ~~ 」
猪八戒
「 そやで!
人間に食くわれる豚になんかに誰も戻りたいとは思わへんでぇ。
40年前に起きた妖怪達の凶暴化には≪ 仙人界 ≫も注目しとるんや。
何なん名めいもの仙人が德とくを積む機会と考えて≪ 下界 ≫へ来きとるんや 」
マオ
「 えっ?!
そうなのか?
40年も前から仙人が……。
でもさ、会った事ないよな? 」
セロフィート
「 マオも未まだ々まだですね。
≪ 宋そん枩しょうの村 ≫の酒場で会ってますし 」
マオ
「 えっ──??
どゆことだよ? 」
セロフィート
「 酒場で話した人が “ 仙人だった ” という事です。
旅人に声を掛けては情報を集めていたのでしょう 」
マオ
「 あ・の・おっさんが仙人だった!?
全然気き付づかなかったよ…… 」
セロフィート
「 そう言えば、猪ちょ八はっ戒かいさんの顔が腫れていましたね。
何なにか有りました? 」
猪八戒
「 あれは蜂に刺されたんや 」
マオ
「 えっ?
森の中に蜂の巣なんて有ったんだ?
気き付づかなかったよ 」
猪八戒
「 全まったく──、あんさんの所為なんやでぇ 」
マオ
「 え?
オレの所為なの?!
オレ、猪ちょ八はっ戒かいさんに何なにかしたかな?
存在も知らなかったのに…… 」
猪八戒
「 あんさんが足を滑らせた付ふ近きんに蜂の巣が有ったんやで。
あんさんが落ちた拍子で蜂の巣が刺激されたんや。
蜂からしたら巣を攻撃されたと思ったんやろな。
あんさんの前に飛び出した兎に気を取られたワテが、落ちてったあ・ん・さ・ん・の代わりに蜂の大群に襲われて刺されたんやでぇ 」
セロフィート
「 それは災難でしたね。
腫れが引いて良よかったです 」
マオキノ:本体
「 人間だったら死んでましたエリ~~ 」
猪八戒
「 そやで、全まったく!
えらい目に遭おおてもうたわ!
責任を取ってほしいぐらいやで! 」
マオ
「 責任って言ってもな~~。
オレだって飛び出て来きた兎の被害者なんだぞ!
泥だらけになって、落ちた枝を拾い集めて大変だったんだ! 」
セロフィート
「 縁とは面白いです。
そうは思いませんか、玄げん奘じょうさん 」
玄奘三蔵法師
「 はい。
そう思います。
目の前に本物の人じん外がい仙人様が居おられるなんて……凄い縁だと思います 」
猪八戒
「 玄げん奘じょう三さん蔵ぞう法ほう師しったら──、普ふ賢げん菩ぼ薩さつの神託を受けて≪ 天てん竺じく ≫目指しとるっちゅう僧侶はんかいな 」
玄奘三蔵法師
「 はい、そうです。
未まだ々まだ未熟者で修行の身ではありますが、普ふ賢げん菩ぼ薩さつ様から観かん世ぜん音おん菩ぼ薩さつ様の錫杖を承うけたまわり、≪ 天てん竺じく ≫へ届ける旅をしております 」
猪八戒
「 ほっほぅ~~。
そいつは偉えろぉ難儀な旅になるんちゃいまっか?
関所が自由に通行が出来る様ようになったさかい、楽ラクになったとは言っても、牛ぎゅう魔王の配下だった残党は未まだ々まだ多いでっしゃろしなぁ。
平気で僧侶を襲って食らうんやろ? 」
マオ
「 そういう事は仙人も知ってるんだ?
仙人は牛ぎゅう魔王の蘇生実験の被害は受けなかったんだ? 」
猪八戒
「 牛ぎゅう魔王の蘇生実験??
