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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第37話 王族がやってきた

 その日、私たちビューロウの一族は屋敷の玄関前に集められた。私はもちろん、ラーレもデニスもホルストまでも、緊張でガチガチになっている。


「な、なんで高貴な人がこんな片田舎に? ちょっと訳が分かんないんだけど・・・」


 私が震えながら言うと、ラーレがしょうがなしに答えてくれた。


「この地方に来ると必ずうちに来るらしいよ。なんでも、うちの温泉がお気に入りだとかで・・・。アンタたちは小さかったから覚えてないかもだけどね。もう4年も前の話だし」


 うう。確かにそれくらい前も大騒ぎになっていた気がする。心なしか、両親も伯父夫婦も緊張しているように見える。


 しばらく背筋を伸ばして直立していると、おじい様の執事のノルベルトが報告してくれた。


「皆様、お客様が到着されたようです。お出迎えの準備を」


 そう言って一礼すると、奥の道から豪華な馬車が向かってくるのが見えた。どうやら、ついに到着したらしい。


 護衛の兵士に見守られ、高そうな服を身に纏った老人が降りてきた。私たちは頭を深く下げる。そして我が家を代表して、おじい様が老人に挨拶してくれた。


「バプティスト様、ようこそいらっしゃいました。この領地にバプティスト様をお迎えでき、ビューロウ家一同、うれしく思っております」


 そう、この地にいらしたのは、現国王陛下の伯父であるバプティスト様だった――。



◆◆◆◆


 何やら仰々しい挨拶を終えると、おじい様はバプティスト様を屋敷の中に出迎えた。どうやら、屋敷の地下にある地脈制御装置まで案内するらしい。


 おじい様とバプティスト様が雑談しながら歩いていて、その後ろを王家の護衛が守り、さらにその後ろを両親や私たち孫がついていっていた。


 屋敷の地下室には地脈を制御する制御装置がある。普段はこの部屋に入るのを禁止されているんだけど・・・・。バプティスト様がいらしたので私たちも特別に入ることができるようだった。


「うわ・・・。中ってこんな風になっていたんだ・・・・。部屋の真ん中にあるのはパソコンの画面みたいだね。周りを囲むように箱みたいなのもあるし。これ、ファンタジーってより、SFっぽいよね」

「パソコン? SFってなんですか? それよりも、すごい魔力ですね。貴族家には必ずこんな部屋があるそうですけど、こんなに濃密な魔力があるなんて・・・・。肌がひりつく感じがします」


 アメリーが私の独り言に答えてくれた。


 正直、アメリーの言う肌がひりつく感じと言うのは分からない。けど、部屋の中はいろいろな色の魔力であふれていて、前を見渡すことができなくい。この部屋が特別なんだなとわかる。


「確かにすごい魔力だよね。優秀な魔導士なら、ここの魔力を使ったりできるんだっけ? たしか、土魔法で魔力を維持できるって聞いたけど・・・・」


 私が静かにつぶやくと、デニスが小声で答えてくれた。


「ああ。土魔法をうまく使えば、地脈の魔力を使うことができるそうだ。土魔法の資質と本人の魔力量次第で、操れる魔力量は変わるそうだけどね。昔、地脈を利用して魔物の群れを大量に倒した魔法使いもいるらしい」


 うちの家系って、あんまり土と相性が良くないんだよね。孫の中で土魔法の素質が高いのはデニスだけだと思う。うちの母は土魔法の名手らしいのに、何ともままならない話だ。


「私も土魔法の素質が低いから、ここの魔力をあんまり利用できないんですよね。おじい様が言うには、土と相性が悪いと、量はともかく、持続時間が極端に少なくなるそうです」


 アメリーの言葉にちょっとだけ動揺する。ここにはホルストもいるんだけど、自分の素質について話していいの?


