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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第61話 頼りになる前衛 ※ホルスト視点

※ホルスト視点


「あんなの、どうやって防げばいいんだよ」


 それが、ダクマーとグスタフの模擬戦を見て最初の感想だった。


 祖父から専用の道場に集まって見るように言われたのが、あの模擬戦だった。


 最初からダクマーもグスタフも全力で木刀で撃ち合っていた。僕と戦った時よりもさらに強くなっている。2人の姿は尋常じゃないくらい速かった。人が、あんなに素早く動けるなんて思いもしなかった。


「ビューロウは身体強化で有名だと言われているが、その理由が分かったよ。極めた身体強化がここまですごいとは。そりゃあ、武の三大貴族と呼ばれるのも納得だよ」


 吐き捨てる僕を見て、側近のヤンがうろたえている。


「ホ、ホルスト様。す、すみません。僕にはあの二人が何をやっているのかよく分かりませんでした。それにダクマー様の話も衝撃的で・・・。他の人の記憶が映るって、そんなことあるんですね」


 ヤンの疑問ももっともだった。地脈のそばとはいえ、他人の記憶が映るのはかなり珍しいことだ。


 それに・・・。


「記憶が映るといっても、ダクマーみたいにその人の生い立ちや思想まで把握できるのは相当なレアケースだ。普通は技や魔術など、限定的な知識だけわかることが多いらしいからな」


 だからこそ、おじい様はダクマーに詳しいことを聞かなかったんだろうけどね。相手を気遣ったつもりがここまでこじれた話になるなんて、相当に運のない話だと思うが・・・・。


「それよりグスタフとの模擬戦だ。あいつがあんなに早く動けるとは思わなかった。なんだ、あれ? 多分、要所要所で3段階目の内部強化を使ってるんだけど速すぎるだろ! あんなに動ける奴は、魔物にだっていないぞ!」


 僕のボヤキに、ヤンは困ったような顔で頭を掻く。


「いえ、確かにすごかったです。すごかったのは分かるんですが、速すぎて何が何だか・・・・」


 側近にして分かったけど、ヤンはそれほど愚鈍と言うわけではない。剣術も魔術も腕をメキメキあげているし、この分なら学園に行っても他の護衛に負けることはないはずだ。そんなこいつでも、あの2人の動きは理解できなかったみたいだ。


「お前には、あの2人の動きが見えなかったのか? 確かにすごい速さだったし、絶対に巻き込まれたくないと思ったが、それでも見えないことはないだろう?」


 僕が聞くと、ヤンは首を振った。


「いえ。全然わからなかったです。気づいたら、グスタフさんの木刀が真っ二つになっていました。ホルスト様には見えたんですか?」


 僕は顎に手を当てた。


 これは少しまずいな。ヤンが見えなかったというのなら、あのレベルの敵が現れたなら、僕らは簡単に倒されてしまうことになる。


「動きは一応見えた。だが、あのクラスの敵が現れたら、厳しいな。闇魔法と剣技を駆使すれば多少は耐えられるが、あまり持ちそうにない。時間稼ぎくらいはできるが、いずれ倒されてしまうだろう」


 くそっ! おじい様が僕たちにも見せた理由は分かる。敵にああいう戦士が現れるかもしれないから、しっかり対応を考えておけと言うことだろう。


 振り返ってみると、僕らは正直、ちょっと世間をなめていたところがあった。ダクマーに以前負けたとはいえ、何度か戦えば勝てるくらいの差だったから。


 おじい様にはまだ見ぬ強敵がいるとは聞いていたけど、僕とヤンが力を合わせれば何とか出来るという自信があった。でもグスタフやダクマーレベルの敵に襲われたら・・・、僕らは簡単に殺されてしまうかもしれない。


「想定外だ! あんなに素早く動ける奴がいるなんて! あんなの、領地の訓練生にだって防げる奴はいないぞ! お前の弟が成長しても無理だ! どうすればいいのか」


 ヤンの弟のウドは体が大きく、力も強い。本人の希望でデニスの下につくことになっているが、そんな彼でも、あの猛攻を防ぐことはできないだろう。


「でもホルスト様はさすがですよね。二人の動きを理解することができるなんて。やっぱりすごいです!」


 ヤンがお世辞を言う。調子のいいこと言ってるなと思ったが、そこで気づいた。あの動きに対応できる奴を探すよりも、後方で支援してくれる魔術師を探す方が簡単なんじゃないか?


「うがあああああああ! 僕が足止めするしかないじゃないか!」


 僕は頭を抱えた。多分、闇魔の侵攻が激しくなるという祖父の予想は当たると思う。生き残るには、どんな敵にも対応できるチームを作るのが不可欠だ。それには、僕が前衛になるのが一番な気がするけど――。


「くそぉ! まだだ! まだわからんよ! 学園に、中央に行けばさらなる戦士が見つかるかもしれない! そこでスカウトすれば、僕が後衛でゆっくり指揮を執ることもできるんじゃないか!」


 正直、生傷の絶えない前衛になるなんて御免だ。最初は正面で戦う剣士にあこがれたけど、今は後方で指揮を執る方がいいと思ってる。


 母上仕込みの闇魔法と剣術があれば、うまく敵を引き付けることもできるだろうけど、そんなのは護衛の仕事だ。いくら難敵に勝つためとはいえ、前衛なんてやってられない。


「よし! 方針は決まったな! 学園に行ったら頼れる前衛を探すんだ! クルーゲで学んだ護衛が見つかるかもしれない! そう言うやつを見つけて、僕らの盾になってもらうんだ! おまえも、有力な奴を見つけたら僕に報告するんだ! いいな!」


 領地にいるやつらは頼りにならなくても、中央なら人材が揃っているはずだ。僕らを守ってくれるような前衛を見つけることも不可能じゃないと思う!


「でもホルスト様ほど防御に優れた人なんて、本当にいるのかなぁ。見つけても、『自分の方ができる』なんて言って、採用しなかったりするような気がするんだけど」


 ヤンがつぶやいたその言葉は、当然のごとく僕の耳には届かなかった。 

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