なんやねん、それ 」
セロフィート
「 人間と良好的に暮らしていた妖怪達を豹変させた原因です。
鉄てっ扇せん公こう主しゅさんと齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうが関与していた事件です。
ワタシのキノコン達が関所の≪ 都 ≫を制圧した事で、牛ぎゅう魔王さんの蘇生実験も阻止する事が出来ました。
それでも豹変してしまった妖怪達が元もとに戻る事はないです 」
猪八戒
「 そうやってんな……。
鉄てっ扇せん公こう主しゅと齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうかいな……。
関わりとう無い最悪な組み合わせやわ 」
マオ
「 何なんでだ? 」
猪八戒
「 鉄てっ扇せん公こう主しゅは美しい人間の容姿をしとんのやけど、本性は蝙コウ蝠モリ女おんななんやで。
蝙コウ蝠モリ女おんなはおっかないんや。
鉄てっ扇せん公こう主しゅが持っとる宝ほう具ぐの芭ば蕉しょう扇せんは厄介な武器なんや。
齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうもワテや鉄てっ扇せん公こう主しゅど同じ人じん外がい仙人なんやけど──、手の付けられん暴れん坊やったらしくてな≪ 仙人界 ≫を追放されとる仙人として有名や。
味方に出来たら心こころ強づよいんやろうけど、我わが儘ままで傍若無人な俺様主義な奴さかい、関わらん方がえぇんや。
序ついでに言っとくと鉄てっ扇せん公こう主しゅの夫──牛ぎゅう魔王の4男なん坊ぼうは齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうとは兄弟弟で子しやったんやで。
齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうが兄あに弟子でな、弟おとうと弟子の4男なん坊ぼうがし・ょ・っ・ち・ゅ・う・尻しり拭ぬぐいしとったっちゅう話しも有名やったんやでぇ 」
マオ
「 へぇ~~。
オレはそ・ん・な・兄あに弟子なんて御免だよ。
何なんで大人しく尻しり拭ぬぐいしてたんだろうな? 」
猪八戒
「 4男なん坊ぼう王はえ・ぇ・奴やったんや。
何なんで4男なん坊ぼうが齊せい天てん大たい聖せい孫そん悟ご空くうを慕したっとなんて本人でもない限り分からへんて。
そやけど、4男なん坊ぼうが鉄てっ扇せん公こう主しゅと夫婦になった噂を聞いた時ときは吃驚やったで。
耳を疑ったもんや 」
セロフィート
「 それだけ有り得ない “ 組み合わせ ” と言う事ですか? 」
猪八戒
「 そやな。
“ 事実は小説より奇なり ” とは良よう言ゆうたもんやわ。
4男なん坊ぼうは男だん色しょく家かだったさかい、女と所帯を持つなんて誰も思ってなかったんや。
何なにが4男なん坊ぼうの身に起きたんやろなぁ~~ 」
マオ
「 じゃあさ、鉄てっ扇せん公こう主しゅは4男なん坊ぼうが男だん色しょく家かだったのを知ってて結婚したって事か?
凄いな……。
じゃあさ、鉄てっ扇せん公こう主しゅの夫だった牛ぎゅう魔王も仙人だったて事か? 」
猪八戒
「 ちゃうで。
4男なん坊ぼうは仙人にはな・れ・ん・か・っ・た・んや 」
マオ
「 えっ?!
どゆこと?? 」
猪八戒
「 所帯を持ったら仙人にはなれんのや。
齊せい天てん大たい聖せい孫悟空が≪ 仙人界 ≫を追放されたのは弟おとうと弟子が仙人になる道を捨てて所帯を持った後あとなんや。
仰ぎょう山さん荒れたやろうなぁ…… 」
マオ
「 仙人って独身じゃないと駄目なんだ? 」
猪八戒
「 そやで。
所帯を持ちたいなら、自みずから仙人を止やめて≪ 仙人界 ≫を出なあかんのや。
それが≪ 仙人界 ≫の昔からの決まりなんや 」
マオ
「 へぇ……。
仙人同士の結婚も仙人を2人で仙人を止やめて≪ 仙人界 ≫を出ていかないと駄目って事? 」
猪八戒
「 そやで。
仙人は独り身ばっかりやな 」
マオ
「 何なんでだろう??
仙人同士で結婚したって良いいと思うんだけどな…… 」
セロフィート
「 ≪ 仙人界 ≫には≪ 仙人界 ≫の事情が有るのでしょう 」
マオ
「 結婚したけりゃ仙人止やめろってのは酷ひどい気もするけどな…… 」
猪八戒
「 仙人は基本、世俗の暮らしを自みずから捨てた世捨て人びとなんやで。
所帯を持つって事はや世俗と関わるっちゅう事や。
世俗の暮らしを捨てた世捨て人びとから “ 卒業する ” っちゅうこっちゃ。
この決まりは誰にも変える事は出来ひんのや 」
マオ
「 猪ちょ八はっ戒かいさんのお蔭で仙人の事、沢山知れたよな。
身み近じかに感じるよ 」
猪八戒
「 ワテが話せる事なら聞かせたるでぇ!
美う味まい飯めしを食くわせてくれるんならや! 」
猪ちょ八はっ戒かいさんは未まだ々まだ食べ足たりないみたいだ。
マ分オキ身ノ体達は料理の作り甲が斐いがある事を喜んでいる。
オレも負けちゃ要いられないな!
よぉ~~し、オレも食べるぞぉ!!