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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第57話 ダクマーの秘剣

 私とグスタフは5歩ほどの距離を開けて再び対峙した。


 グスタフは私の秘剣を警戒して距離を詰めてこない。


「攻めるなら、今がチャンスだね! ちょっと距離が開いてるけどあの秘剣なら!」


 私は剣を横に構え、そっと足に魔力を循環させる。


「今度は私から行くよ!」


 私は一瞬でグスタフの前に移動すると、鋭い横薙ぎの一撃を放つ!


「くっ、足音がほとんどない! あれは! あの一撃は!」


 ホルストが叫ぶ。


 そう、この一撃はホルストの木刀を弾き飛ばした一撃だ!

 この走・攻一体となった一撃なら、離れた相手も一瞬で斬りつけることができるんだ!


 思ったよりもずっとスムーズに秘剣を放つことができた。足音もほとんどなかったし、剣擊も無駄な力なんて入ってなかった。


 でも・・・。


「くっ!」


 グスタフは、体をそらして私の渾身の一撃を回避した。


「うそでしょう! あの一撃を躱せるのですか!?」


 コルドゥラが思わず叫んだ。


 グスタフは額の汗を拭うと、ニヤリと笑って見せた。


「いやぁ。今の一撃はやばかった。だが、よけて見せたぜ!」


 そう言うと、木刀を横に大きく振るう。 私は剣を引いて何とかその一撃を受け止めるが、枯れ木のように吹き飛ばされてしまった。


「今度はこちらから行くぜ!」


 グスタフは木刀を振り回す。


 私は下がりながら躱すが、木刀を打ち鳴らすたびに少しずつ追い詰められていく。


「くそっ! このままじゃあ!」


 グスタフの一撃をなんとかしのぐが、体勢は確実に崩されていく。このまま攻撃を受け止め続けたら、いずれ大剣の一撃を食らってしまうだろう。


「くっ、でも・・・」


 ピンチは、チャンスでもある。


 グスタフが勝利を確信したのなら、私だって!


「どらああああ!」


 木刀を下から上へと斬り上げる! グスタフの一撃で、私は態勢を大きく崩す。木刀は右下に落ち、足はふらついて倒れそうになるけど・・・・。


「これで終わりだ!」


 グスタフが流れるような動作で、振り上げた大剣を落としてくる! 


 あれが落ちてきたら、私の防御は確実に弾き飛ばされてしまうだろう。


 けどね!


「その一撃! 見えてるよ!」


 グスタフの姿がスローモーションになる。ゆっくりと木刀が振り下ろされる。このままじゃあ、あの木刀が頭に当たって私の負けになってしまうけど・・・・。


「秘剣! 鷹落とし!」


 私は思いっきり、木刀を斬り上げた!


 私とグスタフの木刀が激突する。


 本来なら、グスタフの上から振り下ろすグスタフの一撃は、下から斬り上げる私の一撃よりも有利なはずだ。


 でも、無属性魔法で強化した身体能力なら、グスタフの一撃を上回ることだって難しくはない!

 

 ガツン!


 木刀同士がぶつかる音がしたのは一瞬のことだった。


 次の瞬間、私の木刀は、グスタフの木刀を斬り飛ばしていた。


「なん・・だと」


 放物線を描いて飛んでいく木刀の切れ端を見ながら、グスタフが茫然とつぶやいた。


 グスタフが唖然とした目で私を見ていた。


「それまで」


 おじい様が私に向かって手を上げた。

 

 一瞬沈黙が落ちると、やがて兄妹たちから歓声が起こった。


「・・・今回は俺の負けだ」


 悔し気に吐き捨てるグスタフの声を聴いて、私は戦いに勝利したことを実感するのだった。


「勝った・・・んだよね?」


 正直、10回やれば9回は私が負けるように感じたけど、今回は私の勝ちだった。


「ダクマー。ワシが保証しよう。この試合は一切の手加減なしに行われた。剣豪ともいうべきグスタフを、わずか12歳のお前が打ち破ったのだ」


 喜びで体が震えてくるのを実感する。


 でも、おじい様の次の一言で、私は厳しい現実に引き戻されることになる。


「ダクマー。おぬし、ワシの兄の知識があるわけではないのだな。お前の知識は一体誰のものなのだ」

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