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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第7章 色のない魔法使いは桜吹雪に舞い踊る
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第384話 公城の中庭で出会う

「秘剣! 鳥喰み!」


 私の5連続の刺突が、襲い掛かってきた闇魔を返り討ちにした。


 公城を進む私たちに、闇魔が徒党を組んで襲い掛かってきた。私とラーレが反撃して返り討ちにしているけど、その頻度に辟易としてしまう。


 ラストダンジョンとはいえ、ちょっとしつこすぎない? エンカウント率、高すぎると思います!


「巫女様! 今です!」

「燻り、焼き尽くせ!」


 フェーベが足止めした闇魔に、ラーレが黒い炎を放った。あの炎は闇魔の魔力障壁をあっさりと貫き、闇魔本体を焼き尽くしてしまう。


「さすが、ラーレ殿。お見事でござる。フェーベ殿もきっちりしているでござるなぁ」


 忍者が彼女たちの活躍に感嘆の声を漏らした。でも、こいつの実力もさすがなんだよね。身体強化には向かないとされる風魔法を駆使して、得意の格闘術で闇魔を倒してくれている。今も、襲い掛かってきた闇魔2体を瞬時に仕留めたところだ。


「土のアントーンに、水のギルベルタ・・・。名のある闇魔を瞬殺・・・。どちらも防御力に定評がある強力な闇魔なのに・・・。お姉さまはともかく、ビューロウの小娘まで・・・」


 つぶやくハイデマリーの顔は悔しげだった。


 てか、そういうこいつもさすがなんだけど。道中いろんな魔法を使って闇魔を攻撃するためのすきを作ってくれているし。なんかいろんな魔法を使っているんだけど、火の魔法って、こんなに種類があるのかと感心しちゃうんだけど!


「皆様。あの扉を超えれば中庭に出ます。そこからなら、世界樹までもうすぐです!」


 忍者が指さすほうを見ると扉が見えた。


 あそこから中庭に行けるんだね。城内を走り回っていたばかりだから、ちょっと飽きてきたところだったんだ。


「襲い掛かる闇魔は何とか撃退できている。問題は、やっぱり魔王と四天王よ。まだ、レインカネルとシュテファーニエの姿は見えていないんでしょう? あいつらに襲撃されたらさすがにかなりの危機に陥ると思うけど?」


 ハイデマリーがそんな不安を口にした。


「そうでござるな・・・。シュテファーニエが来たら、某が何とか足止めするでござるが、魔王相手となると、どれだけ持たせることができるか・・・。あいつが、奇襲してこないとは限らないでござる」

「そうですね。魔王相手にはさすがに私では何ともならないでしょう。足止めはおろか、最初の一撃を防げる自信すらもありませんよ」


 忍者に続き、フェーベまでもが肩をすくめていた。


 この人、長年ハイデマリーの護衛をしていただけあって、足止めは本当にうまいんだよね。刺突剣による的確な攻撃で魔法使いが攻め入るスキを作り出してくれているんだけど、それでもレインカネルを止める自信はないようだった。


「大丈夫。レインカネルとは私がやる。私なら、あいつを止めることだってできるはずだから」


 私はそっと決意を口にした。でも表情に不安がにじんでいたのか、ラーレが心配そうな顔をしていた。


「大丈夫だよ。私が本番に強いこと、ラーレが一番よく知っているでしょう? 次はラーレが私に任せる番だ。信じているから、絶対にやり遂げてよ」



◆◆◆◆


 中庭へと続く扉にたどり着いた。


「この扉の先に世界樹があるんだね」


 私が言うと、忍者が私たち一人ひとりの顔を見渡した。


「この先に、世界樹があるでござる。でもおそらく、魔王がこの先にいる可能性は高い。覚悟は、いいでござるか?」


 ヨッヘムの問いに、みんな静かにうなずいた。


 不意に、ハイデマリーが何かを決意したように口を開いた。


「悪いけど、私とお姉さまの命を最優先にしてほしい。私たちを進めてくれたら、必ずあの生意気な植物を破壊してあげるから」


 こんな時でもハイデマリーは生意気なことを言い出した。私は思わず吹き出しそうになった。そんな私を見て、ハイデマリーが眉をひそめた。


「わかってるの? お姉さまか私がやられたら終わりなのよ? 貴女は確かに強いけど、巨大な世界樹を破壊する術なんてない。あの魔王が、あなたを無視して私たちを襲わないとは限らない。そうならないように、あなたはかなり無理しなきゃいけないと思うけど?」


 もう。ハイデマリーは心配性だよね。


「大丈夫だよ。あのね、あのレインカネルと私は同郷なんだ。だから、あいつを引き付けるための言葉には心当たりがある。うん。私が魔法の言葉を言えば、必ず私との戦いを始めてくれるはずだから」


 怪訝な顔をしていたハイデマリーだが何かに気づいたように目を見開いた。


「そうか。そういうことか。ビューロウ生まれのあなたとこの島で育ったレインカネルが同郷のわけはない。ということは・・・」


 うわっ。なんだこいつ、察しが良すぎない?


「まあいいわ。とにかく、私たちが世界樹を破壊するまでの足止めは任せたわ。いい? 魔王に勝つ必要なんて、ない。大事なのは絶対に死なないことよ。あなたには、私たちをビューロウ領に案内する役目があるのだから」


 ハイデマリーってなんだかんだで卒業旅行を楽しみにしてくれているよね。まあうちの領に来てくれるんなら歓迎しないわけにはいかないんだけど。


「では、いくでござる!」


 ヨッヘムが扉を開けると同時に、私たちは勢いよく中庭へと駆け出して行ったのだった――。



◆◆◆◆


 中庭の奥に、世界樹が厳かに存在しているのが見えた。


 やっぱりすんごく大きい。幹は何10歩もの大きさがあり、高さも公城を超えるくらいの高さがある。葉は相変わらずピンクに色ずいていて、花弁が風に乗って流れてきている。この花弁がたまると闇魔になるはずだけど、オティーリエたちが頑張ってくれたおかげで、新たな闇魔が召喚されることはないようだった。


「あれが、世界樹か。やっとここまでたどり着いたけど、ここが終点ってわけにはいかないか」


 ラーレの言葉に道の先を見ると、そこには数名の闇魔が佇んでいた。


 気配からして、相手はおそらく上位闇魔。シュテファーニエはいないようだけど、強力な魔力を持つ闇魔が集結しているようだった。


 そして、真ん中にいるのは・・・。


「魔王・・・。いや、猛虎・レインカネル!」


 私は思わず叫んでいた。


 魔王は肉厚のある片刃の剣を地面に刺し、腕を組んでこちらを静かな目で見つめていた。


「くくくくく! ここまで来たのは見事だが、お前たちの旅路は終わりだ! この場で屍を食らってやるさ!」


 発言したのは魔王ではなかった。レインカネルの左右に侍る闇魔が私たちを挑発してきたのだ。


 魔力量からすると、こいつらも上位闇魔。簡単に倒せるような相手じゃない。


 その場に緊張感が漂ってくる。こちら側は誰も何も言えない。待ち構えていた闇魔たちを見て、みんな決意したような顔になっている。


 レインカネルは何も言わない。ただ静かな目で私たちを見つめ続けているのだった。

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