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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第7章 色のない魔法使いは桜吹雪に舞い踊る
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第388話 剣舞 ※ 後半 聖剣の剣士視点

「ごおおおおおおおお!」


 レインカネルの上段切りを私はやっとのことで躱した。


 そして、隙を見せたレインカネルに攻撃を加えようとするけど・・・。


 どどどどどーん!!


 雷が落ちた音がした。私はびくりと震えてしまう。せっかくの反撃のチャンスが、雷によって崩されてしまった。


 今の、結構近くに落ちたんじゃない!?


 怯える私に、レインカネルは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。鋭い斬撃とは対照的に、顔は不満げだ。正々堂々とした勝負ならまだしも、怯える私が相手なら肩透かしなのかもしれない。


「く、くっ!」


 私は必至で反撃するがレインカネルにあっさりとよけられてしまう。それどころか、レインカネルの反撃の一撃を、私は避け切ることができない。斬撃が、私をかすめていく。大きな傷こそなかったけど、私は大きく態勢を崩してしまった。


「ちい! このような勝負の付き方なぞ!」


 レインカネルは不満を漏らすけど、あいつの手は止まらない。一撃必殺の太刀を何度も放ってくるのだ。


「ただでさえ技量に差があるってのに、こんなのってない!」


 私の不満にかぶさるように再び雷が鳴った。雷鳴がとどろくこの場所では、私は全力を出すことができない。空が光るたび、どうしても体が硬直してしまうのだ。


「があっ!」


 レインカネルは攻撃をやめられない。おそらくだが、世界樹に支配された今は、攻撃をやめることなんてできないのではないだろうか。


「だめだ! このままじゃあ!!」


 私はやっとのことで攻撃をかわすけど、レインカネルの猛攻は止まらない。秘剣こそ撃たないものの、その鋭い斬撃で私を追い詰めていくのだ。


「くっ! 撃たぬようにするだけで精いっぱいということか!」


 レインカネルが吐き捨てた。おそらくアイツも支配に逆らっているのだろうけど、攻撃をやめるまでには至らない。


「はあああ!」


 レインカネルが鋭く剣を振り下ろす。私は転がって何とかその斬撃を躱した。


「はっ! 王国の英雄とやらも大したことはないな! 我らが王の攻撃をかわすので精いっぱいということか!」


 レインカネルの側近が嘲笑する声が聞こえてきた。


 そんなこと言われても、避けるだけで精いっぱいなんだよ。空が光るたび、どうしても体が硬直してしまう。これまでアイツの攻撃をかわせたのだって奇跡としか言いようがない。


「はあ!!」


 繰り出された横薙ぎの一線を、私は素早くしゃがんで回避した。


 頭をあいつの剣が過ぎていくのが分かる。あいつが一撃を繰り出すたび、私は体勢を崩していく。このままだと、いずれ私はあいつに斬られてしまうかもしれない。


「ふははははは! さすがは魔王! 王国の英雄などまるで相手にならん! いずれ必ず斬られてしまうだろうさ!」


 嘲笑してくる闇魔を、私は睨むことすらできない。レインカネルの攻撃を避けるので精いっぱいなのだ。


 どおおおおおおおおおおおおん!


 何度目かの雷が落ち、私は思わず首をすくめた。その隙にと放たれたレインカネルの斬撃を、私は大きく下がって回避した。


 闇魔たちはすっかり応援モードだ。私は臍を嚙んだ。雷が鳴り響くこの場所では。私は反撃すらもままならない。今は避けられているけど、こんな奇跡がいつまでも続くはずはないのだ。


「くっ! 天気が変わらないと、よけることしか・・・」


 私は空をにらんだ。いつまでもずっと、よえることしかできな・・い?


「あれ、なんで・・・?」


 私は攻撃を避けながら思わず疑問を口にした。


 なんで、レインカネルは私を殺せないの? 雷に怯える私なら、レインカネルほどの技量があれば簡単に仕留められるはずなのに。


「はあああああ!」


 再び放たれたあいつの一撃を私は下がって回避した。


 というか、私ってば、レインカネルの攻撃が予想できるんだけど・・・。


 レインカネルの動きに注目した。剣を振り上げるアイツは、そのまま振り下ろした後、横薙ぎの一撃を振るってくるのではないだろうか。


「おおおおおおお!」


 ぶうん! ぶうううん!