 でもホルストもその情報を知っていたのか、そっと教えてくれた。


「この国の魔術師は、土の素養だけは結構知られてしまうからね。僕も土の素質はそれほど高くない。同じ世代で、土に高い素質があるのはデニスだけさ。まあ、魔法使いはそれだけですべて決まるわけではないけどね」


 そう言ってホルストはふんと鼻を鳴らす。まあ、こいつのいうとおり、土魔法は有用な分、素質がオープンになりやすい。秘密主義のホルストでさえも、隠しておけないと思ったのかもしれない。


「まあでも、地脈の魔力を扱うのに必要なのは、土の素質だけじゃない。その土地の魔力の特性を十分に理解しないと難しいんだ。ここの魔力を使えるのは、おじい様と君たちの母親くらいさ」


 そんな話をしている間に、バプティスト様は部屋の中心の制御装置を起動させた。そして画面っぽいものに手を触れると、周りに四角い板のようなものがいくつも現れた。


 なんかあれって、タッチパネルみたいだよね。四角い板はパソコンのウインドウみたいだ。その中の一つにはこのビューロウ領の地図のようなものものが記されていて、あれは各地の点は町の地脈を示しているのかな?


 バプティスト様は画面をチェックすると深く頷いた。


「さすがバルトルドじゃな。カステル家の小童とは出来が違う。領内の町の隅々まで調整されておるのが分かるわ」


 バプティスト様はおじい様を振り返る。カステル家ってなに? 私が疑問に思っている間に、おじい様がバプティスト様に答えていた。


「はい。私の息子夫婦たちがしっかり見ていてくれておるのです。我が家は、二人とも嫁に恵まれましてな。身を粉にして領内を回ってくれるおかげで、地脈の魔力を有効活用することができるのです」


 急に褒められて戸惑っているのか、母も叔母も照れたような顔をしている。


「い、いえ。私たちは大したことはしておりません。お義父様の指示に従って夫と町を回っただけなのです」

「そうです。すべてお義父様の指示どおりにしただけなのです」


 2人は謙遜するが、バプティスト様は笑って否定する。


「たいしたことがないなどとはいえんの。コリンナ殿の土魔法は王都にも響いておるし、イーダ殿が魔物討伐で活躍しているという話も聞いておる。ビューロウ領の発展は、おぬしらの活躍があってこそだと思うぞ」


 二人は恐縮するばかりだった。


 どうやらバプティスト様は、貴族たちの活躍をきちんと確認しているらしい。王族ってふんぞり返ってるだけじゃないんだね。


 私は照れている二人をなんともなしに見ていると、デニスがそっと耳打ちしてくれた。


「カステル家ってのは、今回バプティスト様が巡回する原因になった貴族家のことさ。なんでも地脈制御装置の不具合を放置して魔物災害を起こしたらしい」


 デニスの言葉に続いたのはホルストだった。


「最近は、貴族でも地脈を放置して制御装置を壊してしまうケースがあるらしいから、王家も神経質になっているんだ。今回、カステル家は王家にかなり厳しく叱責されたらしい」


 おおう。私が知らない間にそんなことがあったのか。地脈制御装置をメンテナンスするのは私たち貴族の大事な役目なのに、それをないがしろにしちゃうなんて。叱責されるのもしょうがない気がする。


 でも、その言葉からバプティスト様が貴族に厳しい人であることが分かり、私は顔を青くする。


「どうしよう? 私には四大属性の資質がないんだけど・・・。王家の人に何か言われないかな? 貴族失格だって言われたりしないかな?」


 私が焦っていると、アメリーもあわてて励ましてくれる。


「だ、大丈夫です。私も土の素質はほとんどないですから。貴族の条件の中に素質については何も書かれていないですから、きっと大丈夫ですよ」


 そう言うアメリーも青い顔をしているんだけど。


 一応、私たちの素質について報告したりとかしていないようだけど、大丈夫かな? 


 私たちがひそひそと話している間も、バプティスト様のお褒めの言葉は続いていた。


「いや、さすがバルトルドだな。ここまで地脈が落ち着いておるとは。この屋敷に来る途中で見た地脈も見事だったぞ。他の貴族にも見習わせたいわい」


 そしてバプティスト様からのお褒めの言葉が一段落すると、おじい様が笑顔で私たち孫を手招きした。


「ありがとうございます。王家のおかげでこの領地を発展させられました。せっかくの機会なので、私の孫たちを改めて紹介させてください」


 ドキリとする。まさか、私たち一人ひとりを紹介しようとするとは・・・。私は緊張のあまり、バプティスト様の顔を正面から見られなかった。

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