⭕ 攀盖の都 4
──*──*──*── 宿泊室
庭園の散歩から戻って来たら、夕食の準備がされている最中だった。
高級そうな長方形テーブルの上に並べられているのは、和食と洋食だ。
玄奘さんは物珍しそうに洋食料理に釘付けだ。
玄奘さんは初めて見た和食にも釘付けになっていたよな。
懐かしい~~。
今ではすっかり和食を気に入って、虜になっている。
洋食の虜にもなりそうだ。
マオ
「 豪華だな~~♪
高級旅館や高級料亭でしか食べれない料理じゃないかよ! 」
キノコン
「 今回は特別に牛魔王の肉をふんだんに使わせて頂きましたエリ。
牛魔王肉のスペシャルフルコースですエリ★
御賞味くださいませエリ 」
マオ
「 やったぁ!!
何時食べれるか楽しみにしてたんだよなぁ~~!
牛すき,牛しゃぶ,牛焼肉ぅ~~♪♪
特大ステーキぃ~~~♪♪♪ 」
マオキノ
「 三蔵は此方を食べるエリ。
マオ様みたいに暴飲暴食をすると身体に悪いエリ。
彩り,バランス,栄養を考えて作った薬膳料理エリ 」
玄奘三蔵法師
「 有り難う御座います…… 」
マオ
「 玄奘さんの料理は随分と控え目だな 」
セロフィート
「 玄奘さんの身体は繊細です。
食べ慣れない料理は少量ずつ身体に慣れさせた方が良いです 」
マオキノ
「 マオ様を真似して食べては駄目エリ。
落ち着いて良く噛んで食べるエリ 」
オレは合掌をしたら、並べ終えられた料理を食べ始めた。
オレが次々に皿を空にすれば、キノコンが新しい料理を運んで来てくれる。
空になった皿はキノコンに回収されて、出来立ての料理が並んでいく。
セロフィート
「 ふふふ…。
気持ち良い程の食べっぷりです 」
マオ
「 セロは食べないのか? 」
セロフィート
「 マオの食べっぷりを見ているだけで十分です♪ 」
マオ
「 そうか?
折角の牛魔王の肉を使った料理なのに── 」
セロフィート
「 ワタシの分もマオが食べてください 」
マオ
「 言われなくても食べるよ! 」
マオキノ
「 三蔵、桃を使ったスイーツエリ。
食べ易い様に一口サイズに切ってるエリ 」
マオ
「 果物特盛りゼリー最高だな!
この果物って庭園で実ってたヤツかな? 」
キノコン
「 はいですエリ。
桃には “ 桃赤宝仙 ” を使ってますエリ 」
マオ
「 桃赤宝仙とって言えば、“ 全ての桃の原種 ” って言われてる稀少な桃だよな?
だけど渋いってマオキノが── 」
キノコン
「 特別な収穫方法が有りますエリ。
それをしないとどの果物も渋くて食べれた物ではありませんエリ。
口に入れると果肉が苦虫に変わる様になっていますエリ 」
マオ
「 それって……どうなってるんだ?? 」
セロフィート
「{ 古代魔法を掛けてます }
果実泥棒や野菜泥棒に対する対策です 」
マオ
「 エグい………… 」
キノコン
「 野菜泥棒も果物泥棒も茸泥棒は許しませんエリ。
罰を与える必要が有りますエリ 」
マオ
「 ははは…………おっかないなぁ~~。
桃赤宝仙ってのは果肉が赤らんでるんだな。
ホッペが落ちちゃう程美味いじゃん!!
果実泥棒はコレを味わえないんだな~~ 」
玄奘三蔵法師
「 桃とはこれ程美味なのですね。
仙人様が好んで食べたと言われるのも頷けます 」
マオ
「 そうだ!
セロ、旅の途中でさ仙人に会えないかな?
この≪ 大陸 ≫には、仙人が暮らしてる≪ 仙人界 ≫って呼ばれる場所が在るらしいじゃんか? 」
セロフィート
「 仙人です?
牛魔王さんを毒殺した鉄扇公主さんは仙人ですよ 」
マオ
「 えっ!?
そうなの?
マジかよ……。
でもさ、牛魔王って妖怪なんだよな?? 」
玄奘三蔵法師
「 仙人様と妖怪は昔から “ 仲が悪い ” と言い伝えられているのですが…… 」
セロフィート
「 “ 現実は小説より奇なり ” という諺も有るぐらいです。
妖怪と人間が夫婦になっていた時代が有るのですから、仙人と妖怪が夫婦になっていても不思議ではないでしょう。
どの種族にも同族にすら理解をされない “ 変わり者 ” は居るものです 」
マオ
「 そう言われてみればそっか……。
妖怪が人間と仲良くしてたぐらいだもんな。
妖怪と仲良くしてた仙人が居たとしても変じゃないか…… 」
キノコン
「 情報収集をしているキノコンからの報告では、仙人には “ 人外仙人 ” と呼ばれる種族も居るみたいですエリ。
人間からは “ 妖怪仙人 ” と呼ばれて区別されているみたいですエリ 」
マオ
「 妖怪仙人??