 2発続けての攻撃は、私の描いた通りの軌道で私を攻撃してきた。攻撃の種類さえ読めていたら。避けることは不可能ではない。予想通りの動きをしてくるから、私は何とか回避することができているのだ。


「レインカネルが単調な攻撃をしてきてる? でもいくら単調だからって、こんなに読めたりするものなの?」


 雷が鳴るたび私は硬直してしまっている。それでもよけ続けることができているのは、あいつの行動を呼んでいるからに他ならない。


「やはり、だな。お前は発想力がない分、地道な努力を続けてきたのだろう。基本の剣をすべて思い浮かべられるくらい、示巌流の動きを愚直になぞってきたのだな」


 その言葉に、私はあいつの攻撃を避けられている理由にやっと思い至った。


 あいつがやっているのは修行の基礎に近い。決められた軌道、決められたコンビネーションで攻撃してきている。確かに一撃一撃はすさまじいほどに速くて重いが、どんな攻撃が来るのかわかっていたら、体が硬直しても何とか避けられるのだ!


「いくら相手が示巌流の開設者だとしても、これなら!」


 私は相手の動きに合わせて刀を振るった。レインカネルはスウェーバックで簡単に避けたが、攻撃の手は止まった。


 目が合うと、にやりと笑ってきた。そして予想通りの軌道で剣を振るってくる。私は回避し、そして反撃の一撃を繰り出す。レインカネルは余裕で躱し、再び剣を放ってきた。


 ちょっとだけ、楽しくなってきた。そうだ。私が前世で初めて示巌流の道場に入ったとき、師匠もこうやって剣を教えてくれたんだよね。全然当たらなかったけど、うまく触れたらほめてくれた。調子に乗って攻撃し続ける私を、たしなめるかのように剣を放って基本動作を教えてくれたんだ。


「そうだよね。自由に剣を振らせてくれて、コンビネーションを見せてくれて。うまくやれたらほめてくれた。気づいたら、剣を振るのが楽しくなったんだよね。なんかレインカネルの動きは、あの時とおんなじ気がする」


 そして私たちは真剣を繰り出しながら、踊るように攻防を続けたのだった。



※ 聖剣の戦士 エリーアス視点


 2人の戦士がすさまじい勢いで剣を振り回していた。


 一人は、我らが王、レインカネル。


 そのすさまじい剣とカリスマ性によって闇魔と呼ばれる我らを統べる存在だった。


 命令は明確でスキはない。本人の意思とは裏腹に的確に指揮を執るその姿勢は、公国の残存部隊や帝国を滅ぼすのに一役も二役も買ってしまったことだろう。


 そしてもう一人は、王国の英雄たるダクマー・ビューロウ。


 私が見るに、剣術の腕はレインカネルに一歩劣る。しかしその魔法さばきはレインカネルのさらに先を行く。すさまじいまでの身体強化で、技術の差を確実に埋めているのだ。


「なんつう動きだよ。あの嬢ちゃんの計略で手を出せないが、そんなの関係ない。こいつらの戦いには誰もついていけないだろう。色のない魔法使いの戦いってのはこういうものなのか」


 私はあきれたように溜息を吐いた。


 剣術には自信があったが、この戦いでそれも吹き飛んでしまった。あの2人の戦いに巻き込まれたら簡単に命を落としてしまう。そう思うに足るだけの速さだった。激しく動き回る2人についていける人間は誰もいないだろう。


「しかし、あいつら本当に楽しそうだよな」


 印象的なのは、やはり王国の英雄だった。さっきまでは雷に怯えているようだったのに、今は笑って剣を振っている。そして対するレインカネルの旦那も楽し気だ。いつもは鬱屈した顔をしているのに、今は後輩の成長がうれしくてたまらない様子だった。


「まるで、2人とも踊っているようだぜ。この雨の中、一撃必殺の剣を振りながらよ」


 舞うように剣を振る二人を見て、ちょっとうらやましく思えてしまう。


 これほどの好敵手を前に戦えるのは戦士として冥利に尽きるのではないか。不安も使命も忘れて戦いに没頭するのは仕方のないことかもしれない。


 しかし――。


「そろそろ旦那の我慢も限界だろうな。あの高慢も長くはもつまい。次に足を止めた時が終わりだな。残念ながら、決着の時が来てしまうということさ」


 できればずっと戦わせてやりたかった。レインカネルの旦那も王国の英雄も、本当に楽しそうな顔をしていたのだから。


 迫りくる決着の時を予想し、私はそっと2人を見守ったのだった。

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