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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

怨念深い女

作者: 西順

 女は絶望していた。付き合っていた男が別の女と結婚したからだ。しかも結婚した相手は女の親友であり、自分の方が二股のキープだった事が、しかも二人の結婚式に呼ばれた事が、女を絶望の淵に落とした。


 しかし女は執念深い、いや、怨念深い女であった。どうにかコイツらに復讐して、この絶望の闇を晴らしてやりたい一念で、女が縋り付いたのは呪術であった。


 しかしどの呪術も、人を呪わば穴二つ。つまり呪術を使えば墓穴が二つ、呪われた男と呪った女の分が必要になると書かれていて、女はまたも絶望した。


 男が呪いで死ぬ分には申し分無いが、それで呪ったこちらまで死ぬのはご免だ。どうにかして男だけを呪い殺す方法を思い付かねばならなかった。


 悶々鬱々としていた時に女に近付いてきたのが、男の友人を名乗る男だった。女の事が好きだと言う、その人の良さそうな優男を見て、女は悪魔の計画を思い付いたのだった。


 一年後、女はその人の良さそうな優男と結婚した。本来は結婚式を予定していたが、直前でキャンセルする事になった。式に来賓として呼ぼうとしていた二股男の死等、不幸が重なったからだ。これでは結婚式どころではないと、優男がキャンセルしたのだ。


 五年後、女は優男と順風満帆な結婚生活を送り、子宝にも恵まれ、幸せに包まれていた。今日も二人で子供を保育園へ送っていき、園内でこちらに手を振る我が子に、女は優男とともに手を振り返していた。


「でも良かったよ」


「何が?」


 女が未だに我が子に手を振り返している夫を見遣ると、とても感慨深そうな顔をしていた。


「だって、最初の子は僕らより先に、彼岸へ旅立ってしまっただろう」


 ここで『流産』と直接的な表現を使わないのは、夫なりの配慮だろう。


「そうね。でも、あの子はあの子にしか出来ない役目を果たしてくれた。だから今の私たちの幸せがあるのよ」


「君は、あの子の話になると、いつもそうやって言うね。どんな役目があったのか分からないけど、あの子が天国で幸せだと良いなあ」


 空を見上げる夫の優男を見ながら、女は思い返していた。まだ結婚前、この優男との最初の子がお腹にいると判明した時に、その子を犠牲にして、二股男を呪い殺した事を。こうして清々しい日々を送れるのも、あのお腹の子が水子となって、二股男と一緒に冥府へ逝ってくれたからだと。そう本気で女は信じているのだった。


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