妖怪も仙人になれるんだ? 」
セロフィート
「 そうではないです。
元々人間が言う “ 仙人 ” と呼ばれる種族は “ 人外仙人 ” しか存在していませんでした。
“ 人外仙人 ” は≪ 下界 ≫で繰り広げられる愚かな戦争により天涯孤独となった人間の子供達を保護し、≪ 仙人界 ≫で育てました。
≪ 下界 ≫とは時間の流れが異なる≪ 仙人界 ≫という特殊な空間である≪ 霊宝山 ≫にて長きに渡り暮らした事で、戦争孤児達は人間とは異なる種族へ変化しました。
それが鉄扇公主さんの様な仙人達の御先祖になります。
人外仙人を “ 妖怪仙人 ” と呼ぶならば、“ 人間仙人 ” とでも言いましょうか 」
マオ
「 人間が仙人に……。
最初の仙人は戦争孤児だった??
意外な真実だな…… 」
セロフィート
「 鉄扇公主さんが “ 人間仙人 ” の子孫ならば、齊天大聖孫悟空は “ 人外仙人 ” の子孫かも知れません 」
マオ
「 なんか壮大な話だな~~。
ロマンあるよな! 」
セロフィート
「 面白い世界です。
是非とも人外仙人と人間仙人を捕獲し、隅々まで調べてみたいです 」
マオ
「 言うと思った~~。
だったらさ、もしかしたら牛魔王も妖怪仙人の子孫だったかも知れないよな?
食べちゃった後で言う事じゃないけど…… 」
セロフィート
「 可能性は有ります。
仮に人外仙人の子孫の肉を食べたからと言って仙人にはなれません。
最低でも≪ 霊宝山 ≫で1000年は暮らさなければ、人間が仙人になる事はないでしょう。
安心してください 」
マオ
「 マジかよ…。
桃の搾り汁を酒で割ったのを飲んでも仙人にはならないんだな~~。
ロマンが1つ消えたぁ~~ 」
玄奘三蔵法師
「 人間仙人の御先祖が遥か大昔の戦争孤児の人間だったならば、妖怪仙人の先祖も妖怪だったのでしょうか…… 」
セロフィート
「 違いますね。
≪ 下界 ≫で生きている妖怪達の御先祖が人外仙人です。
地上には元々人類しか存在していませんでした。
何等かの理由で1部の人外仙人達が≪ 仙人界 ≫である≪ 霊宝山 ≫を下山し、≪ 下界 ≫で暮らし始めました。
人外仙人達の子孫が現在の妖怪になります 」
マオ
「 それ、本当かよ?!
何で妖怪仙人は地上に降りて暮らす事にしたんだろうな? 」
セロフィート
「 其処迄は知りません。
文献には書かれてませんし 」
マオ
「 文献?? 」
セロフィート
「 仙人について書かれている古い文献です。
稀少価値の高い文献です 」
マオ
「 だったら真に受け取る事は出来ないよな~~。
残念だよ…… 」
セロフィート
「 ロマンは感じるでしょう? 」
マオ
「 まぁな~~ 」
玄奘三蔵法師
「 然し、それが真実ならば面白いと思います。
人外仙人の子孫である妖怪と、人間仙人の御先祖である人間が、互いに手を取り合い共存共栄していた時代が約40年前まで存在していた──というのですから…… 」
マオ
「 その関係も “ 牛魔王の蘇生実験 ” っていう傍迷惑な実験とやらで台無しにされちゃった訳だけどな~~。
そう言えば、キノコン達は≪ 都 ≫を制圧し終わってるんだよな?
牛魔王の蘇生実験ってのも阻止は出来てるんだよな? 」
セロフィート
「 出来てますね。
だからと言って妖怪達が正気に戻る事はないです。
これからも人間を見れば襲い続けます。
人間と妖怪が仲良く手を取り合い共存共栄する時代は終わりました 」
マオ
「 ……………… 」
玄奘三蔵法師
「 …………始まりが有れば終わりは必ず訪れるのですね………… 」
セロフィート
「 何処の世界も同じです。
次の世代にバトンが渡される現在が過去となり去って行くのです。
バトンは未来へと託されて行きます 」
マオ
「 牛魔王の蘇生実験を始めた奴を捕まえて罪を償わせないとだよな! 」
セロフィート
「 そうですね。
旅の楽しみが1つ増えましたね♪ 」
マオ
「 そだな!
≪ 天竺 ≫に着く迄には捕まえたいよな! 」
夕食を終えたオレ達は、就寝する迄の間を好きな事をして過ごした。
明日からは彼此を観光して楽しむぞ!!
◎ 今回は「 封神演義 」に登場する妖怪仙人と人間仙人も加えて書いてみました。
漫画もアニメの内容も殆んど忘れてますけどね★
ファンタジーなので、釈迦の御先祖様を仙人・太公望にしてみました。
因みに人格・釈迦の生きていた時代には既に文字が有りました。
地上に下山した人外仙人達が絵文字を人間に教え、文字に変化して伝えられました。
人格・釈迦は直々に説法記録を書いて残す事も出来たにも関わらず敢えてしなかった──という事になります。