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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第2章 色のない魔法使いは学園で学びを深める
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第81話 北からの呼び出し

 次の日の放課後のことだった。


 私たちの教室に、上級生が尋ねてきた。この人は多分、2年の上位クラスの先輩だと思うけど・・・。


「ダクマー・ビューロウはいるか。ちょっと顔を出せるか。お前に聞いてみたいことがある」


 エレオノーラの側近宣言のあと、教室で私がからまれることはなくなった。なんか腫物を扱うような感じになったんだよね。マーヤ様なんかともぎこちなくとも話すようになったんだけど・・・。まさか上級生に呼び出されるとは思わなかった。


「えっと。ダクマーは私ですが、何か御用でしょうか」


 上位クラスってことは多分爵位が高い人だよね? 


 明確には決まっていないけど、上位クラスには伯爵家以上の家柄を持つ生徒がほとんどだ。この国では、爵位によって持っている魔力量が全然違うからね。まあ、うちみたいに子爵家でもすごく大きな魔力を内包している例外もあるんだけど。


「お前。一年のくせにかなり目立っているぞ。それこそ、伯爵や侯爵ににらまれんほどにな」


 上級生は何がおかしいのか、笑いながら私に話しかけてきた。


 多分、北の貴族家の人だと思う。すらっとしてるけど筋肉はついているし、強引だけどそれでも侮る色は見られない。緑の髪と青い目をして、かなり厄介な人に見えるけど・・・。


「オレはザシャ。ブレドウ伯爵家のザシャだ。メレンドルフ家の側近をやらせてもらっている。悪いが、若がお呼びだ。ちょっと面を貸してもらうぜ」



◆◆◆◆


 私はザシャ先輩に大人しくついていくことにした。


 相手は伯爵家で、バックには侯爵家がついている。簡単に逆らえる相手じゃないからね。


「なあに、何も取って食おうってんじゃないさ。謝罪っつうか、うちのもんが迷惑をかけたお詫びだな。だから、楽にしていいんだぜ?」


 いや、さわやかな笑顔でそう言われても安心できないんだけど・・・。北の貴族ってこういう印象の人が多いよね。青空と草原が似合うっていうか、裏表がなさそうというか・・・。


「北にはガスパーさんの教え子に変なことしようと思うやつはいねえよ。アンタのバックのロレーヌも怖いしな。まあ気楽についてきてくれや」


 そんなこと言われても気を抜くことなんてできないんだけど!


 それに、北の人に迷惑を掛けられたってどういうことだろう? 私、そんな覚えはないんだけど。

 疑問に思いながらザシャ先輩についていくと、なんか道場みたいな場所に入っていった。ここって、メレンドルフ流の槍術を練習する場所だよね? 槍術の授業が行われている道場みたいだし。やっぱりこの件にはメレンドルフがからんでいるのか。


 道場の中心では一人の男が槍を振り回していた。

 その槍使いに、私は思わず見とれてしまう。


 この人、すんごい手練れだよね。振り回す動きがきれいで流れるような連続攻撃になっているし。私以外にも、見とれている生徒は多いみたいだからね。


 男は手を止めると、タオルで汗を拭いながらこちらを見た。茶色の髪を後で縛っている。黄色の目は細く、精悍な印象を受けた。


「ああ。ビューロウが来たのか。待たせたな」


 上半身汗だくになった男は、タオルで体をふきながら私に笑いかけた。


「召喚魔法を担当するテオフィルは、北の出身でな。あの人、根は真面目なんだが、周囲の評判を考えないところがあってな。授業であんたのことをあんなふうに言ったらどんな悪影響があるか、考えてほしかったぜ」


 ああ。やっぱり召喚魔法の授業の件はちょっと対応があれだったのか。でも教師の対応を謝るってことは、この人は・・・。


「俺はフェリクス。フェリクス・メレンドルフだ。同じ武の三大貴族として申し訳なく思う。お前の復権のために、微力ながら手伝わせてもらう」


 そう言って、フェリクス先輩はニヤリと笑ったのだった。



◆◆◆◆


「実はな。ここで練習しているやつの中にも、お前の実力を疑うやつもいる。まあ、俺に近い奴らは、お前が油断できない剣士だって気づいているがな」


 フェリクス先輩の言葉に驚く。だって、魔法の資質がない私のことなんか、気にも留められてないと思ってたのに!


 そんな私の反応がおかしかったのか、フェリクス先輩は楽しげに笑い出した。


「はっ。うちとお前のところは同じ武の貴族だ。お前んところの秘術にだって、ちゃんと研究してるんだからな。ビューロウにはあるんだろう? 資質のない者こそ、力を発揮できる秘術がな」


 私は驚愕した。うちの領の戦士だって、私の実力を疑問視する人が多いのに、他領の、それも侯爵家の人が私たちの秘術のことを知ってるなんて!


「詳しいことはさすがに分からんが、資質のないお前だからこそ、使える秘術があることは分かっている。それでだ」


 フェリクス先輩は身を乗り出した。


「ロレーヌ家の側近に選ばれたとはいえ、お前の実力を疑問視する声はまだ大きい。上から押さえつけるだけでは反発ってやつがどうしても起こるからな。だからお前、ちょっと俺と一戦してみないか? 俺と戦えることが分かれば、疑われることはないと思うからな」

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