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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第7話 帰ってきた妹 ※デニス視点

※ デニス視点


 庭の片隅に佇んでいた私を見つけたのは、妹のアメリーだった。


「お兄様! ここにいたのですか?」


 振り返ると、妹は心配そうな顔で私を見ていた。そして私が落ち込んでいないのが分かると、妹の視線は私の手に移る。


「それ、先ほどの模擬戦でお姉さまが斬ったものですよね。まるで真剣でも使ったかのよう。折れるのなら、まだわかるんですけど、こんなふうになるなんて、何が起こったのでしょうか」


 妹は何が起こったのか分からない様子だった。私は手に持った木刀を見て、思わず笑みがこぼれた。


「これはね。あいつの剣に無属性の魔力が籠っていた証だと思う。武器に籠る魔力は、色が濃いほどその属性の特徴を受けることがある。メレンドルフなんかは、槍に魔力を籠めることで同時に魔法を当てたりするんだけどね」


 武器や体に纏わりついた魔力は色が濃いほど強化されると聞いている。熟練者ともなれば、武器による攻撃を与えると同時に燃やしたり、反対に冷やしたりできると聞いているけど・・・。


「属性の色が濃いほど、効果が高いらしい。だけど、今回ダクマーが使ったのはそれとはまったく別だね。おそらく、木刀の刃の部分に沿って魔力を展開することで、木刀すらも斬れる魔力の刃を作り出したんだな」


 あいつは自分の木刀の刃の部分に薄い魔力の刃を乗せることで、私の木刀を斬って見せた。単に魔力を纏わせるだけでなく、かなり薄くして、それを強固にする必要があるから、魔力制御はかなり難しいと思うけど。


「あとは、無属性魔法の特性である浸透かな。私の木刀は水の魔力属性の色で覆われていた。だけどあいつの木刀は、私の魔力を簡単に斬り裂いて見せた。もしかしたら、色のない魔力は、魔力による防御を簡単に打ち破る力があるのかもしれない」


 相手の魔力にすら浸透して、それを破壊する。それが、色のない魔力の特性だとしたら本当に厄介だ。魔力による防御は全部効果がなくなってしまう。魔物も、そして闇魔ですらも、ダクマーの魔力の前では簡単に斬り裂かれるのかもしれない。


「お兄様・・・・、うれしそうですね」


 私は驚いてアメリーの顔を見る。そして自分が自然と微笑んでいたことに気づいた。私は誤魔化すかのように下を見て、そして再びアメリーの目を見つめた。


「昔はよくダクマーに振り回されたよな。あいつがはしゃいで、私たちを振り回したんだ。私は一人で静かにしていることが多かったけど、不思議とあいつに付き合うのは嫌じゃなかった」


 あの資質診断の日から、あいつの周りは変わった。どこからかあいつが四属性の資質がないことが知られ、どんどん孤立していった。それまで仲の良かったはずの者からも、いつからか突き放されるようになったんだ。


「小さかった頃のことはあまり覚えていませんが、お兄様がお姉さまをかばっていたのはなんとなく覚えています。この地方の有力者の・・・、クヌートでしたっけ? あいつとお兄様が喧嘩したんでしたよね」


 アメリーが笑う。結局一つ年上のクヌートには勝てなかったんだけど、それをきっかけにいろいろあって、直接ダクマーにちょっかいを出されることは減った。まあ、それで孤立することがなくなるわけじゃなかったんだけど。


「今日も、負けたなぁ。でもあいつが昔に戻ったみたいで、ちょっと安心した」


 上を見て、深呼吸する。自分の力を示せたことで、あいつは自然に笑っていた。まるで自信を失う前のように、屈託のない笑顔を見たのはいつ以来のことだろうか。


「知っているか? 昔はビューロウでは、土や水の資質が低い方が喜ばれたそうだ。もし時代が違っていたら、あいつのように排斥されたのは私かもしれない。そう考えると、あいつの力が認められるのはいいことだと思わないか」


 私がそう言うと、アメリーもそっと頷いた。ダクマーが排斥されるのを苦々しく見ていたのは、妹も同じようだった。


 アメリーは私の手にある木刀を見て尋ねた。


「その木刀、どうするんですか? もう使えないと思うんですけど・・・」


 私もつられて木刀を見て、思い出し笑いをしてしまう。


「一応これも記念品だからな。こんなものでも、欲しがる人はいる。大事に取っておいてくれる人に譲り渡すつもりだ」


 私は誤魔化すかのように言葉を続けた。


「しかし、ダクマーもこれからだ。これから。あいつの剣に価値があることを証明しなければならない。おじい様は私たちに甘いが、甘いばかりの人ではないからな」


 そう言ったものの、あまり不安はわかなかった。ダクマーならきっと、これからも自分の力を証明してみせるだろうから。


 あいつがいる道場のほうを見る。何かダクマーが叫んでいて、それを厳しい声で窘めるラーレ姉さんの声が響く。私たちはそっと微笑んで、その場を後にしたのだった。

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