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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第54話 ビューロウ領への帰還とグスタフの懊悩 ※ 後半 グスタフ視点

「お前たち、よく無事で帰ってきた。そしてよく言い返した。貴族どもが、我らを侮るとどうなるか、目にものを見せてくれるわ」


 ビューロウ家に帰って報告すると、おじい様はそう言って私たちをねぎらってくれた。どうやら、おじい様も私たちを嘲笑った貴族を許せないようだった。


「では私のほうで絶縁状を用意しますね。お手間を掛けますが、叔父様たちには確認をお願いします。抜けがあったらすぐに追加しますから。おじい様は最終確認をお願いします」


 そう言って笑顔で執務室を後にする。どうやらアメリーはさっそく絶縁状を掻きとめるようだった。


「あ、おじい様! 私、また剣をダメにしたんだけど! 代わりの剣、ほしいなあ」


 私が上目遣いでお願いすると、おじい様は溜息を吐いた。


「お前は本当に鉄の武器とは相性が悪いな。また剣を見繕っておく。お前は武器をすぐ壊すんじゃから、常に予備を持ち歩かんとだめだぞ」

「分かってますって。小型の剣はいつも常備してますから。これを使う機会って、ないわけじゃないですからね」


 明るくそう言う私を、おじい様は手を振ってドアのほうを指す。どうやら、もう出て行っていいようだった。


「じゃあ失礼しました。ラーレ、行こうか。アメリーを手伝ってあげないとね」


 そう言って、私たちは執務室を後にしたのだった。


※グスタフ視点


「アメリーもラーレも、どんどん強くなるな。特に今回のアメリー嬢ちゃんの活躍はすごかった。星持ちって、やっぱりすごいんだな」


 オレがそう言うと、領主様は頷いた。


「星持ちは学園内に1人いるかいないかの貴重な存在だからな。強力な魔術師が一人いるだけで戦況は変わる。お主にも、いい経験になったのではないか?」


 確かにそうだった。アメリーお嬢ちゃんはあんなに強力な魔法を何発も撃っていたのに平気な顔をしていた。星持ちと呼ばれる魔術師が王国でかなり優遇されるのは分かる気がする。


「じゃがな。星持ちが有能だからこそ、それを守る護衛が重要になってくる。なにしろ、敵に有能と知られれば星持ちは真っ先に狙われるからな」


 当主様の言葉は分かる。おそらく、オレにアメリー嬢ちゃんたちを守ってほしいってことだろうが・・・。


「だが、有能な魔術師を守るための力は、オレには備わっていない。なにしろ、2回連続で渾身の一撃が防がれたからな」


 そう。今回の闇魔にも、オレの攻撃は通じなかった。決まっていれば必ず倒せたのに、あの魔力障壁によってまるでダメージを与えられなかったのだ。


「ワシの目から見てじゃがな。お前に足りないのは魔力制御の腕だろう。お前の魔力制御は、ダクマーと比べてもまだまだつたない。それでは、闇魔にダメージを与えることなぞ夢のまた夢よ」


 領主様の言葉にカッとなる。


「魔力制御を鍛えたからと言ってどうなるんだ! 確かにダクマー嬢ちゃんの剣はすげえよ? あの3段階の強化だったか? 秘剣ってやつは闇魔の魔力障壁すらも貫いていた! でもオレには同じ技は打てない! オレの技とは戦い方がまるで違うんだ!」


 そう。オレとダクマー嬢ちゃんでは戦い方が違っている。使う技も使う筋肉もタイミングも、全然違っているのだ。オレがダクマー嬢ちゃんと同じことをしても、強い一撃は放てない。オレにあったタイミングで筋肉を強化する必要があるのだから。


「生意気言ってすみません。でも悔しいけど、魔力の少ないオレでは、最適に強化できるタイミングは計れない。調べている途中で、あっという間に魔力が尽きちまうからな。痛みもひどくて、それが本当に強い一撃なのか、分からないんだ!」


 おそらく、ビューロウに決まった型があったのはそのためだ。同じ技を放つなら、決まった部位とタイミングで体を強化すれば事足りる。3段階目の強化だって、実現できるようになるのだ。


 でも、オレみたいに独自に技を鍛えているなら、使う筋肉もタイミングも変わってくる。その技にあった強化方法を見つける必要がある。


「オレもダクマー嬢ちゃんの3段階目の強化を見てから色々試している。だが、強化部位もタイミングもいまだに見つからない。俺の魔力や体質では全然足りないんだ!」


 今なら貴族が平民よりも優れているとされる理由がよく分かる。試行錯誤の回数がまるで違うのだ。オレが1ヵ月間振るう剣の修行も、ダクマー嬢ちゃんなら一日で試せる。あのお嬢ちゃんにはそれだけの魔力量が備わっているんだ。


「グスタフほどの男でも悩んでいるのか・・・。俺には、お前の戦闘技術がうらやましくて仕方がないんだがな」


 イザーク様が茫然とつぶやく。


 だが当主はニヤリと笑いながら俺を宥めてきた。


「お前はかつてのビューロウの剣士をかなり持ち上げているが、そんなことはない。闇魔を斬ることができたのは、うちの剣士でもごく一部にすぎん。そしてそんな戦士たちは、例外なく見事な魔力制御を身に着けておったのだ。今は、地に足を付けてしっかり技術を磨く時だと思うぞ」


 そう言って、当主様はオレに退出するよう伝えた。



◆◆◆◆

 

「グスタフ」


 執務室から出たタイミングでイザーク様が声をかけてきた。


「お前が悩むのは分かる。だが、今のビューロウ家にお前ほどの剣士はいない。少なくとも近接戦闘の技術は群を抜いている。俺が保証しよう」


 イザーク様はそう言って評価してくれるが、オレの気は晴れない。何しろ2回連続で、闇魔にダメージを与えることができなかったのだから。


「おそらくだ。おそらくだが、親父には何か考えがあるんだと思う。お前の悩みを解決するための手がな。だから、腐らずに魔力制御の腕を磨くんだ。腹立たしいが、魔法のことで親父が間違ったことを言ったことはないからな」


 オレは黙ってうなずく。


「じゃあな。今回も助かったぜ。次回も期待しているからな」


 そう言ってイザーク様は手を振りながら立ち去っていく。


 イザーク様の背中を見ながら思う。


 このまま修行していても、さらなる強さを手に入れられるとは思わない。それなら、また強くなる方法を探るのも手なんではないだろうか。


「ここは居心地がいい。だが、そろそろ潮時かもしれないな」


 世話になったが、この場所でできることは限られている。


「やっぱりオレは、闇魔を斬れないのは我慢ならない。このままここでくすぶるよりも・・・」


 俺のつぶやきは、闇へと消えていったのだった。

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